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愛車の履歴書──Vol52. 西川貴教さん(後編)

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愛車の履歴書──Vol52. 西川貴教さん(後編)

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第52回。後編では、アーティストの西川貴教さんが理想のクルマなどについてたっぷり語った。

大いに満喫してきた“クルマ趣味”

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前編では、西川貴教さんが運転免許を取得するところまでを紹介した。

ただし、現在はクルマの運転をしていない。その理由は、「自分ひとりだけの身体ではなくなってしまったから」という。

「アーティストやタレントとしての活動に加えて、地元の滋賀で『イナズマロック フェス』という音楽フェスティバルをオーガナイズするなど、いろいろな役割を担うようになりました。仮に僕が事故を起こしたり、事故に巻き込まれたりすると多くの人に迷惑をかけることになります。だから背負った荷物が少し軽くなるまで、大好きなクルマとの運転は封印することにしたんです」

現在こそクルマを封印している西川さんであるけれど、“クルマ趣味”は大いに満喫してきた。

「免許を取って初めて乗ったクルマはメルセデス・ベンツで、モデル名を思い出せないくらい、かなりの数のメルセデスに乗りました。一番記憶に残っているうちの1台がカールソンのCLK CM60RSですね。向こうのカレンダーの表紙になっていた個体をそのまま船便で輸入してもらったんですけれど、スリックタイヤで、雨の日に乗ったら高速の合流でお尻を振って大変でした(笑)。暴れ馬ですね」

カールソンとは、ロルフ・ハルトゲとアンドレアス・ハルトゲの兄弟が設立したドイツのチューニングメーカーだ。この名前を聞いてピンときた方も多いだろうが、ふたりの兄であるヘルベルト・ハルトゲが、やはりチューニングメーカーのハルトゲの創設者として知られる。CLK CM60RSは、メルセデス・ベンツのCLKに排気量6.0リッターのV型8気筒NA(自然吸気)エンジンを搭載したモンスターで、カーボンをふんだんに使ったインテリアも個性的だった。

「2002年にポルシェが『カイエン』を出したときも、割と早いタイミングでターボモデルを購入しました。ならし運転で、滋賀の実家まで往復したことを覚えています。運転は好きなので、それくらいの距離は、まったく苦にならないんですよ」

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「僕は家具や建築も好きですが、日本には隈研吾さんだけでなく、クオリティの高い作品がたくさんあります。“日本のいいもの探し”が、自分のなかでちょっとしたブームになっています」

そこでGQ JAPAN編集部は、日本の高級車の推移を西川さんに見てもらうため、1988年に発表された6代目トヨタ「マークII」と、最新のトヨタ「クラウン(スポーツ)」を用意した。

バブル期に発表されたマークIIは当時、毎月2万台が販売された人気車種。先代にあたる5代目マークIIとともに、“ハイソカーブーム”を牽引する存在だった。

2台をまじまじと見比べながら、西川さんはこんな感想を口にする。

「カイエンに乗ったときに感じましたが、車高の高いクルマは運転がしやすいんですね。だから高級車と呼ばれるモデルのスタイルが、セダンのマークIIからクラウン(スポーツ)に移り変わることはよく理解できます。もうひとつ、クラウンのハイブリッドシステムにはとても興味があります。欧米でもEV一辺倒の風潮が見直されつつありますよね。日本が磨いてきた、エンジンとモーターを連携させる技術がもう一度脚光を浴びるような気がしています。だってすごいじゃないですか。エンジンが駆動をしたり発電機の役割を果たしたり、世界に誇れる技術だと思います」

家具や建築について勉強をしているという西川さんは、マークIIのインテリアを興味深そうにチェックする。

「いまの若い世代には、この年代の日本車が人気だと聞きました。なんとなく、わかるような気がしますね。最近は機能と効率ばかり追求して、どれも似たようなデザインになっています。でもこの時代のクルマは、車種ごとに個性がある。日本のいい家具を掘り起こそうとか、滋賀の農業を盛り上げて食料自給率を高める取り組みをしようとか、そういうことを考えているので、日本の高級車を振り返るのは興味深いし、いい経験になりました」

そしていつの日か、背負った荷物が軽くなり、ひとりのクルマ好きに戻った暁に、西川貴教さんはどんなクルマを選ぶのだろうか。

「光岡自動車の『M55 CONCEPT』はちょっと興味がありますね。あとはシンガー(ヴィークル・デザイン)がやっていることとか、おもしろいと思います」

なるほど、あえてクルマを封印しているけれど、最新情報はしっかりとチェックしているのだ。

封印が解かれたときに、西川貴教さんがどんなクルマ生活を送るのか。楽しみに待ちたい。

西川貴教(にしかわたかのり)1970年9月19日生まれ。滋賀県出身。1996年5月、ソロプロジェクト”T.M.Revolution”として「独裁-monopolize-」でデビュー。2018年からは西川貴教名義での音楽活動を本格的に開始する。ほかにも俳優、声優、番組MCなど多岐にわたり活躍中。2008年には、滋賀県から「滋賀ふるさと観光大使」に任命。2009年より大型野外音楽イベント「イナズマロック フェス」を主催。令和二(2020)年度滋賀県文化功労賞受賞。

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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・浅沼薫(Deep-End) 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

1件
  • 藍流頓瀬奈
    滋賀と言えばダイハツの工場がある。
    せめてCM出るとかないものか?消臭力も忘れずに
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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