バッテリーが新ユニットへ置換 航続600kmへ
電動化技術への大転換が進む、自動車業界。その大波をうまく捕らえたテスラは、見事な急成長を遂げた。これほどの成功を掴めるメーカーは、そう簡単に現れるものではないだろう。
【画像】バッテリー更新で最長600kmに テスラ・モデルY ロングレンジ 近似サイズのEVと比較 全161枚
振り返ること10年前、テスラは目新しいパワートレインを前面に打ち出す、誕生したばかりの小さなブランドだった。ユーザーのサポート体制は、最小限といって良かった。しかし、2024年では世界中で確かな支持を集めている。
ただし、既存の自動車メーカーが傍観しているわけではない。テスラも、アップデートの手を休めることはできない。2024年仕様として、クロスオーバーのモデルYへ小変更が施された。
シングルモーターで後輪駆動のRWDに搭載される、駆動用バッテリーが新しいユニットへ置換されたという。ただし、テスラは容量を公開したがらない。AUTOCARが得ている情報では、恐らく通常が60kWhで、ロングレンジでは75kWhなはずだ。
これに伴い、英国価格は4万4990ポンド(約864万円)から4万6990ポンド(約902万円)へ上昇している。そのかわり、ロングレンジRWDの航続距離は600kmへ伸延。電費は6.4km/kWhで変わりない。
これ以外、英国仕様のモデルYに変更はなし。アヒル口のようなフロントマスクや、ずんぐりと丸みを帯びたフォルムは従来どおり。2025年にはフェイスリフト予定で、モデル3のように多少リフレッシュされるのではないだろうか。
淡白な車内 多くのクルマを引き離せる346ps
インテリアは、感情の変化を生まないようにしたと思えるほど、ミニマリスティック。車載機能のほぼすべてのインターフェースになる、ダッシュボード中央のタッチモニターが、強い存在感を放っている。
ワイパーやヘッドライトの操作、ドアミラーやステアリングホイールの角度調整、グローブボックスの開閉などは、タッチモニターではなく、独立したスイッチやノブで行えた方が良いと筆者は思う。イーロン・マスクさん。
まだモデルYへ慣れていない自分は、運転中にスピードを確認しようとして、正面のダッシュボードへ目線を落としてしまう事が多かった。これは、過ごす時間が増えるほど解消されると思うけれど。
運転体験は、基本的には褒められる。右足へ力を込めれば、346psを簡単に引き出せる。停止状態からでも走行中でも、内燃エンジンで走る多くのクルマを、圧倒的な勢いで引き離せる。本当に、矢のように疾走してみせる。
ステアリングホイールの感触は若干人工的ながら、反応は直感的。興奮を誘うものではないものの、落ち着いて長距離をともにできる。
弱点といえるのが、あまり優れない乗り心地や姿勢制御。運転席からは平滑に見えるアスファルトでも、揺れが伝わり後頭部はヘッドレストでバウンドし続けてしまう。
自律運転システムの有能ぶりに感動
今回は、朝のラッシュ時間に約110kmほどを走らせてみた。デフォルトのドライブモードのまま、エアコンをオンにした状態での電費は5.4km/kWhとなった。別の日に同行程をチル・モードでこなしたところ、5.6km/kWhへ改善した。
カタログ値の航続距離へ近づけるには、エアコンをオフにし、かなり穏やかな気持で運転する必要がある。とはいえ、グレートブリテン島ではテスラの急速充電器、スーパーチャージャーが普及している。250kWという電力で、駆動用バッテリーを満たせる。
筆者が感動したのは、最高水準といえる自律運転システム。高度な車線維持支援やアダプティブ・クルーズコントロールが融合し、車線変更も安全に完了してくれる。大雨のような荒天時は、機能しなくなるようだが。
アップデートを受けた、モデルY。訴求力が大幅に強化されたとまでは、いえないかもしれない。だが僅かな価格上昇で、さらに長い航続距離を獲得している。多くのドライバーにとって、一層魅力的なバッテリーEVになったことは間違いないだろう。
◯:優れた動力性能と航続距離、急速充電能力 ボディサイズ以上に広々とした車内
△:乗り心地や静寂性は余り良くない 少し困るほどタッチモニターへ集約された車載機能の操作
テスラ・モデルY ロングレンジRWD(英国仕様)のスペック
英国価格:4万6990ポンド(約902万円)
全長:4750mm
全幅:1920mm
全高:1624mm
最高速度:217km/h
0-100km/h加速:5.9秒
航続距離:600km
電費:6.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1884kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:75.0kWh(予想)
急速充電能力:−kW
最高出力:346ps/6000rpm
最大トルク:42.7kg-m/500rpm
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
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