この記事をまとめると
■マツダスピリットレーシング「バーチャルからリアルへの道」の2期生トレーニングに密着
2024年もマツダはカーボンニュートラルでモータースポーツ! 「ENEOSスーパー耐久シリーズ2024年」にマツダ3と2台のロードスターで挑戦
■「バーチャルからリアルへの道」ではレースする上での心構えを徹底的に叩き込まれる
■2期生が慣れ親しむシミュレーターを使ってサーキット走行のエクササイズが行われた
マツスピ育成プログラム第2期生のトレーニングに密着
5月のある週末、港区にあるブリヂストングローバル研修センターで、マツダスピリットレーシング(MSpR)の2期生たちのトレーニングが公開された。MSpRは、昨年に続いて「バーチャルからリアルへの道」という育成プログラムを展開しており、選ばれた6名のうち5名が参加した。
会場となったのは6台のiRacing(アイレーシング)シミュレーターを備えるブリヂストングローバル研修センター。
リアルのモータースポーツでタイヤを供給する同社にとって、バーチャルで芽を出して羽ばたくドライバーは、将来的なユーザーであるだけではない。MSpRのモータースポーツ文化を広げる取り組みに共感したからこそ、コラボに至った点を、この日のブリヂストン側の責任者、山本塁氏は強調する。
普段、ここのシミュレーターは有料かつ予約制で月4日ほど一般開放されており、1回1万円でプレイできるという価格設定もゴルフやテニスと似た感覚で、しかも講師が教えくれる。
この日はアジア人で唯一、ウイリアムズEスポーツに所属しスーパー耐久ST5クラスにも参戦する武藤壮汰氏と、シムからキャリアをスタートしてスーパーFJに今年デビューした樺木大河氏が、シミュレーター・レッスンの講師を務めた。
まず午前中は、育成ドライバーの指導を担当するTCRジャパンの加藤彰彬氏による座学講義だった。氏はシミュレーターの作り手と初期からコンテンツ作りを担い、どう育成に活かすかにも取り組んできたがゆえ、リアルで練習をし始めると躓くポイントも熟知している。最終的に目指すマツ耐参戦に向けてのルール理解、レースする上での心構えについて、氏は次のように述べる。
「1期生のなかにも、実車のイメージは恐怖だったけど、それが楽しいに変わった、という人がいました。ゲームよりリアルの世界はさらに広がった世界で、たとえばクルマから伝わってくる情報量がまったく違います。リアルだとGや振動が伝わってくるし、車両感覚としてタイヤどこにあるか、距離感が悩みになったりもします」。
今日の2期生メンバーは全員、加藤氏から合格をもらって選ばれたとはいえ、選考基準は速さだけではない。それなり以上に速いのは当たり前で、落ち着いてクルマを操れて負担をかけないこと、そのスキルで6人を選抜しているという。
「皆さんは選ばれた以上、サーキットでは立ち居振る舞いごと気をつけて下さい。レースは自然の環境下で同じゴール目指すなかで、順位をつけるもの。ライバルがいて初めて成立します。だからライバルはリスペクトして下さい。皆が一緒にレースを走る仲間であり、ほかのエントラントとも仲良く。運転技術は大事だけど、それ以上に皆でレースを一緒にやっていけることが大事。今年、MSpRから出て終わりじゃなくて、そこから一緒に体験した楽しさを伝えてもらいたいです。だから身だしなみ、マナー、ピットでの態度、SNSでの発言も、意識してください。MSpRの一員であることを大事にして下さい」。
いざリアルのサーキット走行を想定しての準備とは?
加藤氏の言葉に、2期生の誰もが背筋を伸ばしたように見えた。ところが「じゃあ車両規定と競技規定について。レギュレーション、読んできた人は?」との問いには、全員が沈黙。バーチャルでは選ばれし優等生のはずなのに、申し訳なさそうに規定が記されたプリントをとりに行くところが、ちょっと可笑しい。
「ドライバーだからクルマが用意されていて当たり前と思わないこと。タイヤのボルト、空気圧チェックなど準備から一緒に。あと競技では誤作動すると危ないのでエアバッグは解除、ゼッケンもちゃんと見えるよう、撮られることも考えて格好よく。牽引フックの取付け、トランスポンダーやデータロガーの設置も」。
「前日に練習できない場合もありえます。予選15分だけ、とかいった場合は全員が少しづつ乗ってコースを見るとか、それこそシミュレーターの活きる場面です。あとエントリー受付はひとりだけ足りないとか、アイツどこ行ったかわからないとか起きるので、皆でまとまれるよう、トイレ行く際も誰かに伝えてください」。
「ヘルメットやグローブなど装備品をちゃんと用意して、サーキットに無事に来ることが大事。あとレース中は車内とピットで通信しますから、イヤホンを携帯電話に繋ぐ準備も。携帯電話は夏に熱暴走もありうるので、各自対策しておいてください。呼びたいのに呼べないとか、ヘルメット内で耳からズレないよう、同じ環境を作れるように練習しておいて下さい」。
eスポーツ経験者だけにシミュでは安定して好タイムを出す2期生
なるほど、すでにサーキット走行やレースを経験済みの人には当たり前かもしれないが、確かに避けづらいポカは走る以前から多々あるもの。昼食のあとはいよいよ、この日のトレーニングの目玉であるシミュレータールームへ。
