日産自動車は2023年3月9日、同社が推進する電動化技術、EVとe-POWERの技術的なアドバンテージと、次世代の電動パワートレインに採用技術を発表するとともに、次世代の共用化、モジュール化を実現する「X-in-1」の試作ユニットを公開した。
EV用の「3-in-1」(左)とe-POWER用の「5-in-1」パワートレイン日産は中期ビジョン「Nissan Ambition 2030」で2030年度までに19車種のEVを含む27車種の電動車を導入することを発表しており、グローバルでの電動車のモデルミックスが55%に達するとの見通しを発表している。
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この目標に向かって、パワートレインは2026年には27機種(電動パワートレイン:4機種、内燃エンジン:23機種)に絞り、2030年には電動パワートレイン:3機種、内燃エンジン:16機種まで低減させるとしている。そのために電動パワートレインはEVとe-POWERの共用化をより推進し、モジュール化した新開発電動パワートレインのX-in-1コンセプトを採用し、2026年時点で内燃エンジン用パワートレインと電動パワートレインのコストを同等レベルにすることを目指している。
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今回はパワートレイン統括の平井俊弘専務執行役員、アライアンス e-POWER開発の渋谷彰弘ダイレクターが説明を行なった。
日産は初代リーフと、エンジンで発電しモーターで走行するシリーズ・ハイブリッド「e-POWER」を同時並行で開発を行ない、初代リーフは2010年に発売、e-POWERは2016年にノートに搭載して発売した。
ここで注目すべきは、他社のシリーズ・パラレル式のハイブリッドとは異なり、e-POWERはエンジンは発電用に特化した高効率エンジンとし、モーターで走行するため、EVとe-POWERはモーターを始めパワートレインが完全に共用できること、走行性能はEVとe-POWERでもモーター走行のアドバンテージを共用できるということだ。
その結果、加速性能、静粛性、シャシー制御などで大きなメリットを生み出し、さらに電動パワートレインとして共用化が可能で、電動パワートレインの量産効果によるコスト低減も実現することができるわけである。
実際、リーフとノート e-POWERは、電力制御部と駆動部は共通化されており、軽自動車EVのサクラは、アリアのリヤ用電動パワートレインを搭載している。
その一方で、日産は電動パワートレインにおいても世界をリードする制御技術を実現している。その代表例が「制振制御」と4輪の駆動輪制御「e-4ORCE」だ。
制振制御は、電動モーターの強力な発進トルクにより駆動系がねじれ振動を発生することを抑制する制御ロジックで、発進する瞬間の大トルクの出力の直後にトルクを一瞬だけダウンさせ、滑らかで力強い加速を実現している。
他社の場合はねじり振動を抑制するため、より長い時間トルクを抑えているのに対し、日産の制御は振動が少なくより強力な加速が得られるわけだ。この制御にはフィードフォワード制御に、フィードバック制御を組み合わせ、1万分の1秒というレベルでの制御速度を実現している。
この制振制御は、駆動系だけではなく車両全体の運動制御にも発展している。その集大成が「e-4ORCE」と呼ばれ、アリア4WDやエクストレイルe-POWERが採用している車両総合運動制御の技術だ。
アクセルペダルの踏み込みからの応答は内燃エンジンよりモーターのほうが圧倒的に優れている。内燃エンジンの応答性は500mm秒単位であるのに対し、モーターの応答性は数10mm秒なので、圧倒的に精緻な制御が生み出される。
この瞬時のレスポンスを生かして、前後の駆動力配分、左右方向ではブレーキ制御を組み合わせることで、停止時や加速時のピッチング抑制(乗り心地の向上)、コーナリング時の操縦性(意のままのハンドリング)が可能であり、雪上や氷上、砂地でもドライバーの意図通りの走りが実現している。
これは超高速のフィードフォワード、フィードバックの演算と、その制御に瞬時に応答するモーター駆動の特長が100%生かされており、他社の電動パワートレインにはないアドバンテージとなっているのだ。
そして、「Nissan Ambition 2030」を実現するためには、こうした電動パワートレインのさらなるコスト低減が大きなテーマになっている。従来の内燃エンジン車と同等のコストにすることで、電動パワートレインの普及を加速させることができるからだ。
そのために「X-in-1」、すなわちモーター、インバーター、ギヤという要素の組み合わせをモジュール化し、多くの車種に適合させることが可能になり、コストを低減することができるのだ。
EV用の3-in-1パワートレインe-POWER用の5-1n-1パワートレインEVはインバーター、モーター、ギヤ(減速機)を組み合わせて「3 in 1」とし、e-POWERでこれに加えて発電機、ギヤ(増速機)を組み合わせて「5 in 1」というモジュールで開発することにしている。これらのコア部品完全共有することと、モーターで使用するレアアースを削減することで、2019年比で30%コスト削減を行なうことにしている。
またこの次世代電動パワートレインは、パッケージング面でもメリットを生み出すために、モーター、インバーターの一体化とコンパクト化、さらにeアクスル全体でのさらなる剛性能向上も目指しており、電動パワートレインのパッケージングとして約10%のコンパクト化を図るとしている。
日産 関連記事
日産自動車 公式サイト
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