アウトドアにも強い! 便利なシャコアゲ軽バン
エブリイ、ハイゼットといったワンボックス軽バン。荷物をたくさん積んで街中を走るビジネス用のイメージが強いが、その広い室内はアウトドアユースとも相性がいい。ラックやベッドキットを置けばより効率的に荷物を収納できるし、車中泊もこなせる。
「シャコアゲ」の波はアルトにラパンにトコットまで! 似合わないと思いきや「ハッチ軽」のアゲが驚きのカッコよさ
さらに車高を上げれば雰囲気もグッと垢抜ける。リフトアップ系のカスタマイズは今どきの近未来的なデザインのクルマより、飾り気がない無骨なクルマの方がよく似合うのだ。ハイエースや軽トラを上げると様になるのと同じ理屈で、軽バンにはアゲがハマる。
タイヤを大径化し、オフロード系のゴツゴツしたタイプを選ぶのも効果的。見た目もそれっぽくなるし、最低地上高を稼げるから走破性能も向上する。ジムニーのように岩場を登ったりはできないが、ぬかるみに強くなり、石がゴロゴロしているような河原くらいは走れるようになったりする。
ということで今回は軽バンのリフトアップのやり方やメリット・デメリット、必要コスト、法規に関することまで詳しく解説。軽バンでアウトドアを楽しみたいと考えている人は必見です。
メリットも大きいがデメリットが出てくるのもお忘れなく
リフトアップのメリットは主に2つ。車高が上がることでボディがひと回り大きく見え、迫力が増してカッコよく見えること。そしてタイヤとフェンダーとのクリアランスが広がることで、大径タイヤを履けるようになること。
またそれに付随して、アイポイントが高くなって遠くまで見晴らしが良くなる→先の道路状況が読めるようになるから運転しやすく、渋滞時などのストレスも軽減される。大径のオフロードタイヤを履く→未舗装路に強くなる、という利点も出てくる。
一方で実はデメリットも多い。他のカスタマイズと同様、イジるには相応のリスクが出てきてしまう。それを飲み込めないなら素直にノーマルで乗るのが一番だ。また車高をアップするほど、タイヤのサイズを大きくするほど、デメリットも大きくなる傾向。
【軽バンリフトアップの主なデメリット】・走行性能の低下(加速、制動距離、安定性、燃費等)・駆動系に負担が掛かり消耗が早くなる・乗り降りや荷物の積み下ろしがやりにくくなる・直前直左視界が低下するので対策が必要になることも・ディーラーで入庫を断られる可能性もあり
ビギナーは約30ミリアップの“ちょいアゲ”がおすすめ
車高を上げるほど見た目もガラリと変わり、大径タイヤも履きやすくなり、それに伴って走破性能も上がる。ただし前述の通りデメリットも大きくなってしまう。そこで初心者におすすめしたいのが“チョイアゲ”だ。
リフトアップ量は30ミリ前後と控えめながら、少ないパーツ点数で手軽にやれる。基本的に車検には引っかからないし、乗り心地などもさほど変わらない。
やり方はスプリング交換が一般的。純正よりもやや長く、硬めのモノに交換することで車高を上げる。フロントはキャンバー角がポジティブ方向に倒れるため、キャンバーボルトでこれを補正したい。リアも車軸が左右にズレるので、調整式ラテラルロッドに交換するがベターだ。参考コストはパーツ代が3~5万円、取り付け工賃は3万円前後。
タイヤはインナーを少々加工すれば165/60R15(外径579ミリ)が履ける。純正タイヤは145/80R12で外径は536ミリ。つまりこのタイヤ外径差で20ミリほど車高が上がる計算。するとスプリング分と合計して約50ミリアップになる。チョイアゲでも十分見栄えがするはずだ。
ホイールのインチアップまではちょっと…という人なら、純正サイズの145/80R12のまま、オフロード系タイヤに履き替えてみるのはいかがだろう。トーヨータイヤのオープンカントリーR/Tや、ヨコハマのジオランダーM/T G003あたりがおすすめだ。
2インチ以上のアゲは見た目はいいけど上級者向け
