糧になったヨーロッパGTチームの実力
夏休み最後の週末となった8月23~25日、鈴鹿サーキットで開催された2019 第48回サマーエンデュランス『BHオークション SMBC 鈴鹿10時間耐久レース(以下鈴鹿10H)』では、Schnitzer/BMWがレコードタイムのスーパーラップでポールポジションを獲得。
決勝ではWRT/AudiとGruppeM/Mercedes 、Absolute/Porscheが表彰台を分け合うという、またも予定調和のような結果となりました。
予選後、2番手に留まったWRT/Audiのドライバーが「明日はもっと暑くなればいいね」とコメントしていたことや、スタート時のローリングでAudiだけが派手にウェービングしてタイヤを温めていたことが、どう影響したかは、私にとっては年に1度のスポット取材故のデータ不足で判断しかねるのですが、この日のレースでは、ライバルに比べてAudiが頭一つ速かったのは事実。表彰台を奪ったヨーロッパ勢、2位はGruppeM/Mercedes、そして3位はAbsolute/Porscheでした。
世界のハイレベルアマチュアに対抗する日本勢
今回の鈴鹿10Hは、SROモータースポーツグループが主管するインターコンチネンタルGTチャレンジ・パワード・バイ・ピレリのシリーズ第4戦。つまり、FIA-GT3マシンによる世界戦レベルのシリーズだということです。そもそもFIA-GT3はジェントルマンドライバーと呼ばれるハイアマチュアのためのレースとして考案されたも。自動車メーカーがワークスチームを送り込むことなどは持っての他、とされてきました。
しかしながら、インターコンチネンタルGTチャレンジのようなメジャーシリーズが立ち上がり、マニュファクチャラーの戦いが激化してくると、必然的にメーカー系のワークス格チームが出場することになってきたのです。例えば、今回の鈴鹿10Hでポールを奪ったSchnitzerや、決勝で表彰台を分け合ったWRT、GruppeM 、Absoluteなどが、ワークス“格”と目されているチームです。
NISSAN GT-R NISMO GT3で参戦したKCMGも、松田次生や千代勝正など日産/ニスモの契約ドライバーを送り込んでいることからもワークス“格”と判断してよいでしょう。
SUPER GTを戦っているGOODSMILE RACING & TeamUKYO(以下グッドスマイル)も、この鈴鹿10Hではチーム名をMercedes-AMG Team Goodsmileとしています。
このことからもMercedes-AMGのワークス“格”と判断してよいもの。もっとも、FIA-GT3車両に開発の段階から関わってきている海外のチームとは少し事情が違うのも事実ですが。
アマチュア活発化でレースはさらなる盛り上げ
グッドスマイルがMercedes-AMGのワークス“格”となったのは、SUPER GTでの活躍が要因。けれども彼らはスパ-フランコルシャン24時間にも出場し、ポテンシャルを高めてきました。結果として昨年開催された第1回大会の鈴鹿10Hでも5位入賞。当然、今回の第2回鈴鹿10Hでは、それ以上の結果が期待されていました。
公式予選ではレースウィークで初のドライコンディションとなったフリー走行で状態を確認したものの、思ったほどにはドライのセットが決まらず36台中18位。しかし、上位20台が出走してポールポジションを争うPole Shootoutでは、アタッカーを務める小林可夢偉と、車両メンテナンスを担当するRSファイン代表の河野高男エンジニアが相談し、賭けのセッティングにトライしたところ大正解。可夢偉はMercedes-AMG GT3勢でベストとなる6番手グリッドを手に入れることに成功したのです。
そしてMercedes-AMG Team Goodsmileの快進撃は決勝レースも続く。最初のスティントを担当した片岡龍也がスタートで5番手にアップ。その後も上位グループでステディなレースを組み立てて行ったのです。ただし、谷口信輝が担当した2番目のスティントではシケインで接触(貰い事故)があり、そこから先はペースアップならず。ファン投票では堂々の第1位だったにも関わらず、10位入賞でSUPER GT参戦チームとして最上位、アジア系チームとして2位という結果に終わりました。
ゴール直後に河野エンジニアにお話を伺ったところ「予選とスタートからの序盤は速さを見せることができました」としながらも「ただそこから先がね。クルマのリペアでセットが変わったのかもしれませんが、まだ原因は分かっていません」と不得要領な表情で事情を話してくれた。
そして「例え速く走れたとしてもスポット参戦しているだけでは優勝なんてできないと思います」とキッパリ。ポテンシャルがないのに「ポールが獲れていたら」とか「あそこで抜くことができていれば」などという『たら』と『れば』なら、それはもう夢物語でしかないのですが、「もしあの接触がなかったら」という“たら話”なら誰しもが興味深いはず。
そして「もしグッドスマイルが充分な体制でインターコンチネンタルにフル参戦できれば」という“れば話”なら、どんどん期待感が高まっていく。今回の鈴鹿では、そんな『たら』と『れば』が頭の中で渦巻いていました。
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