時代の流れとともに、姿を消していったクルマはたくさんある。「名車」といわれたクルマでも、排ガス規制をクリアできずに販売終了に追い込まれたケースは多い。また、なかには、その時代としてはデザインが奇抜すぎて受け入れられず、消滅していったクルマも。
こうしてこれまでに消滅していったクルマの中には、いまオークションなどで高額取引されているクルマもあり、「現代に復活してくれたら」と考えている方もいるのではないだろうか。今回は筆者が考える、「デザインはそのままに、中身を最新技術にして復活してほしいクルマ」を5つご紹介していこう。
ATとMT 中古の価格差1000万円? スポーツカーはやはりMTじゃないとダメなのか?
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、HONDA、NISSAN、MAZDA、MITSUBISHI、SUBARU
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ハイブリッド車となった、トヨタ「A80スープラ」
平成12年度自動車排ガス規制に対応できず、販売終了となったA80型スープラ。1993年にA70型からフルモデルチェンジとなって登場したA80型は、グラマラスなボディスタイルや巨大なリアウィングなど、国産車離れしたデザインで一躍人気となった。
アメリカでは、映画「ワイルドスピード」の主人公が、映画内で乗り回した(廃車寸前のA90を拾ってきてフルカスタマイズして復活させた)おかげで、カルト的な人気がある。
エンジンは、ベースグレード用の直6 NA(2JZ-GE)と、最上級モデル用の直6ツインターボエンジン(2JZ-GTE)の2基、トランスミッションは1994年までの前期型が5速MT、後期型が6速MT、もしくは4ATであった。
このデザインのまま、レクサスIS300hに搭載されている2.5L直4ガソリン+ハイブリッドシステム(エンジン178ps/221Nm、モーター143ps/300Nm)を搭載できたらどうだろうか。
IS300h といえば、WLTCモードで18.0km/Lという驚異的な燃費性能を誇る。ハイパワーでグイグイ走るのはもちろん楽しいが、涼しい顔でハイウェイを流すハイブリッドツーリングクーペ的な復活が、このモデルには似合う気がする。
1993年に登場したA80スープラ。流麗なカーブをもったグラマラスなボディスライルに合うよう、大きな弧を描いた大型スポイラーがオプションで用意されていた
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バッテリーEVとなった、ホンダ「S660」
かつて、軽スポーツカーとして名を馳せたホンダ「ビート」の実質的な後継車として、2015年4月より発売開始となったS660。ミッドシップエンジンリアドライブ(MR)レイアウトを採用し、エンジンを車両後方に配置したことで、フロントの軽量化とボンネット高を低くでき、スポーツカーらしいノーズの低いプロポーションを得た。
車両重量は830kg(CVTは850kg)、前軸荷重配分は45%、フロント軸重約373kgというありえないほどの超軽量なフロントセクションだ。ドライバー席も、後輪タイヤのすぐ手前に来るほど後ろ寄りで、後輪荷重の増加に寄与している。
エンジンは、低回転域の強いトルクと高いアクセルレスポンスを狙った直列3気筒ターボエンジン(64ps/104Nm)。トランスミッションは、6速マニュアルトランスミッションと、スポーツモードを備えた7速パドルシフト付CVTを設定していた。
このS660に、ホンダeに搭載したバッテリーEVのパワートレインをリアに搭載したらどうだろうか。
軽量ボディにトルクの強いモーターを組み合わせ、胸のすく加速フィールを得る。現時点、それを実行した自動車メーカーはなく、もし先陣を切るメーカーがあるとしたら、ホンダしか考えられない。全車EVを公言しているホンダならば、いずれこれに近いことをやってくるにちがいない、と筆者はひそかに期待している。
貴重な2シーターミッドシップ軽スポーツS660も販売終了。エンジンを後方に積むため、トランクには小さなバッグ程度しか積めないが、割り切った設計思想はすばらしい
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バッテリーEVもしくはe-POWER車となった、日産「パオ」
「Be-1」「フィガロ」「パオ」「エスカルゴ」――。日産のパイクカーシリーズの一台である「パオ」は、1987年の東京モーターショーに参考出品された後、1989年から発売開始した。
開閉する三角窓、外付けのドアヒンジ、上下2分割するリアクオーターウインドウ、ボディに入ったスリッド模様など、Be-1よりもさらにレトロ調を強めた秀逸なデザインで人気となった。いまでも、中古車が高額で取引されている。
