一見ではコンディション良く見えたスーパーカブC100
しっかり保管されていた様子は伺い知れる筆者が手に入れたスーパーカブC100。野ざらし、雨ざらし状態の放置車両と比べれば、やっぱりコンディションは良い印象です。ガソリンが腐っていても、ネチョネチョにはまだ届かず、ガソリンタンク内部のサビも、薄っすら始まっている程度で済みました。中性洗剤+お湯で一晩洗浄した後に、水道水ですすぎ洗いしただけで、サビも汚れも洗い流すことができそうなコンディションでした。
【画像】ホンダ「スーパーカブC100」エンジン腰上オーバーホールの様子を画像で見る(12枚)
しかし、エンジンに関しては、正直、苦労しそうです。クランクケース周りやエンジン周辺の見え難い部分のコンディションは今ひとつでした。農道や田んぼの畦道で走っていたスーパーカブだと思われます。
粘土質のドロは、洗車だけでは簡単に落すことができない強烈なものです。エンジンを降ろしてからひっくり返して、クランクケースの底から後方に堆積していたドロをスクレパーでそぎ落としました。その作業中には地層!? のような部分もありました。
プレスフレームの内側にもドロがびっしり付着していて、こちらも水道水+ホースで洗浄しても、簡単には落ちません。ここでもスクレパーを使って、ドロの塊を砕き落としながら、腰の強いナイロンブラシでゴシゴシ磨きを繰り返しました。結果的には、半日以上かけて気になる部分のドロ汚れを落しましたが、まだまだ納得できる状況に至ってはいません。
驚きのピストンリング摩耗!! 白煙モクモクの原因が明らかに
エンジン内部も想像以上に汚れていました。過去にクラッチカバーを外そうとした形跡がありましたが、パンスクリューの頭がナメてしまったことで、おそらく分解することなく(分解できずに)、そのまま何年も走り続けていたのかも知れません。
今回のエンジン降ろしのタイミングでは、エンジン始動時に吹き出す白煙モクモク対策がメインになります。しかし、せっかく分解するのだから、クランクケースカバーやエンジン腰上パーツは耐熱缶スプレーでペイントして、分解できる部品は取り外してから美しく磨いてあげたいと考えています。
気になるエンジン腰上(シリンダー+ピストンやシリンダーヘッドの総称)は、ピストンリングが完全磨耗状況でした。抜き取ったシリンダーに、分解したピストンからピストンリングを取り外して「単品」で挿入することで、ピストンリングの合口隙間を測定することができます。
そのような作業手順で合口隙間を測定すると、なななんと!! 3mm近くもの隙間がありました!! ぼくの経験上では、最大値です。2ストエンジン以上に元気良く白煙を吹き出すはずです……。本来の合口隙間は0.3~0.4mm前後で、0.7mmを超えると部品交換限度とサービスマニュアルに記載されている例が多いはずです。
こんな状況になるまで乗り続けられていたことを考えると、以前のオーナーさんは、2ストエンジン車と同じ感覚でスーパーカブに乗られていたのかも知れませんね。こんな部分からも、スーパーカブC100の耐久性には驚かされてしまいます。
【改ページ】摩耗したエンジン部品は「内燃機部品加工で再生」
エンジン腰上の分解手順を大雑把に記しますと、シリンダーヘッド→シリンダー→ピストンの順で分解していきます。OHVエンジンだから分解作業は楽々です。
シリンダーヘッドを取り外すと、ピストントップや燃焼室内に堆積した真っ黒なカーボンがよく見えます。コンプレッションがしっかりしているコンディションだとすれば、燃焼室内もピストントップも「焦げ付いたカーボン」と表現できます。しかし、このC100エンジンに堆積していたカーボンには「エンジンオイルの輝き」が目立ちました。
シリンダーヘッドを降ろした段階では「オイルあがりが酷いなぁ……」と思いましたが、その直後にシリンダーを抜き取り、前記したようにピストンリングの合口隙間を目視確認したことで「白煙まき散らすわけだよね~」と理解しました(オイルあがりとは、ピストンリングの摩耗や、特に、オイルリングの張力不足が原因で、白煙を吹き出すケース)。
燃焼室内とピストントップがこうもカーボンだらけということは、逆に、燃焼ガスがクランクケース内に入り込んでいて、相当な汚れ状況になっているのだろうと想像できます。
シリンダーヘッドと旧排気バルブ、シリンダーとオーバーサイズピストンをiB井上ボーリングさんへ持ち込み、内燃機加工をお願いしました。STDサイズのピストンだったので、通常なら0.25オーバーサイズで済むような気がします。
しかし今回は、あまりにもピストンリングが摩耗していたので、0.50オーバーサイズ(通称2オーバーサイズ)を探しました。
しかし、バイク仲間の知人がスペアで0.75オーバーサイズ(3オーバーサイズ)のピストン+ピストンリングをストックしていて、しかもバイクは売ってしまったから手元に無いとのお話しを聞き付け、0.75オーバーサイズのセットで格安購入し、ピストンクリアランスを指定して、プラトーホーニングにて加工仕上げして頂きました。
プラトーホーニングとは、指定したピストンクリアランスに仕上げながらも、要所要所に深い溝をつけて「潤滑用のオイル溜まりを作る」と言った、メーカー純正シリンダーでは当たり前のボーリング&ホーニング仕上げ技術になります。iB井上ボーリングは、60年代からメーカー純正シリンダーの量産を請け負う工場でもあったので、メーカー純正クォリティの内燃機加工が可能なのです。取材協力/井上ボーリング
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みんなのコメント
見たこともないし、聞いたこともない。
もし事実なら、ギネスものでしょ