トヨタ カムリが堅調な販売を記録し続けている。
日本自動車販売協会連合会のデータによると、2021年1~3月平均で月販1000台超。常にベスト40~50位圏内にいる。カムリは、クラウンと並び今やDセグメントセダン(アッパーミドルセダン)として日本国内にも根を生やしている。
帝王トヨタ一強!! シェア5割超えの盤石体制が国内市場にもたらす功と罪
日本国内“にも”という理由、カムリは北米での超ヒットモデルだからだ。筆者は1990年初頭から2000年までインディ500参戦のため米国に滞在する日数が多かった。
ほとんど1か月超の米国滞在中は移動の足としてクルマが必要でレンタカーを借りていたが、数あるレンタカー会社にかなりの台数割合でカムリがラインナップされていた。
GM、フォード、クライスラーにも同じサイズの競合セダンが存在するが、カムリの人気は絶大。筆者もよくカムリを指定したものだが、予約満杯で仕方なく米国車になることもあり、そんなとき改めてカムリの優位性を再確認させられる。とにかく運転しやすく燃費が良かったのだ。
そしてやはり機械的トラブルが少ない、というのがレンタカー会社の窓口スタッフの意見だった。あれから20年超、モデルチェンジを繰り返しながら現在でもカムリは北米でのベストセラーセダンに君臨している。
文/松田秀士 写真/TOYOTA、編集部
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北米重視で大型化! カムリの歩みと質実剛健な作り
もともとカムリはFRのセダンだった。実は筆者、この初代カムリのオーナーだったこともある。中古車だったが1.6Lエンジンに5速MTというシンプルなモデル。
5ナンバーのコンパクトセダンだったが、当時としては5人乗車できる室内スペースを持ち、しかも軽快でスポーツ性も高かった。ヘルメットやレーシングスーツ等を積み込み、日本中のサーキットを巡った。今となっては良い思い出なのである。
ただし、この初代は1980~1982年という短命車だった。ちょうど日本経済がバブルに向かう成長期という時代背景もあったのだが、このあと年を追うごとに大型化し米国など輸出に力を入れていくようになる。
さらに2代目からは全てFF(=前輪駆動)化していったのだ。北米仕様と日本国内仕様とを異なるサイズとした時期もあったが、北米でのヒットを受けて開発の方向性の北米化が加速していくこととなる。つまり大型化していったのだ。
道路や駐車場の環境が日本とは大きく異なる北米。米国ではまったく大きさを感じさせないが、日本ではそのサイズがかなりの足かせとなった。
7代目カムリ(販売期間:2001~2006年/全長4815×全幅 1795×全高1500mm)
2000年以降、日本国内ではミニバン、SUV人気が加速しカムリの存在感は次第に市場から薄れていった。それでもこの時期(6代目~7代目)に筆者は時々カムリの広報車を借り出してレースに行ったのだが、そのハンドリングと乗り心地の良さに感動したことを思い出す。サスペンションはいわゆる乗り心地を重視したセダンのソフトなもの。
しかし高速道路での自立直進性が高く、しっかりとステアリングがニュートラル位置で座っている。
リアサスペンションのみの減衰力をコクピットのスイッチ操作で変更できる珍しいタイプの足だったが、これが荷物や後席乗員人数に合わせて硬くすることでハンドリングが乱れない。カムリってスゴイ! とあの時見直したものだ。
なぜ今も堅調? これまでの印象を払拭する現行型の進化
現行型(10代目)カムリ(販売期間:2017年~/全長4910×全幅1840×全高1445mm)
そして今、2017年の現行モデル(10代目)登場以来、日本国内でもカムリは堅調に売れる人気セダンだ。
その一番の要因はやはり2.5Lハイブリッドの進化だろう。日本国内向けはハイブリッド専用モデル。主にプリウスを代表とするトヨタのハイブリッド。燃費は良いがその加速性能にはストレスがある。カムリハイブリッドもその延長線上で良いものか? おそらく開発陣にはこのような焦りがあったに違いない。
