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ロバンペラを倒したドリフト王者がラリーに挑戦! すべてが「初」の世界を走ったKANTA選手を直撃した

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ロバンペラを倒したドリフト王者がラリーに挑戦! すべてが「初」の世界を走ったKANTA選手を直撃した

 この記事をまとめると

■2024年3月1日から3日にかけて全日本ラリー選手権「ラリー三河湾」が開催された

WRCの史上最年少チャンピオンは「ドリフト」も驚異の実力! 10月のフォーミュラドリフト・ジャパンにやってくる天才「ロバンペラ」って何もの?

■JN2クラスにはFDJ選手でもあるKANTA選手が参戦していた

■初めてのラリーをどう乗り切ったのかドライバーとコ・ドライバーへインタビューを敢行

 FRしか乗ったことがない男が挑戦する4WDの世界

 2024年の全日本ラリー選手権が3月1~3日、愛知県蒲郡市を舞台に開催された「ラリー三河湾」で開幕。LUCK with ROOKIE Racing Rally Teamの勝田範彦選手がニューマシン、トヨタGRヤリスRally2を武器にSSベストを連発し、大会および同マシンでの初ウイナーに輝いたのだが、もうひとり、ラリー三河湾で筆者が注目していたドライバーが、国内規定のGRヤリスでJN2クラスに参戦していたKANTA選手だった。

 KANTA選手はこれまでドリフト競技で活躍してきたドライバーで、2023年にはFDJ(フォーミュラ・ドリフト・ジャパン)でチャンピオンを獲得。最終戦の岡山ラウンドでは、WRC王者、カッレ・ロバンペラとの一騎打ちを制したことは記憶に新しい。

 筆者もFDJの岡山ラウンドでKANTA選手のドライビングに衝撃を受けたひとりだったが、そのKANTA選手がラリー競技にデビュー。全日本ラリー選手権のJN2クラスのサブカテゴリーとして新設された「MORIZO Challenge Cup」の登録ドライバーとしてラリー競技に挑むことになった。

 ちなみにMORIZO Challenge Cupは、若手ドライバーの発掘・育成を目的に設立されたカテゴリーで、原則25歳以下のドライバーが対象となる。JN2クラスよりも改造範囲が制限されていることが特徴で、年間成績優秀者にはフィンランドでの走行機会が与えられる……といったように、まさにトヨタの育成プロジェクトの入門的なカテゴリーだ。

 開幕戦にはキャリアの異なる7名のドライバーがこのMORIZO Challenge Cupにエントリーしていたが、そのひとりとしてKANTA選手も育成プロジェクトのファーストステップにチャレンジ。

 しかも、チームはWRCで活躍する勝田貴元選手が率いるTKモータースポーツで、新井敏弘選手や新井大輝選手、柳澤宏至選手など、これまで国内トップドライバーとコンビを組んできた保井隆宏選手がコ・ドライバーを担当するなど充実した体制だ。

 というわけで、開幕戦のラリー三河湾の会場でKANTA選手を直撃し、ラリー競技をはじめたきっかけやドリフト競技との違いなどを聞いてみた。

 ——基本的な質問ですけど、過去のモータースポーツ経験はドリフトだけですか?  競技車両もFR車両だけですか?

 KANTA選手:僕の場合はドリフトだけですね。父親がドリフトをやっていたので、僕も青森のサーキットでドリフトをやるようになりました。当然、FR車両しか乗ったことはありません。

 ——そのドリフト一本のKANTA選手がどうしてラリー競技に参戦することになったんでしょうか?

 KANTA選手:FDJで貴元選手と知り合ったんですけど、そこで声をかけてくれたことがきっかけでした。自分もFDJでチャンピオンをとったので、新しいチャレンジをしてみたいという思いもありました。同時にドリフト選手をもっと見てほしい、ドリフトを盛り上げたい……という気持ちもありました。

 ——ラリー三河湾を迎えるまでにテストはできたんでしょうか?

 KANTA選手:1回だけテストはできたんですけど、すべてが初めてなのでなにもかもが難しいです。4WDという部分もそうですが、ペースノートも難しいです。コ・ドライバーの保井(隆宏)選手にアドバイスしてもらっていますが、それがなければこんなに走れていないと思います。レグ1、レグ2で2回目の走行に合わせて少しずつ改善している状況です。

 ——ちなみにドリフトとラリーで共通する部分などはあるんでしょうか?

 KANTA選手:やっぱり、カッコ良さですね(笑)。

 ——マシンコントロールの部分でここが似ている……とかはないんでしょうか?

 KANTA選手:マシンが4WDなので、まだ手間取っている状況です。これがFR車両なら僕の経験や強さを活かせるんですけど、4WDは慣れていないので試行錯誤しています。

 ——かなり苦労している感じですね?

