個人情報の流出が問題になる昨今、PCを廃棄する際の処分方法なども話題になっている。クルマについてはどうか。愛車を手放すことになった場合、そこに自分の痕跡がどれだけ残されて、どんなことが起こりうるか考えてみたことはあるだろうか。
本稿では、愛車を売却したり、レンタカーを借りたりした際に、乗ったクルマに残された個人情報がどう危ないのか。そして、どうして残された痕跡を消さなければいけないのかについて、解説していこう。
これは愛車に積んでおこう!! トランクに常備したい便利なアイテム
文/柳川洋、写真/フォッケウルフ、メイン写真/kai-Stock.Adobe.com
【画像ギャラリー】愛車を売るとき、借りたとき、クルマに残る危険な個人情報とは?
■愛車から住所などの個人情報が特定できる場合も
先日、筆者はTwitterを眺めていて、ある投稿に目が止まった。
「ナビの出発地履歴から、前オーナーの自宅を特定した。目的地履歴からは推しアーティストも特定できた。さらにユーザーIDみたいなものから、Twitter垢まで特定。。。我ながらストーカー気質あると思う」
つまり、中古車を購入したら、そのクルマのカーナビに残っていた情報から、前オーナーの自宅や、好きなアーティスト、SNSのアカウントまで特定できてしまったというものだ。これだけの個人情報が洩れたら、いったいどんなことが起こり得るだろう。
カーナビから特定した住所では、Googleのストリートビューで自宅外観の写真を見ることができる。クルマの電動シートのメモリー機能から前オーナーの体格だってわかる。好きなアーティストやSNSアカウントが特定されれば、自分が今どんな場所にいるか(出かけ先か、自宅か)がわかることだってあるだろう……。
住所さえわかってしまえば、ネット検索で自宅周辺の雰囲気や写真を誰でも見ることができてしまう
前オーナーが女性ならストーカー被害に遭ったり、男性でも出先だとわかる投稿した直後に自宅へ空き巣に入られる可能性だってある。このような心配がまったくないとは言い切れないのだ。では、クルマを売却するときやレンタカー、カーシェアなどでクルマを借りた時、いったいどんな個人情報が残る可能性があるのか、それが悪用されるのを防ぐにはどうしたらいいのだろうか。
■電子機器にはプライバシーが詰まっている
整備記録簿を見ると前保有者の個人情報が記載されているというケースはいまだにある
愛車を売却する際は、車検証だけではなく、整備記録簿や自賠責の保険証、車庫証明など、自分の氏名だけでなく住所などが書かれた書類を売却先に渡すことになる。
個人情報保護法が施行されたおかげで、真っ当なディーラーや中古車買取業者は、個人情報が漏れないよう、名前や住所が出ている部分を切り取ったり、剥がせなくなるシールを貼ったりしてくれる。そのため個人情報の漏洩リスクはかつてに比べて減ったが、一部ではまだ前保有者の氏名や住所などがわかるケースも珍しくない。
気になる人は、情報漏洩対策を業者任せにせず自分でやってもいいだろうが、より問題なのは、前述のように個人情報が電子機器に残っている場合だ。愛車のカーナビには、過去の移動履歴が残されている。登録した自宅の住所や、目的地履歴だけでなく、遊園地やホテル、レストランなどの検索履歴や、走行軌跡情報なども、機種によっては保存されている。
Bluetooth接続でスマホと愛車を接続することは簡単だが、そこには落とし穴もある
それに加えて、カーナビにスマホを接続して使用している場合、さらに多くの個人情報が筒抜けになる。
たとえば、ハンズフリー機能で電話を使えば、着発信した電話番号の履歴も残るし、「山田太郎のiPhone」などのように、スマホの登録名を自分の名前にしていたら、Bluetoothでペアリングしたカーナビに自分の名前が残ってしまう場合がある。
名前が分かれば、SNSアカウントを検索され、所属先や趣味などの個人情報がさらに洩れることにもなる。
■レンタカーやカーシェアにも個人情報漏洩リスクが
ドライブレコーダーのなかでも室内録画機能があるものはデータの取り扱いに注意したい
「しばらくクルマを乗り換えないから関係ない」とか、「クルマを持っていないから大丈夫」という人であっても安心はできない。レンタカーやカーシェアを使う際にも、先ほど指摘したような個人情報漏洩リスクがあるのだ。
もちろん、大手のレンタカー会社や最新のカーシェアアプリ経由でクルマを借りた時などは、貸し出しされるごとに個人情報が消去されている可能性が高い。だが、クルマを借りて前の使用者の情報が残っていることに気づいた場合は、念のため自分の個人情報は自分で消去するようにしたい。クルマを返却する前、最後に立ち寄った場所が自宅であると推測するのは容易である。
ドライブレコーダーにも気を付けたい。最近のドラレコは室内を録画する機能が付いているものもあるので、自分の声に加えて、同乗者の顔などプライバシー度の高い動画が記録されている可能性がある。カーナビなどから割り出された個人情報とともに悪用されれば、リスクはさらに高まる。
レンタカーやカーシェアなどは、犯罪に悪用されることを防ぐため、勝手にドラレコの情報を消去できないようになっていることが多いが、自分の愛車を売る際は、ドラレコ内のSDカードを初期化するだけではなく、抜き去ってしまったほうがいい。復元技術の進歩で、初期化されたSDカードのデータを復元するのは意外と容易なのだ。
■コネクティッドカーでは走った速度もバレる
先日、個人間でのカーシェアサービスで、あるトラブルがあった。テスラのモデル3を貸し出したオーナーが、借りた人が制限速度の2倍を超えるようなスピードで走っていることをアプリで確認し、すぐにやめるようメールで依頼したという。
テスラなど最新のコネクティッドカーでは、現在クルマが、どんな場所をどれくらいの速度で走っているのかがリアルタイムで判明する。ちなみにテスラでは、車外からアプリ経由でクルマの最高速度を制限するような操作もできる。
レンタカーやカーシェア、コネクティッドカーでは、クルマの走行状況や使用状況を集めてサーバーへ送られているが、これは、あなたがいつどこでどんな運転をしているのか、すべてを把握しているとも言える。
急加速して時速何kmを何時にどこで出したとか、この交差点で急ブレーキを踏んだなど、位置情報と時間、走行状況のデータが保存されている。技術の進歩するにつれ、オーナーの行動すべてが筒抜けになってしまうリスクも高まっているのである。
どこでどれだけのスピードで走っていたかがデータ化されているとは……笑えない話である
◆ ◆ ◆
これらはすべて可能性の話ではあるが、このような危険がまったくないとは言い切れない。かつて所有した愛車やレンタカーで借りたクルマなどから個人情報が洩れて、予期しなかったトラブルに巻き込まれるようなことがないよう、「クルマは個人情報のかたまり」だという認識を常に持っておいたほうがいいだろう。
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みんなのコメント
プライバシーの問題もあるし。
違反がばれるとかそういう次元じゃなくて、見張られている感覚がもう受け付けない。
ま、今の年齢からして運転するのはあと20~30年だし、それまでは古い車を直しながら頑張りますかね。