このデザインのまま、e-POWER車、もしくはバッテリーEVとなったらどうだろうか。いろいろとクリアしなければならない課題はあるのは承知の上だが、現代技術で蘇った「パオe-POWER」は、ヒットする予感がする。
ちなみに、当時のパオは3ヶ月間の受注期間をもうけ、その間に予約された台数分を販売する戦略で、なんと5万台以上の受注を獲得し、最長1年半もの納期待ちが発生した。「限定販売」という言葉に弱い日本人の心をくすぐる販売戦略も、参考になるのではないだろうか。
インテリアにも注目ポイントが多数あり、ドアやインパネ、ダッシュボードなどは、ボディカラーと同一色で、シフトノブやステアリングホイール、メーター、スイッチノブなどは、アイボリーのクラシカルな雰囲気に統一されていた
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ハイブリッド車となった、マツダRX-7(FD)
ロータリーエンジンのピュアスポーツカーとして、ファンからの絶大な支持を得ていた「RX-7」。最終型となった3代目RX-7(FD3S型)が登場したのは、1991年のこと。2003年の終了まで11年間、マイナーチェンジを行いながら、販売が続けられてきた。
何といってもエクステリアデザインの美しさは、いまでも右に並ぶスポーツカーが見当たらないほどに秀逸だ。2代目のFCに対し、全幅とトレッドを広げたワイドアンドロ―スタイルとなり、地を這うようなルックスとなった。曲線を多用したボディラインも流麗。このエンジンフードの低さは、ロータリーエンジンだからこそ実現できたそうだ。
エンジンフードの低さを残すため、ぜひともこのFDに、新世代ロータリーエンジン+ハイブリッドシステムを搭載して復活させてほしい。
マツダは、「ロータリーエンジンを発電用とするREレンジエクステンダーを開発中」としていたが、最近はその情報も聞かなくなってしまった。もちろん、低いボンネット高さであっても、衝突時の歩行者保護要件は必達なので、そのブレークスルー技術もセットでの提案となるはずだが、マツダならばやってくれるはずだ。
2002年4月に登場した、RX-7最後の限定車である「スピリットR」。中古車オークションで、高額取引されている一台だ
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PHEVとなった、三菱「パジェロエボリューション」
2019年8月、37年もの歴史に幕を閉じた三菱パジェロ。クロカンSUV人気の火付け役として有名なクルマであり、パリダカで何度も優勝を成し遂げた、日本のモータースポーツのレジェンドカー的な存在だ。
なかでも印象深いのは、パリダカのホモロゲーション用として、1997~1999年に市販された「パジェロエボリューション」。
280ps級のエンジンと、3ドアのボディに、前後のフェンダーを張り出し、大型インテーク付のアルミボンネットフードやスキットプレート、大きなタイヤを装着した力強いスタイリングは、その戦闘力の高さを示しており、実際に1998年のパリダカで優勝するなど戦果を挙げている。
このパジェロエボリューションに、三菱自慢のPHEVシステムを搭載するのはどうだろうか。
というのも、三菱は、2021年5月11日に行われた決算発表会において、三菱のワークスチーム「ラリーアート」を復活させることを明言している。市販型PHEVの第一人者として世界的に知名度が高い「アウトランダーPHEV」だが、そのブランドを確固たるものに引き上げるには、モータースポーツシーンで活躍することが近道だ。
ぜひとも、パジェロエボリューションのようなスポーツモデルにPHEVを搭載し、世界的なレースでの活躍を見せてほしい。
1997年に登場したパジェロエボリューション 2ドアのショートボディに、280psを発揮する3.5L V6エンジン、大きなオーバーフェンダー、フロントバンパー下のプロテクターなど、迫力が半端ない
2021年5月11日に行われた三菱自動車の決算発表会で発表された資料の一部。ミツビシのピックアップトラック(おそらくトライオン)が砂漠を走る一枚の写真が登場した
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◆ ◆ ◆
こうしたクルマたちが登場した当時と今とでは、安全性能への厳しさが大きく異なる。そのため、そう簡単に実現することはできない。何段階も、技術のブレークスルーが必要になるだろうが、このように過去の資産を上手く使ってユーザーの心をつかみ、購買意欲につなげていくことは、もっとやってほしいと思う。
輸入車メーカーに負けることなく、国産メーカーが今後もさらに活躍してくれることを願っている。
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