純ガソリン車の新車が、あと10~15年で買えなくなる。それまでに、大排気量マルチシリンダー自然吸気に代表される、燃費は極悪だけど走れば極楽なクルマに乗っておきたい! 乗らずには死ねない! という思いを抱くクルマ好きは少なくない。
そこで、今しか乗れない、極悪燃費だけど、走れば極楽なクルマを、モータージャーナリストの清水草一氏が指南する!
文/清水草一
写真/ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】極楽・官能エンジンと極悪燃費車を写真でチェック!
■個人的に最高だったのはフェラーリF355
フェラーリF355は3495ccV型8気筒DOHC(5バルブ)を搭載。最高出力は380ps/8200rpm、最大トルクは36.7kgm/5800rpm
個人的な所有体験の中で最も典型的だったのは、フェラーリF355だ。3.5L、V8自然吸気で380馬力と、スペック的にはそれほど凄くはないが、なにせ超高回転・高出力型で、低中回転域のトルクはかなり薄い。
6速で淡々と巡行してもまるでヘナチョコで、完全な宝の持ち腐れ。自然、回したくなるのだが、回せばまさに天使の絶叫! 8500rpmのトップエンドに向けて、神の如きソプラノを奏でる。
そうやってブチ回して走っていると、燃費は3km/L程度になる。淡々と巡行すれば、最高で7.7km/Lをマークしたこともあるが(それとて悪いが……)、なにせエンジンが回せ回せとせがみ、回さないと存在意義のないエンジンにつき、絵に描いたような「走れば極楽・燃費極悪」カーだった。
現在所有するランボルギーニカウンタックアニバーサリーも、かなり燃費は極悪だが、F355のようには回せとせがまないので、いまのところ5km/Lくらい(たぶん)にとどまっている。「たぶん」というのは、120Lの燃料タンクを満タンにするのが難しくて、ちゃんと燃費を計れないから。
清水草一さんが所有するランボルギーニカウンタックアニバーサリー。60度V型12気筒DOHC4バルブ5167ccエンジンは455ps/51.0kgmを発生。車重は1680kg。最高速度は295km/h
■現行モデルのフェラーリやランボルギーニのアメリカEPA燃費を見る
812スーパーファストは6496ccV型12気筒DOHCを搭載。最高出力は800ps/8500rpm、最大トルクは73.3kgm/7000rpm、EPA燃費は5.7km/L
SF90ストラダーレは3990ccV型8気筒DOHCターボを搭載。最高出力は780ps/7500rpm(エンジン)、最大トルクは81.6kgm/6000rpm(エンジン)、モーター3基220ps、EPA燃費は6.5km/L
では、フェラーリやランボルギーニの現行モデルの燃費はどうか。日本ではカタログ燃費が公開されていないので、アメリカのEPA燃費データ(2021年モデル版)を閲覧した。EPA燃費はWLTC燃費より1割ほど厳しく、実燃費にかなり近い。
■フェラーリのEPA燃費
812スーパーファスト 5.7km/L
SF90ストラダーレ 6.5km/L
F8トリブート 7.1km/L
※マイル・パー・ガロンをkm/Lに換算
6.5L、V12自然吸気を積む812スーパーファストが、最も燃費が悪い。このエンジンも走れば極楽・燃費極悪の典型だ。
しかし800馬力のパワーはあまりにも凄まじすぎ、トラクションに劣るFRレイアウトもあって、公道では一瞬でも全開にするのが難しい。高速道路上で80km/hから全開にしたところ、その場でケツが流れてスピンしかけた。全開にできない分、逆に実燃費はF355よりいいかもしれない。
SF90ストラダーレはハイブリッドカーだ。ただし合計最高出力は1000馬力。V8ターボのF8トリブートより燃費が悪いのは皮肉というか、ある意味アッパレというか。
では、ランボルギーニはどうか。
■ランボルギーニのEPA燃費
アヴェンタドールS 4.2km/L
ウラカンペルフォルマンテ 5.5km/L
ウルス 6.4km/L
アヴェンタドールSは6498ccV型12気筒DOHCを搭載。最高出力は740ps/8400rpm、最大トルクは70.4kgm/5500rpm、EPA燃費は4.2km/L
ウラカンペルフォルマンテは5204ccV型10気筒DOHCを搭載。最高出力は640ps/8000rpm、最大トルクは61.2kgm/6500rpm、EPA燃費は5.5km/L
アヴェンタドールSの極悪燃費ぶりはさすがだ。ちなみに限定版のSVJのほうは4.3km/Lと、なぜかほんのわずかに燃費がいい。謎。まあどっちでもいいレベルですが……。
ランボルギーニのV12モデルも、アヴェンタドールを最後にハイブリッド化される。それを思うとありがたくて泣けてくる数字です。
ついでにポルシェはどうか。
