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1970年代の当たり前 モーリス・マリーナ ヒルマン・ハンター ヴォグゾール・キャバリエ 後編

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1970年代の当たり前 モーリス・マリーナ ヒルマン・ハンター ヴォグゾール・キャバリエ 後編

現代の高速道路にも問題なく対応できる

当初、初代キャバリエが生産されたのは、オペルのベルギー・アントワープ工場。ヴォグゾールとしては、初めての輸入車だった。製造品質は高く、1977年にロンドンの北に位置するルートンで生産が始まるまでに、同社のベストセラーへ躍り出ていた。

【画像】1970年代の当たり前 マリーナ ハンター キャバリエ 1960年代の英国車 最新ヴォグゾールも 全146枚

営業部門の中間管理職などに、キャバリエ 1900GLは強く響いた。見た目には高級感が漂い、ダッシュボードには時計が埋め込まれ、バックミラーには防眩機能が備わっていた。だが、メーター類や送風口に至るまで、インテリアはオペルのままだった。

リチャード・ワッツ氏のシグナル・イエローのキャバリエは、1976年式。前輪駆動へ切り替わった2代目へは、1981年にモデルチェンジしている。

彼は2006年に購入し、忠実度と実用性を重視したレストアを施したという。見事、ヴォグゾールのパンフレットを飾れそうな見た目に仕上がっている。

「キャバリエは、当時のライバルより進んでいました。1.9Lエンジンは柔軟で扱いやすいです。駐車時はパワステが欲しくなりますが、スピードが乗ってくれば軽くなります」。とワッツが話す。

「1970年代のクルマとして、ロードホールディング性は素晴らしいと思います。ブレーキは、現代的なクルマに引けを取りません。エアコンとパワーウインドウ、集中ドアロックはありませんが、それ以外は47年前だとは思えませんよ」

「現代の高速道路にも、問題なく対応できます。自分が追い越し車線を爽快に走っていると、隣のドライバーに驚かれることもありますね」

アンダーステアに悩まされたマリーナ

少しくすんだイエロー・グリーンのサルーンは、モーリス・マリーナ 1.8スーパー。1968年に再統合され生まれた、親会社のブリティッシュ・レイランド(BL)が作ったジョークだと、英国では揶揄されることもある。愛情を込めて。

ストライキや停電などが頻発した、1970年代の混乱する英国経済を象徴する量産車だとみなされることも多いが、実際は少し違う。モーリス・マイナーとオックスフォード・シリーズVIの後継車として、プロジェクト名「ADO28」の開発は1968年に始まった。

オースチン・ブランドには前輪駆動モデルをラインナップし、モーリスでは後輪駆動モデルを提供するという方針を、BLは立案。前輪駆動のオースチン・アレグロと同じエンジンを搭載したマリーナは、1971年4月27日に発表された。

トリムグレードは、デラックスとスーパー、TCという3段階を設定。エンジンは1.3LのAシリーズか、1.8LのBシリーズという、定評のある選択肢が用意された。

サスペンションは、当初マクファーソンストラット式が計画されていたものの、コスト削減を理由にレバーアーム式ダンパーへ変更されている。「理想的な決定ではなかったですよね」。と、現オーナーのジョン・キングスフォード氏は苦笑いする。

「開発期限と予算の都合で、妥協は避けられなかったのでしょう」。と理解を示すが、初期のマリーナ 1.8はアンダーステアに悩まされたことも事実だ。

営業マンのサルーンとして充分な可能性

1971年10月のデイリー・テレグラフ紙は、マリーナ 1.8TCのオーナーが、改良のためにディーラーへクルマを持ち込む必要があることを報じた。1971年7月までにラインオフした約1600台が、BL側の費用負担でアップデートを受けている。

多少のイメージダウンは伴ったものの、1973年までに販売は回復。その頃の英国では最も売れていたフォード・コルチナ Mk3に次ぐ勢いで、モーリス・マリーナへ支持が集まった。

一方、マスメディアの反応は良くなかった。1975年のCAR誌はマリーナを「酷いクルマ」とまで評している。BLの望ましいとはいえない労使関係と、充分とはいえない品質管理が影を落とし、会社からの貸与車両としては主力になりにくかった。