 KANTA選手:苦労していますが、楽しいですね。それにやり甲斐もあります。いまは向上心しかないので、とにかく成長したいと思います。

 ——ちなみに今年は全日本ラリー選手権のJN2クラスおよびMORIZO Challenge Cupに参戦していますが、FDJには参戦しないんでしょうか?

 KANTA選手:まだ体制としてははっきりしていませんが、FDJにも継続して参戦したい。二刀流ではないですけど、ラリーとドリフトの両方で強さを見せたいと思います。

 一方、KANTA選手とコンビを組むコ・ドライバーはKANTA選手をどのように評価しているのか? というわけで、続けて保井選手を直撃した。

 まだペースノートを100%信じて走っていない

 ——これまで、いろんなドライバーと組んでラリーに参戦していますが、KANTA選手の印象はどうでしたか?

 保井選手:まったくラリーを知らないし、林道もGRヤリスも初めてですからね。横で見ていると、運転の仕方や林道の走り方、ペースノートなどすべてのことに悩みながら走っている状況で、同じペースノートで「4」と表記したコーナー(注:コーナーの大きさを数値化)でも、ちょっとゆるかったり、ちょっとキツかったりしている。そういった意味では、KANTA選手はまだペースノートを100%信じて走っている状態ではないですね。

 ——なるほど。そういった意味でも経験が必要なんですね。

 保井選手:コース上にいないと経験は積めないので、いまはとにかくマイレージを稼ぐことが重要です。とくに今回のラリーではインカットをして砂がコース上に出てくるので、レッキをしたときと比べて本番はどういう荒れ方をするのか、そういった部分も経験しないと身につかない。そういう意味では、ちゃんと走行を重ねたことはKANTA選手にとってはポジティブな部分だと思います。

 このように慣れないラリー競技に苦戦を強いられていたKANTA選手だが、それでもコンスタントな走りを披露し、JN2クラスで7位/MORIZO Challenge Cupで3位入賞した。脱落者が続出するサバイバルラリーが展開されるなか、デビュー戦を走り切ったことはKANTA選手にとってリザルト以上に多くのことを掴むことができたことだろう。

 というわけで、最後にKANTA選手を要するTKモータースポーツの勝田貴元代表を直撃!

 ——そもそもKANTA選手をラリー競技に誘った理由はなんですか?

 勝田代表:若くて走りも含めて魅力のある選手を探しているなか、FDJでKANTA選手が素晴らしい走りをしていましたからね。ラリーをやってみたら面白いんじゃないかな……というところからKANTA選手に声をかけました。

 ——KANTA選手の走りはどうですか?

 勝田代表:KANTA選手はラリーが初めてですからね。レベル的には「TCって何?」といったところからなので、コ・ドライバーの保井選手に教えてもらいながら、まずはひと通りラリーをやってみるところからスタート。そのうえで、走り方とかペースノートで何が足りないのかをやっていくんですけど、まずは1歩目なので焦らずにやっていってほしい。クラッシュせずに帰ってきたので、その通りにやってもらっていると思います。

 ——KANTA選手は慣れないラリーに苦労していましたね?

 勝田選手:ラリーはモータースポーツのなかでも特異なカテゴリーで、経験値が必要になりますからね。パッと出てすぐに結果を残せる競技ではないので、最終戦までにどれだけ成長してくれるのか楽しみです。

 ——KANTA選手はドリフト出身ですが、ドリフトの技術のなかでラリーに活かせるものはあるんでしょうか?

 勝田選手:僕はドリフトをやっていないのでなんともいえませんが、グリップの限界を超えたところでマシンをコントロールするドリフトに対して、ラリーはグリップの限界を探るようなところでコントロールしますからね。そのあたりは違いますが、クルマの挙動やコントロールという意味では、四輪を使ってドライブするので基本的に同じだと思います。僕もレースからラリーに来ましたが、レースの経験が生きている部分もありますので、これからラリーを経験しながらドリフトから活かせるものを見つけることができればKANTA選手の武器になると思います。そのためにも、まずはラリーを知ってもらって少しずつステップを上げていってもらいたいですね。

 まさに異色のルーキー、KANTA選手は、全日本ラリー選手権で注目の存在。コースサイドで見る限り、まだまだ全開ではなく、探りながらのドライビングに見えるが、その分、伸び代があるだけにラリーとドリフトの二刀流に挑むKANTA選手の動向に今後も注目したい。

 なお、ラリー三河湾では山田啓介選手がJN2クラスで2度目の勝利を獲得するほか、MORIZO Challenge Cupのウイナーに輝いた。

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