911ターボSカブリオレは3745cc水平対向6気筒DOHCターボを搭載。最高出力は650ps/6750rpm、最大トルクは81.6kgm/2500-4000rpm、EPA燃費は7.7km/L
カイエンターボクーペは3996ccV型8気筒DOHCターボを搭載。最高出力は550ps/5750-6000rpm、最大トルクは78.5kgm/1960-4500rpm、EPA燃費は7.8km/L
■ポルシェのEPA燃費
911ターボSカブリオレ 7.7km/L
カイエンターボクーペ 7.8km/L
718ケイマン GTS 4.0 8.9km/L
911カレラS 9.7km/L
ぐっと常識的で良識ある数字だ。ポルシェは以前からそれほど燃費は極悪ではなく、むしろ巡行するとかなりいい数字が出て感心させられる。カイエンターボもウルスに比べるとかなりイイ。
個人的見解では、このなか(すべて現行モデル)で「走って極楽・燃費極悪」のチャンピオンは、ランボルギーニウラカンペルフォルマンテだ。
なにせ古き良き高回転高出力型・大排気量自然吸気エンジンの美点のカタマリ。サウンドも最高だ。4WDで直進性も抜群なので、812スーパーファストのようにアクセル全開でスピンしちゃうこともなく、640馬力のガソリンガブ飲みの美味を味わうことができる。
対するアヴェンタドールのV12は、あまり回りたがらないタイプなので、エンジンの美味度はぐっと落ちる。アヴェンタはデザインやドアの開き方をはじめ、存在そのものを楽しむクルマで、それはそれで極楽なのだが。
フェラーリV8は488GTB以降ターボ化され、美味度がかなり落ちました。もはやそのエンジンフィールは自動車界唯一絶対のものではなく、神々の一員に過ぎないと考えている。458イタリアまでのNA時代は唯一絶対神だったが……。
私は458イタリアを5年間所有していたが、燃費は悪かった。100km/hくらいの高速巡行でも6km/Lちょいしかいかない。でも、適度にブチ回しても5km/Lくらいまでしか落ちない。回してナンボのフェラーリエンジンここにあり。回さなくてもエコにはならず。
ポルシェ911も、ほとんどのモデルがターボ化されてしまった。かといってNAの頂点・GT3系も、あまりにも速すぎて踏めない。991系前期型のカレラやカレラS(自然吸気)まで戻るのがベストか。中古車だし燃費も極悪ではないですが。
■EPA燃費の極悪ワースト10!
では、ブランドの縛りを外して、EPA燃費の極悪ワースト10を見てみよう。
ブガッティシロンは7993ccW型16気筒DOHC4ターボを搭載。最高出力は1500ps/6700rpm、最大トルクは163.2kgm/2000-6000rpm、EPA燃費は3.9km/L
■EPA燃費ワーストランキング
1位 ブガッティシロン 3.9km/L
2位 ランボルギーニアヴェンタドールS 4.2km/L
3位 ロールスロイスゴースト 5.1km/L
4位 ダッジチャージャーSRT 5.3km/L
5位 シボレーカマロZL1 5.3km/L
6位 ダッジラム1500TRX4×4 5.4km/L
7位 ランボルギーニウラカンペルフォルマンテ 5.5km/L
8位 アウディRSQ8 5.6km/L
9位 ベントレーコンチネンタルGTコンバーチブル W12 5.6km/L
10位 フェラーリ812スーパーファスト 5.7km/L
ブガッティシロンには乗ったことないが、公道では手も足も出ず、極楽も見えないでしょう。実物すら見たことないし。ロールスロイスは、なぜかファントムが一覧になく、ゴーストが3位に入っております。確かにとろけるようなV12で、乗り心地も異次元だが、お値段も異次元なので、最後にひと花咲かせようにも……。
一方、ビッグアメリカンV8のダッジやシボレーは、ターボではなくスーパーチャージャーで、自然吸気に近いフィーリングがうれしいが、こちらもどうせなら自然吸気がいい。
日本でもディーラーで買えるカマロSSは、OHVの自然吸気、485馬力。いかにもアメリカンマッスルなおおらかなフィーリングがすばらしく、パワーもギリギリ使い切れて、価格は680万円! カマロSSの実燃費は6km/Lくらい。非常にコスパの高い、走って極楽・燃費極悪カーと言える。
もう1台付け加えると、ターボ代表で、アストンマーティンヴァンテージV8を推薦したい。AMGの4L、V8ツインターボをアストンが味付けしており、ターボ車として究極の色気に満ちている。
EPA燃費は9.6km/Lとかなり優秀なのが玉にキズだが、実際にはそんなに走りません。6km/Lくらいなので安心してください。
ということで、走って極楽・燃費極悪の輸入車部門は、
1位 ランボルギーニウラカンペルフォルマンテ
2位 シボレーカマロSS
3位 アストンマーティンヴァンテージV8
とさせていただきます!
