以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は、「トヨタ カローラ(初代)」だ。
トヨタ カローラ(KE10型):昭和41年(1966年)11月発売
1966年(昭和41年)10月の東京モーターショー直前に初代カローラは発表された。ひと足先に発売された初代サニーに対抗し「プラス100ccの余裕」をコピーに売り出したのは有名な話だ。ボディスタイルは格上となるコロナに似せて高級感を演出し、ルーフからトランクリッドにかけての特徴的な曲線は、セミファストバックとでも呼ばれるような斬新さだった。これはアメリカ車の影響で、車室を広くしつつ外観を崩さないように考えられた当時流行のデザインでもあった。
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エンジンは、K型と名付けられた1.1Lの直4 OHVだ。最高出力は60ps/最大トルクは8.5kgmを発生。動弁機構はOHVだが、カムシャフトの位置が高いハイポジションカムとし、駆動されるプッシュロッドを短くして高回転におけるバルブの追従性を良くした。クランクシャフトは5ベアリング支持となっていて、3ベアリングだったライバルのサニーに差を付ける部分だったのかもしれない。燃焼過程でのクランクシャフト荷重への負担を低下させ高速耐久性を上げたのは事実だ。シリンダーブロック全体が右側に20度傾斜しているのも特徴的で、これによって重心が低く抑えられるというメリットも生まれた。
吸気系では、エアクリーナーの容量を大きくし、2バレルのダウンドラフト型ストロンバーグタイプのキャブレターを採用している。冷却ファンは2枚羽とし、十分な冷却性能に加えて静粛性も高める設計となっている。このように当時の大衆車のエンジンとしてはかなり力の入ったものとなった。
トランスミッションはフルシンクロの4速MTだ。ギア比はクロスレシオタイプとし、フロアから伸びるチェンジレバーによりH型のパターンでコントロールされる。
ボディ構造は、ユニットコンストラクションと呼ばれる構造を採用した。これはボディの強度を受け持っているのはフロアパネルに一体溶接されているアンダーフレームで、このアンダーフレームがサイドシル下の2本のメインサイドメンバーと、これをつなぐ2本のクロスメンバー、それにエンジンおよびフロントアクスルなどが取り付けられるフロントサブフレーム、リアアクスルなどが取り付けられるリアサブフレームなどによって構成されている。このボディ構造をトヨタではユニフレームと呼んでいる。
サスペンションは、フロントがストラット式。スプリングはリーフとコイルを併用し、これにショックアブソーバーが組み合わされる。リーフスプリングは、左右のアームを結んでおり、スプリングとしての役割の他にスタビライザーとしても機能する設計だった。リアサスペンションはリーフリジッドだが、メインリーフスプリングの上に、もうひとつリーフスプリングがあり、これを非対称に重ねてワインドアップを防止する構造となっている。最小回転半径は4.55mと取り回しの良いものだった。
デラックスの車重は710kgで、サニー1000、スバル1000に比較するとやや重い。半面、最高出力が高いためにパワーウェイトレシオは11.8と小さい。カタログデータで0→400m加速は19.6秒、最高速度は140km/hという性能は当時の1500cクラスを凌ぐものだった。
冒頭のキャッチコピーの秀逸さもあり、カローラ1100はライバルと目されたサニー1000を販売台数で凌ぎ、日本を代表する大衆車の地位を得る。どちらかといえば性能的な差というよりはイメージ戦略の成功といえるだろう。そしてカローラが普及していくことで日本のモータリゼーションが進んだ。以後、大衆車の代名詞ともいえるクルマとして支持されていく。
トヨタ カローラ1100 デラックス 主要諸元
●全長×全幅×全高:3845×1485×1380mm
●ホイールベース:2285mm
●重量:710kg
●エンジン型式・種類:K型・直4 OHV
●排気量:1077cc
●最高出力:60ps/6000rpm
●最大トルク:8.5kgm/3800rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:6.00-12 4P
●価格:49万5000円
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