日産の人気ミドルサイズSUV・エクストレイルの4代目がデビューしました。「タフギア」というイメージの強いエクストレイルですが、新型には上質さも加わったと主張する日産の自信作を岡崎五朗さんが試しました。
エクストレイルの持ち味だったタフギア感が低下?
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かつて「タフギア」というキャッチフレーズで一世を風靡したエクストレイル。その4代目にあたる新型が登場した。
正直なところ、試乗するまでは「いまひとつぱっとしないな」というネガティブな印象を拭い去れなかった。写真で見る限りデザイン面の特徴に欠ける感じがしたし、エクストレイルの持ち味だったタフギア感も低下してしまったように見えたからだ。中途半端に高級感とか乗用車感を追いかけてしまった結果、エクストレイルならではの特徴を失ってしまったような感じ、と言えばわかっていただけるだろうか。けれど、実車を見て、乗ってみた結果、ネガティブな印象は一掃された。それどころか今年乗ったクルマのなかで一、二位を争う出来映えだな、とすら思えたのである。
多くの人が、ひと目で「上質感」を感じ取れる
まずはデザインから。実車を前にして、上質感がグンと高まっていることに気付いた。押し出し感の強い顔もさることながら、リアフェンダー周りの豊かな造形や、凝りに凝ったリアコンビランプなど、写真では伝わりづらい部分の仕上がりが、肉眼で見るととてもよくわかる。多くの人が、ひと目で「上質感」を感じ取れるに違いない。実はこの上質感の演出が新型エクストレイルの大きなテーマだったそうだ。かつてエクストレイルで海や山へと出かけた若者達も、年齢を重ねるとともにいいモノを知り、目も肥えた。そんな大人に満足して貰えるようなエクストレイルはどうあるべきか。それに対する日産の回答が新型エクストレイルなのだ。
ナッパレザーシートのラグジュアリー感は一見の価値あり
インテリアにも同じ考え方が反映されている。2トーンのダッシュボード、立体的なドアトリム、質感の高いスイッチ類など、そこに展開されているのはまさに高級車の世界観、とくにナッパレザーシート(メーカーオプション)のラグジュアリー感は一見の価値ありだ。一方、防水シートをオプションとして設定しているあたりはタフギアを謳ってきたエクストレイルならではのコダワリである。
乗って素晴らしかったからカッコよく見えてきた
しかし、新型エクストレイルの最大のトピックは走りだ。ぶっちゃけ言えば、乗って素晴らしかったからカッコよく見えてきた、という部分も多分にあると思っている。では何がそんなに素晴らしかったのか。ハンドリングと乗り心地を高い次元でバランスさせたシャシー性能も賞賛に値するが、何より驚かされたのが進化した「e-POWER」だ。e-POWERはエンジンで発電した電力でモーターを回して走るシリーズハイブリッド。初期のタイプは加速するとエンジンは唸るし、パワー感にもメリハリがなかった。イメージ的にはCVTのようなフィーリングだった。それが現行ノートで大躍進。具体的には、エンジンの存在感が大幅に低下するとともにモーター出力がアップし、EVのような走行フィールへと進化した。
本当に「充電のいらない電気自動車」に近付いてきた
新型エクストレイルはその部分にさらに磨きがかかった。ディーラー周りのちょっとした試乗では、EVだと言われたらそう信じてしまう人がいるだろうな、と思うぐらいエンジンの存在感が小さいのだ。初期のe- POWERは「充電のいらない電気自動車」というキャッチフレーズを使っていたが、いやいや充電のできないハイブリッドでしょ、と突っ込みを入れていたものだ。けれどここに来て、e- POWERは少なくとも走行フィールに関しては本当に「充電のいらない電気自動車」に近付いてきた。
静粛性とスムースさと遅れのない素直なパワーフィール
もちろん、アクセルを深く踏み込めば、モーターが求める大量の電力を発電するべくエンジンは回転数を上げる。しかし、1.5LのVCターボは、3気筒とは思えないスムースさと静粛性を保ってくれる。グイグイ力強く加速していく動力性能を含め、そうと知らされなければ1.5L3気筒とは誰も思わないだろう。ちなみに、VCターボとは日産が開発した可変圧縮比エンジンのこと。通常領域では高圧縮比で燃費を稼ぎ、パワーが必要なときは瞬時に低圧縮比に切り替えて十分な発電量を生みだす。燃費的にはトヨタやホンダのハイブリッドに及ばないが、電動駆動フィールの強さ、言い換えれば静粛性とスムースさと遅れのない素直なパワーフィールに関しては他をリードすると報告できる。
百聞は一見にしかず。この原稿を読んで少しでも興味を持ったらぜひ試乗してみて欲しい。きっと僕と同じ感想を持つはずだ。
※記事の内容は2022年10月時点の情報で制作しています。
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