チョイアゲでは物足りないという人は、2~4インチ(約50~100ミリ)アップを狙う感じになる。このクラスになるとスプリング交換では上げられない。純正のショックが伸び切ってしまうからだ。よってサスペンションをスペーサーでかさ上げするか、スプリング&ショック丸ごとロングストローク仕様に交換する手法が取られる。
手軽で低コストなのは前者のかさ上げ式。サスペンション自体は純正のままなので、足の硬さ/柔らかさは変わらない。しかし車高が上がって重心が高くなる分、カーブなどでロールはしやすくなる。
その辺まできっちり対策したいなら、後者のサスペンション交換式がいいだろう。商品にもよるが、車高アップに伴うフラ付きが抑えられ、安定感ある走りが楽しめる。さらに減衰力調整機能付きなら、ショックの硬さをアレンジして好みの乗り味に近づけられる。ただ、コストはかさ上げ式に比べると倍以上に跳ね上がる。
いずれにせよ2インチ以上のリフトアップになると、スプリングやショック以外のパーツも必要になる。車高アップに伴ってドライブシャフトに角度が付き、ブーツが破れたり異音が出るリスクが発生するからだ。また上げ幅によってはプロペラシャフトの長さも足りなくなり、これも異音や破損の原因になる。それらを補正するにはメンバーダウンブロックやブラケット、プロペラシャフトスペーサーなどが要る。他にもステアリングシャフトやブレーキホースを延長しなくてはならない。
コストはピンキリだが、2インチアップのかさ上げ式だとパーツ代+工賃で10~15万円くらい。4インチアップのサスペンション交換式だとパーツ代だけでも30万円、工賃で15万円くらい掛かったりする。
加えて車検を通すには記載変更や構造変更といった手続きも必要。チョイアゲと2インチ以上のアゲでは難易度が大きく異なるのだ。
キット取り付けは素直にプロショップに頼むのが無難
腕に覚えがある人なら、チョイアゲキットであればDIY装着が可能かもしれない。しかしただ付けて終わりというものではない。特にキット装着後のフロントのサイドスリップ調整とヘッドライトの光軸調整は必須。いずれもテスターがないと正確に調整できない。カスタムショップや指定/認証整備工場に頼むべきだろう。
2インチ以上のリフトアップの場合は、きちんとしたアゲのプロに依頼したい。メンバーダウンブロックやブラケットなどを正しく装着するには、専門的なノウハウが不可欠になる。できれば四駆に強いショップに頼み、その後のメンテや車検もそこにお世話になるというのが理想だ。
副代理店やサブディーラー系の店では、あらかじめリフトアップキットを装着し、公認も取得済みの状態で販売されるコンプリートカーを販売しているところもある。新車コンプリートなら、普通に新車を買うのと同じようにグレードやボディカラー、装備なども自由に選べて、しかも車体とパーツを別々で購入するよりもグッとお得な価格で買える。ベース車から探しているという人は検討してみるのもいいだろう。
オフロード系の大径タイヤを履けばスタイルが決まる
リフトアップするならタイヤ選びも重要だ。ノーマルのままでもダメというわけではないが、車高が上がるとタイヤとフェンダーアーチのクリアランスが広がる。ノーマルタイヤは外径が小さいので、スカスカ感というか、何か物足りない雰囲気になってしまうのだ。
できれば外径を少し大きくして、なおかつトレッドパターンもゴツゴツしたオフロード系を履きたい。具体的には、チョイアゲなら155/65R14(外径557ミリ)、145R13(外径568ミリ)、165/60R15(外径579ミリ)あたりが狙い目。
2インチ以上になると145R14(外径590ミリ)や165R14(外径626ミリ)が視野に入ってくるし、ハイエンドユーザーの中には175R14(外径642ミリ)、185R14(外径659ミリ)を履く猛者もいる。
もちろん大きすぎるタイヤは車検には通らない。タイヤ幅が175や185ではフェンダーからはみ出す可能性も高い。物理的には何とか履けても、合法ではないケースも出てくるのでご注意を。
また軽バンはLT(ライトトラック)規格のタイヤじゃないとダメでしょ、と考える人も多いが、法的には耐荷重をクリアしていれば乗用タイヤでも車検に通る。とはいえ、外径が大きすぎたりはみ出したらNGだし、検査官によっては乗用タイヤだと無条件でハネるケースもあるらしい。
