■アマゾン傘下の「AWS」はトヨタをどう変える?
トヨタは2020年8月18日、Amazon.com傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と、トヨタが推進しているモビリティサービス・プラットフォームに関して包括的な業務提携を実施することを明らかにしました。
自動車産業界とIT・通信産業界からは「予想はしていたが…、ついに本格始動したか?」という声が挙がっています。今回の提携によって、いったいどのようなことが起きるのでしょうか。
トヨタがアマゾンと組むと聞くと、トヨタがネット通販に参入するとか、トヨタがアマゾンで新車のネット販売を始める、といったイメージを持つ人がいるかもしれません。
もちろん、そうした可能性も将来的には十分あると思いますが、今回の業務提携はもっと規模が大きく、さまざまな産業に対するインパクトが極めて大きいと感じます。
では、素朴な疑問として、AWSとは何者なのでしょうか。
AWSの関係者に直接話を聞くと、「もともとアマゾンの通販事業での実務を通じて、自社内でクラウドサービスを活用するうえでトライ&エラーを繰り返してきました。
そうした経験をもとに、他社向けのクラウドサービス事業を始めました。一般的には馴染みがないのかもしれませんが、AWSは世界のクラウド業界で大手です」と説明します。
そんなAWSとトヨタは、これまでも連携してきました。
例えば、2018年1月に米ラスベガスでの世界最大級の家電・IT見本市「CES」で公開された、モビリティサービスEV「e-パレットコンセプト」では、ウーバー、中国のライドシェアリング大手ディディなどと共に、Amazon.comがモビリティサービスパートナーとして参画しています。
この場合、アマゾンという企業全体として、通販事業からAWSが管轄するクラウドサービスまでをイメージしてきました。
一方、今回はトヨタの既存の全事業、および将来的な事業全般でのモビリティサービス・プラットフォームで連携するという、AWSにとって超ビック級のビジネスだといえます。
トヨタがいう、モビリティサービス・プラットフォームとは、新車全車に搭載されるDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)という通信機器によって、車両の走行データや顧客データを約1分間に一度の頻度でクラウドに送信し、それらデータを解析することで、車両メンテナンス、自動車保険、シェアリング事業、また新車の製品企画や設計にまで活用するものです。
トヨタのチーフ・インフォメーション&セキュリティオフィサーの友山茂樹氏は「今回のAWSとの提携拡大により、ビッグデータ基盤を強化していくことは、CASE (コネクテッド・自動運転・シェアリングなど新サービス・電動化)時代の大きな強みとなる」と語っています。
■トヨタとAWSの提携が業界関係者から注目される理由とは
トヨタとAWSとの連携の成果は、既販車から得られるビッグデータ解析によって、早期に見える化されていくと思われます。
これだけならば、さまざまな業界で今回の提携拡大はそれほど大きな話題にはならないでしょう。
重要なのは、さらにその先です。クルマだけではなく、社会全体に対するデータビジネスに、トヨタが本格参入することにあります。
具体的な例として、2020年3月24日にトヨタとNTT(日本電信電話)が協業の発表した、街のデータプラットフォームがあります。
街とは社会全体を意味し、そのなかで乗用車、商用車、公共交通機関など広義でのモビリティや、医療、行政、教育が高度な通信環境で結ばれる、いわゆるスマートシティの構築を目指すとしています。
実証試験として、富士山麓に建設中のトヨタ「ウーブンシティ」を使うことを明らかにしています。
こうした社会全体におけるモビリティサービス(MaaS)において、国土交通省は2020年3月に「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」を発表しました。
このなかで、データ連携を総括的におこなうデータプラットフォーマーとして、国際的な連携を視野に入れることが必須だと指摘しています。
そうなれば、いわゆる「GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)待ち」になる可能性が高いと思われてきました。
クラウドという観点では当然、AWSの動向に注目が集まっていたところ、今回のトヨタとの総括的な連携発表となり、「予想はしていたが…」と漏らす自動車・IT・通信業界関係者が多いのです。
トヨタの豊田章男社長は以前から「トヨタは自動車会社からモビリティカンパニーへと変わる」と将来事業における展望を示してきました。
AWSとのグローバルでの包括連携は、そうした時代変化の過程で大きな節目になるように思えます。
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先日、テスラ盲信者が「テスラはデータビジネスにも進出していて、ただの車メーカーではない」といった戯言垂れている人がいたけど、この記事をどう見ているのかな?