ディーラーでは一番売りたいモデルを積極的に展示している?
2020年9月15日に大人気コンパクトMPVであるトヨタ・ルーミーがマイナーチェンジを実施した。そして、このマイナーチェンジのタイミングで兄弟車のタンクが廃止となっている。2020年5月に実施した、一部車種を除く、トヨタブランド全車種のトヨタ系全店舗での取り扱い“全店併売化”実施以降、レジアスエースやサクシードといった商用車は廃止となっていたが、乗用車ではタンクが初めての廃止となるだろう。
同じ店で、複数の兄弟車を取り扱うというのはどう見ても非効率というか、現場のセールスマンとしては“売りにくい”というのは確実であろう。例えばノア系ならば、ノアのほかヴォクシーやエスクァイアといった3兄弟を同じ店で扱っている。このようなケースでは、「商談前にお客さまへ兄弟車の存在をご説明し、どれを購入希望車として商談を進めるかを決めていただきます」とは現場のセールスマン。またこのセールスマンは「過去にもノアとヴォクシーには、似たようなコンセプトの特別仕様車が用意されることがありましたが、取り扱い店が異なっていたこともあり、装備内容が微妙に異なっていました。しかし、最近は装備内容が共通化されています」とも語ってくれた。
まずは買う側が選ぶということだが、トヨタ系ディーラーへ行くと“流れ”のようなものを感じ取ることができる。前述したノア系では、店頭の横断幕や試乗車などの様子をみると“ヴォクシー”がイチ押しの様子。アルファード&ヴェルファイアでは、店内にたいていアルファードの大型ポスターが貼ってあり、完全にアルファードがイチ押しとなっている。「候補に残されるのは、ヴォクシーとアルファードだな」と感じることができる。
すでにアルファードを積極販売するような、“アルファードノルマ”というものも課されているようで、販売台数でもアルファードがヴェルファイアに大差をつけている。「ここまで差が付くと、リセールバリューを考えると“アルファード押し”になるのは自然の流れです」とは前述のセールスマン。ヴェルファイアはすでに“堀を埋められた”状態となっているようだ。ノア系ではヴォクシー押しが目立つが、現場では「ノアも知名度は高いので……」と、まだまだノアに一本化されるかもしれないとの“読み”も聞くことができる。
ただ、スペイド&ポルテなどでは、どちらかが残るのではなく、両車とも生産終了になるのではないかとの情報も流れている。2012年にポルテの2代目がデビューしたときにスペイドもデビューしている。助手席の大きなスライドドアが好評で根強いニーズがあるのだが、すでに8年が経過しているだけに、このまま両車フェードアウトという可能性が高い。
グローバルモデルとしてアベンシスが復活する可能性
新しく取り扱うようになったのだが、モデルも古くどう売っていいかわからないとされているプレミオ&アリオン。過去にはカローラセダンの兄貴格なのに1500ccが設定されているということで、“カローラセダン最大のライバル”と言われていた。
2019年にカローラが12代目となっても、プレミオ&アリオンの現行モデルは2007年デビューで13年目を迎えているご長寿モデル。日本では警察の捜査車両のニーズがメインであり、パキスタンやバングラデシュなど、一部海外では日本からの中古車が高い人気がある程度。ここへきて、タクシー車両として導入されるケースも目立ってきているが、一般ユーザーへの販売はかなり限定的となっている。カローラが全店併売化されているので、“お役御免”となるのではないかとの話もあるが……。
2020年11月末に中国・広州市(広東省)で開催された広州モーターショーにおいて、一汽豊田からカローラ(グローバルモデル)のホイールベースを50mm延長したアリオンがデビューしている。兄弟車となる広汽豊田からも、カローラの兄弟車・レビンのホイールベースを延長した兄弟車がデビューしている。
勘ぐった見方をすれば、中国でアリオンという車名を使うのはかなり意味深にも見える。同様のモデルを日本ではプレミオの名前で販売するのではないかとも考えてしまう。搭載エンジンはいまのところガソリンエンジンのみだが、日本のカローラの1.8リッターのみに対し2リッターのみとなっているのがまた興味深い。ただ縮小傾向著しい日本市場で、すでにニーズが限定的となっているセダンのラインアップを、見た目は別として単にホイールベースと搭載エンジンの違いだけで、ラインアップするのかと考えると現実味はあまりないようにも見られる。
ただ日本仕様のカローラセダンやツーリングは、カローラスポーツのホイールベース(グローバルモデルより短い)を採用し、全幅を狭めた“ナローボディ”となっている。リヤドアの開閉角度も狭く使いにくいと言われている。セダンではトランクも狭く、ツーリングではラゲッジスペースが使い勝手も含め、あまり評判がよくない。そのため、セダンのみでプレミオまたはアリオン、どちらかの車名を残すのではなく、グローバルサイズのツーリング(日本仕様より大きい)もセダンとともにラインアップしつつプレミオとアリオンを廃止し、アベンシスを復活させるのではないかとの話もある。
とにかく車種整理をせずに、全店併売化を先行させたのだから、今後もフルモデルチェンジや、マイナーチェンジ、一部改良などのタイミングで、モデルの統廃合がしばらく続くことになるだろうが、新規モデルも積極的に投入されるはず。つまり、単純な統廃合ではなく、“世代交代”も進むといえるだろう。
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