その他、リフトアップするならこんなことにも注意しよう
●40ミリを越える車高アップは要構造変更 全高の変化量が±40ミリを越える場合は構造変更が必要、という法規がある。よってちょいアゲであればまず構造変更は不要で、2インチアップ以上になると必要になるという感じだ。
ただこれは正確には「指定外部品」を使って車高を変えた場合の話。「指定部品」を使ってリフトアップした場合には当てはまらない。スプリング、ショック、車高調といったパーツは指定部品なので、これらで41ミリ以上上げた場合は構造変更は不要となる(しかしそうしたリフトアップキットは数少ない)。
タイヤも指定部品につき、外径を大きくして車高が上がっても基本的にはお咎めなしだが、外径が規定を超えるとアウト。タイヤ外径が大きすぎるとスピードメーターの数値より実速度の方が速くなってしまうからだ。具体的にはメーターが40km/hを指した時、実速度が30.9~42.55km/hの範囲内に収まらないとダメ。もちろんタイヤがフェンダーからはみ出してもNGとなる。
一方、スペーサーやブロック類は指定外部品。2インチ以上のリフトアップキットの場合、ほぼ確実にこうした指定外部品が使われる。よって構造変更も必須となる。構造変更と聞くと初心者は思わず構えてしまうが、ショップに依頼すれば3~5万円ほどで請け負ってもらえるし、以後は公認状態で安心して乗れる。
だが全高が2メートルを越えると1ナンバー車になってしまう。税金面や手間から軽バンを1ナンバー登録する人は皆無だろうから、いくら上げても全高2メートル以下というのが基準になるだろう。ちなみにN-VANは純正で全高が1945ミリ(四駆は1960ミリ)もあるので、チョイアゲがせいぜいということになる。
●直前直左視界をしっかり確保すること 車高が上がると助手席側の前方(直前)、そして助手席側の側方(直左)が見えにくくなる。たとえば小さな子どもがそこにいた場合でも、目視できない可能性がある。そのため車検時にはココを厳しくチェックされる。具体的には直径30センチ×高さ100センチの円柱型テスターを直前直左に置き、目視できるかどうか。できなければ対策を講じないと車検には通らない。
直前視界は前方を映すカメラ&それを確認できるモニター、またはモニター付きのドラレコが視認できる位置にあればOK。直左視界はドアミラー下に補助ミラーを追加したり、サイドカメラ&それを確認できるモニターを設置すればOK。いずれも簡易的な取り付けではなく、ガッチリ固定され、配線も見えない状態にする必要がある。
こうした対策はだいたい2インチ以上から必要となる。チョイアゲは微妙なラインだが、それほど大きなタイヤを履かせていなければ対策なしで車検に通ることも多いようだ。
●アライメントや光軸の狂いを補正する リフトアップするとアライメントが確実に狂う。特にキャンバー角とトー角はしっかり調整しないと真っ直ぐ走らず、さらにすごい勢いでタイヤが偏摩耗する。ただでさえオフロード系タイヤはオンロードでのグリップ性能が若干落ちる上、摩耗も早い。安全に乗るためにもアライメント調整はきちんとプロにやってもらおう。
ヘッドライトの光軸もたいていおかしくなる。ロービームでもハイビーム気味になったりと、対向車に迷惑を掛けることもある。そんな状態ではもちろん車検も通らないので注意だ。
あとは自動ブレーキ車だが、車高アップに伴ってセンサー位置が変わり、正常に機能しなくなるのではないか…という危惧もある。ただこれは車種やメーカーによっても変わってくるし、何ミリ変化したら機能に変化が出るかなど実証できておらず、どうすれば正解なのかハッキリしていない。
「エーミング」といってセンサーの再調整をするケースもあるが、それで万全ともいい切れない。法的に何か規則があるわけでもないので、この辺の判断は施工店に任せるしかない。
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