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フェラーリは復活するのか?──【連載】F1グランプリを読む

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フェラーリは復活するのか?──【連載】F1グランプリを読む

F1を面白くすることはフェラーリにしかできない! モータージャーナリストの赤井邦彦がその理由を解説する。

犯人はフェラーリ

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ここ数年F1グランプリが面白くないという声が多く聞かれる。理由を尋ねると“メルセデスとルイス・ハミルトンが強すぎるからだ”という返事が返ってくる。毎回ハミルトンがドライブするメルセデスが逃げ切って勝ち、他のドライバーやチームが表彰台の中央に立つチャンスが少なく、これがF1グランプリをつまらなくしているという。確かにメルセデスとハミルトンは圧倒的な強さを誇る。2020年には7度目のチャンピオン・タイトルを獲得した。しかし、メルセデスにもハミルトンにも、レースをつまらなくしている責任はない。責任があるとすればメルセデスに追いつけるクルマを作れない他チームであり、ハミルトンを攻略できない他のドライバーではないか。

では、力不足のチームの中で真の犯人を見つけるとすると、どこのチームということになるのか? 私は、フェラーリだと思う。フェラーリこそ現代のF1グランプリをつまらなくする元凶といっていいだろう。それは、裏を返せばフェラーリは強豪チームでありトップ争いに絡んで来なければいけないチームであるという諒解があるからだ。しかし、このイタリアの名門チームは時として大転げするのである。その顕著な例が2020年。この年、彼らは一度も優勝がなく、コンストラクターズ選手権でも6位に甘んじた。2000年から08年まで7度もコンストラクターズ選手権を制したチームとは思えない体たらくである。これではF1グランプリは面白くならないはずだ。

さて、2020年のフェラーリの欠点はどこにあったのか? チームのマネージメントのせいにする者もいるが、私は低調の原因はクルマの性能不足にあったと考える。フェラーリSF1000と呼ばれた2020年型のクルマは、恐らくこれまでフェラーリが製作したF1マシンの中で最も性能の劣るクルマだったと言えよう。特にパワーユニット(エンジン)の非力振りは目に余るものがあった。なぜそうなったのか? 噂では、2019年に向けてFIAが制定した燃料流量規制に関する複雑すぎる技術規則をクリア出来なかったからということらしい。超一流チームが本当にそんな素人のような失敗をするのだろうか? まさかと思うだろうが、こうした失策はどこのチームにも起こることだ。それはほんの僅かな性能差が大きく成績に響くF1グランプリならではの現象だ。

フェラーリの誤算

そして2019年の末、フェラーリに誤算が生じた。新型コロナウイルス蔓延を受けてFIAがパワーユニット改良禁止の規則を発布したおかげで、2020年に向けてパワーユニットに大幅な改良を施す予定だった計画が中止を余儀なくされたのだ。結果的に2020年も性能不足の2019年型エンジンで戦わざるを得なくなり、シーズンが始まる前から苦戦は十分に予測されていたのである。と、まあこういう衝撃波がフェラーリを襲ったせいでメルセデスどころかレッドブルにも、さらにはレーシングポイントやルノーにも後塵を浴びせられるシーズンになったわけである。その結果、F1グランプリは「つまんね~」シーズンになってしまった。

しかし、我々は気づいた。フェラーリが甦ればF1グランプリは面白くなる、という結論である。漆黒や濃紺の暗いイメージのクルマばかりが上位を走るF1レースで、目にも鮮やかな朱色のフェラーリが上位に切り込んでいく姿を想像してみれば、2000年代にミハエル・シューマッハの手で勝利を重ねたフェラーリの姿が彷彿とする。F1グランプリはフェラーリあってのレースなのだ。

では、2021年、フェラーリの復活はあるのだろうか? もし、漏れ聞く噂が本当であれば、復活は大いに期待出来る。では、パワーユニットのどこが変わったのか? 伝え聞くところによると、新機軸の導入よりも2019年型ユニットの性能不足個所の改良に焦点を当てたパワーユニットになるとのこと。例えばこれまで単体として搭載することでマウント位置に苦労していたターボチャージャーを、メルセデス同様にタービンとコンプレッサーを分離させて搭載することによって小型化を可能にしたこと。2022年に投入を予定していた燃焼室の形状を大幅に変更した“スーパーファースト”シリンダーヘッドを前倒しで投入したこと。信頼性を損なう元凶だった狭い排気管を、ギアボックスのデザイン変更でクルマの後部にスペースを確保することによって太くできたこと。エネルギー回生システムMGU-Kの性能を上げたこと……と、とにかく考えられるマイナス要素をすべてプラスに変える努力がなされた。というように、メルセデスとの差を可能な限り縮めることを念頭に開発された2021年型フェラーリ、のはずである。

そして最後に期待と共に語られるべきはドライバー・ラインアップの変更だ。これまでフェラーリをしょって立ってきた(はずだった)セバスチャン・ベッテルが、2015年以来6年間在籍したフェラーリを離れた。ベッテルは2017年、18年と選手権2位に着けたものの、フェラーリではついにチャンピオンには輝けなかった。ベッテルの不調の穴を埋めたのは2019年からチームに加わったシャルル・ルクレール。19年に2勝してフェラーリの次代を担うエースと期待されたが、20年にはオンボロ車に手を焼いて、選手権8位が精一杯だった。それでもベッテルの13位よりはましだったが。

2021年、ベッテルに代わってチームに加入するのはカルロス・サインツJr.。ルクレールより3歳上の26歳。F1グランプリ経験も6年になるがまだ勝利はなく、20年のイタリアGPの2位が最高位。正直なところ、まだ才能未知数のドライバーである。このふたりの若手ドライバーを抱えて、フェラーリはいかなる戦い振りを見せるか? 本来、若手とベテラン・ドライバーの組み合わせが理想的だが、そうも言っていられない。ふたりのエネルギーがお互いの力を向上させる方向に働いて欲しいと願うばかりだ。ふたりが衝突するようなことにでもならなければいいが、とオジサンは心配するのである。

PROFILE
赤井 邦彦(あかい・くにひこ)

1951年9月12日生まれ、自動車雑誌編集部勤務のあと渡英。ヨーロッパ中心に自動車文化、モータースポーツの取材を続ける。帰国後はフリーランスとして『週刊朝日』『週刊SPA!』の特約記者としてF1中心に取材、執筆活動。F1を初めとするモータースポーツ関連の書籍を多数出版。1990年に事務所設立、他にも国内外の自動車メーカーのPR活動、広告コピーなどを手がける。2016年からMotorsport.com日本版の編集長。現在、単行本を執筆中。お楽しみに。

文・赤井邦彦

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