現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 電気自動車の「将来性」に疑問符! MX-30 EVに乗ったレーシングドライバーの本音

ここから本文です

電気自動車の「将来性」に疑問符! MX-30 EVに乗ったレーシングドライバーの本音

掲載 更新 72
電気自動車の「将来性」に疑問符! MX-30 EVに乗ったレーシングドライバーの本音

 バッテリーを配置することで低重心化が図られる

 マツダの小型クロスオーバー系SUVとして人気を博している「MX-30」にピュアEV(完全電気自動車)仕様が登場した。MX-30はマイルドHV(ハイブリッド)が標準のパワートレインとなっていて、マツダが得意とするディーゼルエンジン(SKYACTIV-D)を設定していないことでも注目されたが、EV仕様の登場で同社の電動化への意気込みを物語っているともいえる。

航続距離の短さなんてネガじゃない! ガソリン車じゃあり得ない電気自動車のメリット4つ

 中国を筆頭に欧州もEV化を強力に押し進めており、日本も2050年までに「カーボンユートラル」を達成すると目標をかかげるなど自動車の電動化への変革は急務となっている。

 そこで、今回はマツダが投入したe-SKYACTIV搭載のMX-30 EVに試乗しながら、自動車のEV化について私見を述べる。

 まずMX-30 EVだが、EV化のトレンドに則りシャシーフロア下に35.5kwhの電力量のリチウムイオンバッテリーを配置している。フロア下に重量の重いバッテリーを配置することで低重心化が図られ、運動性能、操縦安定性に好影響を与えるのは他社の各EVモデルでも明らかになっている。また前面、側面、後面など各方向からの衝突時のバッテリー保護性においてもベストなポジションといえ各社採用している。

 MX-30 EVではさらに骨格を強化。バッテリーの上下にクロスメンバーを組み合わせバッテリーパック全体としてフロア剛性が高まるよう工夫されているという。その結果、前後横曲げ方向や縦曲げ強度が高まり、シャシー全体の応答性も向上している。

 一方、床下にバッテリーを収納したことで室内のフロア高が高まる。その影響として後席の足おとフロア位置が高くなって後席乗員の足のつま先が前席シート下に潜り込ませられなくなるなど居住空間に若干の影響を与えている。またグランドクリアランス(最低地上高)もガソリンHVの180ミリから130ミリにまで低くなった。見た目はSUVだが、走破性はシティカーのレベルといえる。

 EVに将来性があるのかは疑問

 マツダはMX-30 EVを街乗りのセカンドカーとして位置づけたとしている。実際、WLTCモードで256kmの航続距離だと長距離ドライブに駆り出すのはリスキーだ。こうしたモード燃費はエアコンなどの電装品をオフにして計測されるので、真夏や真冬などエアコン使用時の現実的な航続距離としては150km前後だといえるだろう。

 MX-30 EVもそうだったが、自動車メーカーがリリースするEVは総じて扱いやすく、乗りやすい。従来のガソリンやディーゼルなどから乗り換えても、違和感なく運転することができ、ハンドリングや実用性も完成度が高い。米・テスラのように新興EVメーカーのような奇を衒った乗り味(強烈なスタート加速性)やギミック(大型モニターや自動ドア等)ではなく、実用的なEVで大幅な普及を目指すのが狙いなのだろう。

 だが、レーシングドライバーとしての目線でみると、EVに将来性があるのかは疑問だ。ライトウェイトスポーツに代表されるように、自動車の運動性能を左右する重要な要素は「重さ」だ。いくらフロア下に搭載して重心を下げているとしても、絶対重量が大きすぎたら運動性を損ねてしまう。MX-30 EVも車両重量は1650kgもあり、ガソリンHVモデルの1460kgより200kg近く重くなってしまっている。そのためサスペンションのバネレートが高まり、ゴルゴツと固い乗り味となってしまっているのだ。

 マツダはこれまで「ウェルtoホイール」の理念に基づきEVよりディーゼルのほうが総合的に二酸化炭素排出量は少なくて済むと説明してきていた。今回はさらに踏み込んで、素材から発電、開発、製造、使用、廃棄に至までのトータルなライフサイクルアセスメントでの二酸化炭素排出削減を目指している。そのためバッテリーの容量を35.5kwhとしたのは同サイクルでガソリンエンジンのマツダ3と同等の排出量に抑えるためだという。もし高効率なバッテリーが開発されれば、より容量の大きなバッテリーの置換も有りえるのだという。

