現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > CO2を排出しない「水素エンジン」の泣き所NOx排出! それでも夢のエンジンとして可能性は大だった

ここから本文です

CO2を排出しない「水素エンジン」の泣き所NOx排出! それでも夢のエンジンとして可能性は大だった

掲載 31
CO2を排出しない「水素エンジン」の泣き所NOx排出! それでも夢のエンジンとして可能性は大だった

 この記事をまとめると

■炭素を含まない燃料で脱炭素を実現しようとする動きとして「水素燃料」が話題

水素燃料電池&BEVの両方を併せ持つ「ホンダCR-V」がお目見え! 2024年に「現実的な価格」で発売予定!!

■水素燃料を使用する水素エンジンは、燃焼作用によって「窒素酸化物」が微量ながら生成される

■二酸化炭素の排出を抑えるという面で水素エンジン技術の可能性は大きい

 二酸化炭素は出さないが窒素酸化物が生成される

 ローエミッション化、最終的にはゼロエミッション化が求められる現代の自動車で、世界的な共通認識は、動力を電気モーターとするEV(エレクトリックビークル、電気自動車)でほぼ一本化されている。しかしながら、炭素を基本要素とする化石燃料ではなく、炭素を含まない新たな燃料の開発によって、従来の内燃機関で脱炭素を実現可能とする考え、動きも次第に広まってきた。自動車の場合でいえば、水素を燃料として燃焼する水素燃料車である。

 本誌でも、いち早く水素燃料車の可能性にトライしたトヨタの実践例、すなわちスーパー耐久レースに参戦する水素燃料カローラの動向を登場以来定期的にお伝えしてきたが、じつは「脱炭素=ゼロカーボン」には有効な方式なのだが、ほかに有害排出物が生成されることが問題点となっていた。これは化石燃料、すなわちガソリン、軽油を使う内燃機関でも同様なのだが、燃焼作用によって窒素酸化物が生成され、これが大気中に放出されるという問題である。

 窒素酸化物自体は、排出ガスの浄化問題の基点となった米マスキー法、それの内容をさらに一段階引き上げた日本の昭和53年排出ガス規制値のテーマとなった、炭化水素、一酸化炭素と並ぶ3要素のひとつである。

 地球上に存在するすべての内燃機関搭載車は、燃料であるガソリンや軽油を酸素によって燃焼させることでエネルギーを発生させている。問題なのは、空気の構成要素が酸素だけではなく、窒素が含まれていることである。空気の構成要素を厳密に区分すれば、アルゴンや二酸化炭素も含まれることになるが、大ざっぱに見れば、酸素2、窒素8の割合と考えてよいものだ。

 ガソリン、軽油は燃料の主成分が炭素によって形成されるため、燃焼すれば酸素と結合して二酸化炭素を生成、排出することになり、これが地球温暖化ガスとして問題視されているわけだが、燃料成分に炭素を含まない水素燃料を使えば、燃焼しても二酸化炭素の排出はなく、内燃機関ながらゼロカーボンの要求に応えられる方式として、注目を浴びることになったわけだ。

 ところが、酸素だけではなく空気成分を構成する窒素も同時に燃焼されるため、窒素酸化物を生成することになり、これが問題視される状況となっている。

 近未来を背負うパワーユニット

 じつは、自動車の動力源として見た場合の水素燃料エンジンは、まだ開発途上にあり公開できない技術もいくつかあるが、この窒素酸化物の排出低減を可能にする技術として、水素燃料による発電プラントとして川崎重工業が開発したDLE(ドライ・ロー・エミッション)燃焼器が現在の自動車用に対して1歩先んじた存在となっている。

 ただ、発電用として水素のみを燃やすのではなく、LNGとの混合燃料というかたちで使用され、当然ながら炭素成分を排出することになる。ゼロエミッションではなく、ローエミッションプラントというというのが正しい捉え方だ。

 さて、水素は燃焼速度が速く燃焼温度が高くなるという側面があり、燃焼温度が高いと窒素酸化物の生成量が増えるという特徴がある。この窒素酸化物の生成量を抑えるため、燃焼温度を下げる対策が採られることになる。ガソリン機関でいえば、EGR(Exhaust Gas Recirculation=排気再循環)をかける手法となり、水素燃料エンジンでも同様の手法が有効だと考えられるが、具体的な低減技術については、まだ確認がとれていない。

 いま、世界的に問題視されているのは、地球温暖化に直結する二酸化炭素の排出で、燃料/燃焼に炭素が関わらない水素燃料エンジン車が、内燃機関であっても大きく有望視されてるのはこのためだ。しかし、燃焼という行程を経ることで、窒素酸化物が生成されることも事実である。

 ただ、排出する窒素酸化物の削減が可能なことも事実であり、その排出量は微少なレベルにまで追い込まれている。近未来を背負うパワーユニットとして、水素燃料エンジンの持つ可能性は大きい、と考えてよいだろう。