ウラカンペルフォルマンテは5204cc、V型10気筒DOHCを搭載。最高出力は640ps/8000rpm、最大トルクは61.2kgm/6500rpm、EPA燃費は5.5km/L
シボレーカマロSSは6153ccV型8気筒OHVを搭載。最高出力は453ps/5700rpm、最大トルクは62.9kgm/4600rpm、EPA燃費は6km/L
アストンマーティンヴァンテージV8は4000ccV型8気筒DOHCターボを搭載。最高出力は510ps/6000rpm、最大トルクは69.9kgm/2000-5000rpm、EPA燃費は9.6km/L
■国産車部門NO.1は?
レクサスLX570は5662ccV型8気筒DOHCを搭載。最高出力は377ps/5600rpm、最大トルクは54.5kgm/3200rpm、EPA燃費は6.3km/L
EPA燃費で日本車のワーストを探すと、トップに来るのはレクサスLX570の6.3km/L。WLTCモードだと6.6km/Lで、いずれにせよ日本車の燃費極悪チャンプだ。
しかしこの5.7L、V8エンジン、正直なところただデカいだけで、まったく気持ちいいとは感じない。「重くて頑丈な物体を、鷹揚にゆるゆる動かす快感」にとどまる。
では、国産車で走って極楽・燃費極悪なのはどれか。ベスト3を挙げてみよう(私見です)。ここから燃費の数値はWLTCモードになる。
■1位 レクサスLCコンバーチブル 8.0km/L
レクサスLCコンバーチブルは4968ccV型8気筒DOHCを搭載。最高出力は477ps/7100rpm、最大トルクは55.1kgm/4800rpm、WLTC燃費は8.0km/L
5L、V8自然吸気はまさに絶品! とろけるように回りつつ、サウンドジェネレーターによって吸気音が室内に響きわたって、コンサートホールにいるようだ。車両重量が重いぶん、加速が鋭すぎず、ゆったりとその回転フィールを楽しむことができる。
■2位 GT-R 7.8km/L
GT-Rは3799ccV型6気筒DOHCターボを搭載。最高出力は570ps/6800rpm、最大トルクは65.0kgm/3300-5800rpm、WLTC燃費は7.8km/L
2020モデルからタービンが改良され、低い回転域からすばらしいアクセルレスポンスが実現した。もちろん高回転域でもレスポンス抜群。とにかく猛烈に気持ちイイ! 2020モデルのGT-Rは別物! もうただ速いだけの戦車じゃない! 快楽製造マシンに変身しました!
■3位 スカイライン400R 10.0km/L
スカイライン400Rは2997ccV型6気筒DOHCターボを搭載。最高出力は405ps/6400rpm、最大トルクは48.4kgm/1600-5200rpm、WLTC燃費は10.0km/L
低い回転域から太いトルクを生み出しつつ、高回転域でドーンとパワーが盛り上がるこのフィールは、かつてのドッカンターボを彷彿とさせて涙が出る。
やっぱりターボエンジンが多少ドッカンがないと! コイツには古き良き味わいが生きてるぜ! 405馬力の最高出力も、十分すぎるほどパワフルでちょうどいい。
そのほか、決して燃費極悪ではないけれど、「ハイブリッドなどに比べたらぐんと悪いけど、走れば極楽」という意味で、特にこの2台を推奨させてください。
■マツダロードスターS 16.8km/L
マツダロードスターSは1496cc直列4気筒DOHCを搭載。最高出力は132ps/7000rpm、最大トルクは15.5kgm/4500rpm、WLTC燃費は16.8km/L
ロードスターはデザインからしてまさに国宝! 実燃費でもヘタすりゃ20km/L近く伸びる。立派なエコカーだよ! これを禁止するって信じられん。
■スイフトスポーツ 17.6km/L
スイフトスポーツは1371cc直列4気筒DOHCターボを搭載。最高出力は140ps/5500rpm、最大トルクは23.4kgm/2500-3500rpm、WLTC燃費は17.6km/L
実用性も十分あって、1.4Lターボは実に痛快! とにかく日常域がトルクフルで、普通に走ってるだけで楽しい。6ATでも全然オッケー。スイフトスポーツを国民車に! と本気で思ってます。
このクルマもあと10~15年で新車販売禁止するの!? ありえねぇ……。もう反乱でも起こそうかナ!
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みんなのコメント
街乗り3~4㌔/Lで高速6.5~7㌔/L程度。
その内「走るな!!」って言われるかも…。
でも、ユーノス・コスモよりマシ。
個人的にはリッター5以下にならないぐらいなら日常でも楽しく乗ってます。
燃費、エコ、燃費、エコ、燃費、エコ、、、、そう考える人は徒歩か自転車若しくは公共交通機関をご利用ください。そして環境に優しくしてあげてください。
きっと太陽や地球はそんなもん気にもしていません。