しかも10代目のエクステリアデザインは、若返りそれまでとは大きく変わるスポーティーなもの。パワートレインの進化も必須だった。
搭載されたのは新開発の直列4気筒2.5Lエンジン。これに「THS II」のハイブリッドシステムを組み合わせているのだが、加速性能を重視したものに改良。走らせてみるとこのマッチングの良さに感動する。低速域も中速域もこれまでのトヨタのハイブリッドイメージを覆す加速感があったのだ。
もちろん、それまでにもレクサス GSなどに搭載された3.5L V6エンジン用のハイブリッドはあったが、どちらかというと燃費よりもパワー重視のもの。しかしカムリ搭載の新ハイブリッドは、加速も燃費も高い実力を示している。
筆者は何度も現行モデルのカムリ広報車を借り出しているのだが、加速性能もさることながらその燃費に驚かされる。特にエコドライブを心掛けてはいないのに17km/Lからそれ以上の燃費を記録する。
高い熱効率・高出力を両立した直列4気筒2.5Lエンジンとハイブリットシステムが搭載された。燃費は、WLTCモード:27.1km/L ※グレードによって変わる
進化の根幹はこの当時(2017年)の新開発2.5L直4エンジンだろう。このエンジン、クラス最高となる熱効率41%を達成しているのだ。つまり余裕のパワーフィールと高燃費という二律背反する性能を手に入れたカムリのハイブリッドシステム。実はエンジンの進化が大きくモノを言っているのである。
世の中は電動化に目を向けがちだ。しかし発電を含めた日本国内の電源をクリーンなエネルギーにしなくてはカーボンニュートラルなど遠い未来。そこで当面はハイブリッドのモーターを含めたシステム効率が重要。
主に電気系に注目しがちだが、やはり根幹をなすエンジンの性能がモノを言うということがカムリに乗れば理解できる。ハイブリッドにとって、まだまだ寧年機関エンジンの開発は必須なのである。ではエンジンを含めたハイブリッドだけがスゴイのだろうか?
現代セダンの「要求」をほぼ満足させるクォリティ
クラウンなどのFRベースモデルよりも室内が広く、シートには本革を採用し、上質感のあるインテリアになっている。さらに高速走行時の室内静粛性が高く、揺れも少ない
いえいえ、ボディもスゴイです。FFベースなのでクラウンなどFRベースモデルよりも室内が広い。それゆえインテリア設計の自由度も高く、ハイブリッド用バッテリーを後席背もたれ後ろから床下に移したことで大きなトランク容量とトランクスルー構造にした。
これにより筆者の大好きなスキーにも板を室内に積んで行ける。スキー板、キャリアでルーフ上に固定して走る姿はカッコいいが、エッジがすぐに錆びてしまうのだ。
サスペンションは、新開発のフロントストラット式にリアはダブルウィッシュボーン式になった。適度に締まりの効いたスポーティな足だが、後席の乗り心地もこのサスペンション型式により大きく進化している。
ラゲッジスペース内のレバーを引いて、リアシートを倒せば、大きな荷物、スキー板などの長尺物が積める
またハンドリングもこのサスペンション型式のうえにステアリング軸周りの剛性アップが図られた。そして何よりも高速走行での室内静粛性が高く、振動感がない。
これは4本あるエンジンのマウントをすべて液体封入式のモノを採用していることも大きく寄与している。電気の出し入れ効率に優れることからも、ハイブリッドバッテリーはリチウムイオン式のモノを採用している。
カムリのプラットフォームを含めたトータルメカニズムはその後初のミラーレス化を実現したレクサス ESにもキャリーオーバーされている。
スポーツ性と燃費。走りと室内ユーティリティー。今の時代のセダンに要求されるすべてをほぼ満足させるクォリティ。これがカムリが堅調に販売を延ばす理由だろう。
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みんなのコメント
大きいし、それなりに押しも効くし、価格が上がっていった事以外は良い方向だと思う