こんな記事も読まれています

“Mr.ロードスター”マツダの元エンジニア貴島孝雄氏、『愛車遍歴』で熱弁
“Mr.ロードスター”マツダの元エンジニア貴島孝雄氏、『愛車遍歴』で熱弁
レスポンス
Z世代よ、新型ラングラーに集え ジープの顔が装いあらたに、大幅値下げのワケとは
Z世代よ、新型ラングラーに集え ジープの顔が装いあらたに、大幅値下げのワケとは
AUTOCAR JAPAN
「こんなのみんな嫌いだよ」ベルニュ、フォーミュラEの“ひどい”レーススタイルを批判
「こんなのみんな嫌いだよ」ベルニュ、フォーミュラEの“ひどい”レーススタイルを批判
motorsport.com 日本版
【MotoGP】バニャイヤ、スプリントはトラブルでリタイア。原因特定作業が進められる中「予選でのクラッシュがなければ」と悔しさ見せる|フランスGP
【MotoGP】バニャイヤ、スプリントはトラブルでリタイア。原因特定作業が進められる中「予選でのクラッシュがなければ」と悔しさ見せる|フランスGP
motorsport.com 日本版
軽自動車は普通車よりも事故ると危ない……は本当? いまどき軽の安全性能のホント
軽自動車は普通車よりも事故ると危ない……は本当? いまどき軽の安全性能のホント
WEB CARTOP
車名はまんま「12気筒」!添加物なしのV12搭載『12チリンドリ』にかけるフェラーリの「強さ」とは
車名はまんま「12気筒」!添加物なしのV12搭載『12チリンドリ』にかけるフェラーリの「強さ」とは
レスポンス
中上貴晶、初日は最下位に沈む「グリップ不足で苦戦し、自信をもつのが難しかった」/第5戦フランスGP
中上貴晶、初日は最下位に沈む「グリップ不足で苦戦し、自信をもつのが難しかった」/第5戦フランスGP
AUTOSPORT web
フォーミュラEシーズン10 第9戦 ベルリン ニック・キャシディがエネ・マネとスピードの両立で圧勝
フォーミュラEシーズン10 第9戦 ベルリン ニック・キャシディがエネ・マネとスピードの両立で圧勝
Auto Prove
「影響大きいな」「レジャーも便利に」 静岡の“陸海空”結ぶ「金谷御前崎連絡道路」2024年度延伸へ
「影響大きいな」「レジャーも便利に」 静岡の“陸海空”結ぶ「金谷御前崎連絡道路」2024年度延伸へ
乗りものニュース
新型メルセデスAMG「CLE53カブリオレ」欧州登場 449馬力エンジン搭載の4人乗りオープンモデルは 高性能さと気持ちよさを両立
新型メルセデスAMG「CLE53カブリオレ」欧州登場 449馬力エンジン搭載の4人乗りオープンモデルは 高性能さと気持ちよさを両立
VAGUE
一体なにか説明できる? 原付一種を二種に変更できるボアアップとは
一体なにか説明できる? 原付一種を二種に変更できるボアアップとは
バイクのニュース
フェラーリのカリスマ、ルカ・ディ・モンテゼーモロが成し遂げたこと 【第5回】ラインナップの刷新と技術革新
フェラーリのカリスマ、ルカ・ディ・モンテゼーモロが成し遂げたこと 【第5回】ラインナップの刷新と技術革新
AUTOCAR JAPAN
マジ!!? 高速道路で見つけたギネス世界記録は1分間に9.6個も売れた[メロンパン]!!
マジ!!? 高速道路で見つけたギネス世界記録は1分間に9.6個も売れた[メロンパン]!!
ベストカーWeb
ドリキンがチーム・タイサンで全日本EVレースに参戦! テスラ「モデル3」で挑むも「こんなストレスのたまるレースはないね(笑)」
ドリキンがチーム・タイサンで全日本EVレースに参戦! テスラ「モデル3」で挑むも「こんなストレスのたまるレースはないね(笑)」
Auto Messe Web
マルティン、MotoGP王座争いリードがドゥカティファクトリー入りに繋がるか? 「契約においても力を持つと思う」と自信
マルティン、MotoGP王座争いリードがドゥカティファクトリー入りに繋がるか? 「契約においても力を持つと思う」と自信
motorsport.com 日本版
【DEWALT】「18V XR ジョブサイトファン」は強力コードレスファン!毎分18m3の風量で熱中症にサヨナラ!  
【DEWALT】「18V XR ジョブサイトファン」は強力コードレスファン!毎分18m3の風量で熱中症にサヨナラ!  
モーサイ
ランクルオーナー必見! TOYOTAランドクルーザー 70 の ZIPPO が登場
ランクルオーナー必見! TOYOTAランドクルーザー 70 の ZIPPO が登場
月刊自家用車WEB
ドラレコの映像をスマホで確認できる! 駐車監視もできる4カメラ搭載ドライブレコーダー「VANTRUE N5」
ドラレコの映像をスマホで確認できる! 駐車監視もできる4カメラ搭載ドライブレコーダー「VANTRUE N5」
月刊自家用車WEB

みんなのコメント

31件
  • yas********
    水素エンジンに使えるのかはわからないが、NOxトラップ触媒やSCRなどすでにディーゼルエンジン向けに存在しているNOX対策技術があるので、NOXの問題で水素エンジンがNGっていうことはないのではと思います。
  • m_k********
    >>「窒素酸化物」が微量ながら生成される

    "微量ながら"って言う部分がポイントで、そこが内燃機関で排出されるCO2量と比較して環境に与える影響に差があるなら開発する価値はある
    カーボンニュートラルにしろsdgsにしろ人口が増え続けている限り劇的には変わらんから

※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村