2019年の東京モーターショーでコンセプトカーが公開されてから1年余り。2020年12月9日、ついに2代目MIRAI(ミライ)が正式発表・発売となった。先日、その市販モデルを公道で試す機会を得たので、早速レポートしてみたい。
前輪駆動から後輪駆動へ~2代目はFCHVの新たなフェイズへ
水素で発電して走る燃料電池車として2014年に登場した先代ミライは、当時のレクサスHS250h、つまり中型車用Kプラットフォームをベースに大改造を施し、水素貯蔵ボンベはリアシート下に1本、トランク側に1本それぞれ搭載してFCスタックは前席下に搭載していた。エンジンコンパートメント(以下、エンコパ)にはモーターが収まる前輪駆動。乗車定員は4名だった。
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対して新型ミライはレクサスLSやLCに採用されているGA-Lプラットフォームのナロートレッド版、つまりクラウンに採用されているものをベースに開発された。FCスタックをエンコパ内へ移すとともに、駆動用のモーターはリアアクスルへ移動して、新たに後輪駆動車へと変貌をとげたのである。
航続距離延長のため水素貯蔵ボンベは3本となったが、1本はセンタートンネル下に縦置きレイアウトするユニークな配置を採用。ホイールベースの延長を始め、パッケージングが一新されたことにより、乗車定員は5名に増えている。加えて前後の重量配分は後輪駆動車の理想値と言われる50:50を実現。FCHVならではの低重心も相まって、走りの安定感やハンドリングの進化にも期待が高まる。
新型MIRAIのボディ剛性感の高さは国産車トップレベル
試乗したのはメーカーオプションの20インチホイールを装備するZグレード。乗り出してすぐに気付くのは、圧倒的なボディの硬さだ。GA-Lがベースと書いたが、実際に共用しているのはエンジンコンパートメントとサスペンション形式くらいだが、大幅に強化・設計変更されている。もちろんフロア部分は専用設計。3本の水素タンクのうち1本をセンタートンネル部に納めるため、トンネル部分が大型になりシート後方の隔壁も頑丈にしつらえられている。
またボディ骨格にも、結合部の剛性を高めるレーザースクリューウェルディング(LSW)や構造用接着剤の接着範囲を拡大するなど念入りに組み上げられている。「ボディ剛性が高い」と言ってしまえばそれまでだが、そんな使い古された表現では語りきれない、もっと奥の深い「高剛性ボディ作りのノウハウ」があるように感じられた。
この堅牢なボディを生かしてチューニングされたサスペンションが、また絶妙な乗り味を提供してくれる。市街地から高速道路まで、あらゆる速度域で乗り心地が変わらない。フロアやステアリングホイールへの微振動はなく、エアサスペンションが装着されているような乗り味がどこまでも続く。
ステアリングフィールも然りで、高速道路などのランプウェイでもステアリングの操作量に対して適切な手応えとともに安定した旋回姿勢をキープする。手応えが曖昧で、頼りなかった先代ミライとは別モノと言える仕上がりだ。事前情報では、19インチ装着車のほうが乗り心地がいいと聞いていたのだが、20インチ装着車もなかなか頑張っている。
先進的であるものの奇抜ではなく誰が見ても「カッコイイ」と感じさせる内外装
高級車の指標のひとつでもある静粛性に関してはどうか。当然、モーター駆動なので車内に浸入してくる雑味のある音はほとんどない。基本的には路面とコンタクトするタイヤのパターンノイズのみと言い切れる。ただ、やや速度を上げていったときにリアのCピラーのあたりからわずかに風切り音が聞こえることがあったことは念のため報告しておく。
先代ミライのデザインは、先進性を前面に押し出したゆえ街中では少々異質な存在であった。その発表会はお台場のMEGA WEBで開催された。「このデザインどうですか?」と関係者に声をかけられ、思わず「怪獣みたいですね!」と答えてしまったほど。「そうですよね~ちょっとやり過ぎですよねー」と笑いながら応じた関係者だったが、目が笑っていなかった。複雑な心境だったのだろう。
一方、新型ミライは最近のトヨタ・デザイン言語が取り入れられおり、前述のような違和感はなくなった。先進的でいながら、それをいたづらに誇張はしていないところに好感が持てる。そのぶん強烈な存在感は薄められたが、だれが見てもカッコいい4ドアクーペスタイルになったことで、普及に弾みがつくことは間違いない。実際、街中での注目度は高く、赤信号で止まっていると多くの人が振り返る。止まりの撮影中にも「カッコイイですね!」と声をかけられたほどだ。
最小回転半径5.8mは狭い道で気を遣う
あえてネガティブな点を指摘するならば、ただでさえ大柄なボディに加えエンジンコンパートメントいっぱいにFCスタックとその補機類を押し込んでいるので、ステアリング切れ角に影響が出てしまっているところ。2920mmというロングホイールベースも相まって、小回りはあまり得意ではない(最小回転半径は5.8m)。
また、スタイル優先となったせいで、特に後席の乗降性にも影響が出てしまっている。その点では、クラウンはさすがに良くできている。逆に今後ミライが世代交代を重ねる中で決断を迫られる潜在的な課題(スタイル&空力をとるか、それとも実用性をとるか)として残っているかも知れない。(文:Motor Magazine編集部:阪本透/写真:永元秀和)
ミライ“Z”主要諸元
●全長×全幅×全高:4975×1885×1470mm
●ホイールベース:2920mm
●車両重量:1930kg
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:134kW(182ps)/6940rpm
●モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)/0-3267rpm
●FCスタック最高出力:128kW(174ps)
●一充電航続距離[参考値]:約750km
●駆動方式:RWD
●タイヤサイズ:245/45ZR20(メーカーオプション)
●車両価格(税込):790.0万円
[ アルバム : 新型ミライ“Z”写真アルバム はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
トヨタ車の後席の使い勝手の悪さや狭さは、ヤリスやカローラでも言われているのだけど、客のトレンドなのか、マーケッティング力なのか、販売の足カセになっていないようだ。どんな人が乗るのかの判断が的確なのか。
前席に評論家が座って、後席にカメラマンたちが座ったりする時には後席の乗降性は重要なのかもしれない。