まず筑波サーキットを2ペダルのパドルシフターで通常走行、つまり全開で走り出す。もちろんマシンはNDロードスターで現実にそんな仕様はないが、ハンドルコントローラー上でそれを選べる点がバーチャルの利点であり、全員が当たり前のように左足ブレーキだ。
それにしても、さすがグランツーリスモの世界大会やeスポーツですでにJEGTに参戦していたり、カート経験者を含む2期生。速い。誰もが1分2~3秒でラップを刻み続ける。
おおよそウォームアップが済んだところで、今度は2ペダル&シーケンシャルシフトで走る。つまり右足ブレーキと左手でシフトアップ&ダウンという、3ペダルMTへの移行プロセスだ。左手がステアリングから離れる時間がどうしても生まれ、シフトポイントを正しく選ぶ必要がある。
スピンからコントロールを失っても、何とか立て直そうとする2期生のひとりに、講師の樺木氏がこうアドバイスする。
「実車はスピンモードに入ったらブレーキかけて止めたほうが、ウン10万円違ってくるよ」。
数ラップ後には全員、当初より明らかに走りがスムースになって、さっきと遜色ないラップタイムで安定してきた。ピットイン時に4輪の摩耗率や偏りも確認できるが、速さを求めるだけではないトレーニングは、ここからだった。
「今度は5500rpm縛りで、加速もアクセルペダルの8割までで! (コーナーの)ボトムでのスピードは落とさず、加速は早めにシフト、早めにアクセルオフして。ダンロップはアクセルをなるべく戻さずに行けるところを探って、最終コーナーは手前から減速してまわること。それで1分7秒ペースで走れるよう。本番では、そこからさらに燃費をセーブしたり、6秒台に入れて、とかありうるよ!」。
ペースを少し抑えると、ドライバーの性格、ドライビングの丁寧さやスムースさで、燃費に少しづつ差が出てきた。筑波の次は、ツインリンクもてぎでも同じように全開と燃費走法を繰り返し、残量7リッターで誰がいちばん最後まで遠くまで走るか? という、マツ耐の本番さながらのエクササイズも行われた。
この日のトレーニングでリアルレースの雛たちは何を学んだか
かくして2時間みっちり走ったあと、デブリーフィングで2期生たちが今日の学びをふり返った。
「iレーシングは初めてで縁石の感覚もリアルでしたが、グランツーリスモではやったことないような燃費走法、アクセルオフでタイムをコントロールするのが新鮮でした(岩見遼太朗さん)」。
「素晴らしい場所で、丁寧でレベルの高い教えを得られました。リアルでもバーチャルでもスポーツマンであること、マインドセットの大事さも。燃費の耐久レースなので勉強になりました(鍋谷奏輝さん)」。
「思った以上に取材の方も大勢いて、驚きました。燃費走法としてショートシフトだけでなく、全開で踏まないことは新しい気づきでした(川上奏さん)」。
「ぼくも燃費走法は今日、初めてやって気づきがいっぱいありました。でも最初のペースの作り方が難しいので、慣れる必要アリですね(新木悠真さん)」。
「これまで一人ではやったことない走り方だったので、燃費走法からステアリングの入れ方や戻し方で、気づくことがかなりありました(石水優夢さん)」。
ここでシミュレーター講師のふたりから、講評が述べられた。
「走りは申し分なくて、あとは現実をどう考えながら走るか。今はシミュレーターですが、タイヤは丸いだけでなくたわむ、物理的なもの。世界の見え方がリアルのサーキット行くと変わってきます。実車のフィードバックを、クルマの動きと見え方を、精緻に意識していくと、シミュレーターでも上に行けます(樺木大河氏)」。
「シミュレーターの走りについては申し分ないですね。燃費もそうですがトラフィックなど、リアルではシミュレーターでどうしても出てこない問題があって、ミスしやすいもの。縁石に少しかけただけでも、あるいはイエローやオイルスポットでも。燃費もコンマ単位でなくマージンをとったり。リアルでは何か起きてからでは大変なので色々経験を貯めて、楽しく安全に走れるようになりましょう(武藤壮汰氏)」。
実際、一定のエネルギー量から効率よくパフォーマンスを引き出して、できるだけ速く遠くに走るのがマツ耐の基本ルール。マツダのブランド体験推進本部でMSpRの「バーチャルからリアルへの道」プログラムを企画した油目雅史氏は、こう述べる。
「私自身、eスポーツをずっとやってきて13年前、NCの時代に初めてサーキットを走ったクチでした。ゲームから来た子がリアルに走ると危ない、などといわれていたころで、むしろバーチャルやシミュレーターを活用できないか、ずっと温めてきたのを1年半前、MSpRブランドの立ち上げと同時に企画化できました。1期生9人のうち半分がJAF公式戦に進みました。マツダにはロードスターという、草の根からトップレベルのカテゴリーまで活用してもらえるツールがありますから、アメリカなど世界各地の現地マツダとも議論を始めたところで、参加型のモータースポーツ文化のすそ野を拡げられるんじゃないか、そんな想いでいます」。
いわば短期的には、6月以降の4戦での2期生の仕上がりや1期生の活躍に注目。そして中長期的には、バーチャルからリアルへの具体的なパスウェイとしてMSpRの育成プログラムが、単なる若手登竜門である以上に、参加型モータースポーツの入口となることに、注目だけでなく参加の機会をうかがうべし!
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