それでも、営業マンのサルーンとしては充分な可能性を秘めていた。1975年にフェイスリフトを受け、生産は1980年まで続いた。その後、イタリアのイタルデザインの力を借り、スタイリングを一新したモーリス・イタルが登場し、1984年まで存続している。

1971年の発売から半世紀以上。ENJ 91Kのナンバーで登録されたマリーナ 1.8スーパーは、ライムフラワー・グリーンと呼ばれるボディカラーが強い印象を残す。

スタイリングは、フォードから移籍したロイ・ヘインズ氏が手掛けた。開発期間が非常に短かったことを表すかのように、プロポーションは整っているが、モダンさは薄い。

長年ジョークのネタになってきた

「モーリス・マリーナは、洗練性や操縦性が優れているとはいえないでしょうね。それでも、1.8LのBシリーズ・エンジンは、トルクが太くてサウンドも良いと思います」。とオーナーのキングスフォードが冷静に話す。

「ボディは軽く、アンダーパワーに感じることはありません。カーブの連続する道を飛ばすことが前提ではないと受け入れれば、アンダーステアもそこまで問題にはならないと思いますよ」

「50年前のクルマですが、長距離ドライブは驚くほど快適です。シートは座り心地が良く、ヒーターも効きます。回頭性は悪くないと思います。ベーシックな作りで、メカニズムも頑丈に感じますね」

今回の3台で、どれが最も長距離出張に適したサルーンだと考えるかは、ブランドに対する思い入れで大きく変わるはず。特にモーリスは、起源を1897年にまで遡る古参。それぞれのオーナーは、自分のクルマが1番だと答えるだろう。

マリーナの根本的な問題といえたのは、その後のオースチン・マキシと同じく、開発を急ぎすぎたことに起因していた。ライムフラワー・グリーンの1.8スーパーは、裏生地の付いたビニール内装など、細かい部分まで当時の魅力を感じさせてくれる。

「長年、マリーナは様々な議論を呼び、ジョークのネタになってきました。ピアノで潰されるなどね。でも、そのおかげで改めて関心が高まったとも考えています」。と、キングスフォードが笑う。

窮地から救った輸入車的な魅力

比較すると、ヒルマン・ハンター GLSは少しワイルド。アロー・シリーズの特徴を備えつつ、この時代の英国車では最も訴求力の高いスポーツサルーンだといっていい。

それでも、筆者が最も共感を覚えるのは、ヴォグゾール・キャバリエ 1900GL。同社を窮地から救っただけでなく、パイルカーペットが敷かれた車内も、英国車とは違う魅力を味わわせてくれる。センスのあるサルーンとして、活躍した様子を今に映している。

協力:ロッドン・ブルワリー社、モーリス・マリーナ・オーナーズクラブ、イタル・レジスター

マリーナ ハンター キャバリエ 3台のスペック

モーリス・マリーナ 1.8スーパー(1971~1980年/英国仕様)

英国価格:1932ポンド(新車時)/7000ポンド(約112万円)以下(現在)
販売台数:113万5343台
全長:4219mm
全幅:1646mm
全高:1422mm
最高速度:152km/h
0-97km/h加速:12.8秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:935kg
パワートレイン:直列4気筒1798cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:79ps/5100rpm
最大トルク:13.5kg-m/2900rpm
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動

ヴォグゾール・キャバリエ 1900GL(1975~1981年/英国仕様)

英国価格:2307ポンド(新車時)/6000ポンド(約97万円)以下(現在)
販売台数:約24万台
全長:4445mm
全幅:1651mm
全高:1321mm
最高速度:169km/h
0-97km/h加速:11.0秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:980kg
パワートレイン:直列4気筒1897cc自然吸気OHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:90ps/4800rpm
最大トルク:14.9kg-m/3200rpm
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動

ヒルマン・ハンター GLS(1966~1977年/英国仕様)

英国価格:2300ポンド(新車時)/1万ポンド(約161万円)以下(現在)
販売台数:約47万台
全長:4270mm
全幅:1613mm
全高:1422mm
最高速度:167km/h
0-97km/h加速:10.9秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:950kg
パワートレイン:直列4気筒1725cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:94ps/5200rpm
最大トルク:14.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動

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