 そこまで考え、計算しているのなら、単に商機にのってEVを投入したのではないという説明にも納得がいく。軽くて高効率なバッテリーが登場すればEVのスポーツ性も高められるが、それでも最高速の低下は否めない。ガソリンターボ車で300km/hを超える超高性能は、たとえ速度無制限の独・アウトバーンであっても無用の性能だといえるが、現状のEVの多くは200km/h以下の速度しかだせない。低回転から最大トルクが引き出せる電動モーターでは変速機やリダクションギアが実用上必要ないためで、モーターの最大回転数が最高速度を決定してしまうのが現状だ。アクセルを踏み込めば誰でも最高性能が引き出せてしまうEVでは、レーシングドライバーとしてスポーツ性を見出だすのが難しく魅力を感じられないのだ。

 それでもフォーミュラEは世界選手権戦が組まれ、モータースポーツの最高峰であるF1やル・マンでも電動化はすでに導入されている。F1はトランスミッションも備えスポーツ性を維持している。国内でもEV車によるレースが開催されているが、現状はエコレースというレベルでスポーツ性を高度に競う段階に達してない。自動車メーカーがEVに本格参入するなら、やはりレースフィールドでも競える技術的基盤を醸成していくことも今後は魅力をアピールする上で重要になってくるのではないだろうか。

こんな記事も読まれています

「トラックドライバー = かわいそう」という欺瞞! 荷主&メディアの餌食にされるのは、いつも現場労働者である
「トラックドライバー = かわいそう」という欺瞞! 荷主&メディアの餌食にされるのは、いつも現場労働者である
Merkmal
カワサキ「Z900RS SE」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
カワサキ「Z900RS SE」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ
ライズよりちょいデカで200万円!? しかもEVってマジかよ!! BYDのコンパクトSUVがお見事すぎる!! 内装もヤバいのよ
ライズよりちょいデカで200万円!? しかもEVってマジかよ!! BYDのコンパクトSUVがお見事すぎる!! 内装もヤバいのよ
ベストカーWeb
[300馬力超]爆速の軽自動車が誕生!! マツダの軽「シャンテ」にロータリー搭載が最高だった
[300馬力超]爆速の軽自動車が誕生!! マツダの軽「シャンテ」にロータリー搭載が最高だった
ベストカーWeb
2024年F1第6戦マイアミGP予選トップ10ドライバーコメント(2)
2024年F1第6戦マイアミGP予選トップ10ドライバーコメント(2)
AUTOSPORT web
2024年F1第6戦マイアミGP予選トップ10ドライバーコメント(1)
2024年F1第6戦マイアミGP予選トップ10ドライバーコメント(1)
AUTOSPORT web
イケイケなフィアット「パンダ」も大雨には勝てず…イタリアの最新道路事情を私的にレポートします【みどり独乙通信】
イケイケなフィアット「パンダ」も大雨には勝てず…イタリアの最新道路事情を私的にレポートします【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
佐藤凛太郎インタビュー:「父と同じ道を進みたい」琢磨の息子がPONOS RACINGからFIA-F4デビュー
佐藤凛太郎インタビュー:「父と同じ道を進みたい」琢磨の息子がPONOS RACINGからFIA-F4デビュー
AUTOSPORT web
小さな「万能SUV」がマイチェン 熟成のフォルクスワーゲンTクロスへ試乗 95psでも魅力的
小さな「万能SUV」がマイチェン 熟成のフォルクスワーゲンTクロスへ試乗 95psでも魅力的
AUTOCAR JAPAN
なぜホンダ「N-BOX」が日本一売れているクルマなのか? Z世代が試乗してわかった軽の枠を超えた快適性と便利さとは
なぜホンダ「N-BOX」が日本一売れているクルマなのか? Z世代が試乗してわかった軽の枠を超えた快適性と便利さとは
Auto Messe Web
アロンソのペナルティに関する再審査請求をスチュワードが却下。アストンマーティンF1の新証拠には重要性が認められず
アロンソのペナルティに関する再審査請求をスチュワードが却下。アストンマーティンF1の新証拠には重要性が認められず
AUTOSPORT web
6.5リッターV12搭載のフェラーリ新型モデル『12チリンドリ』登場。スパイダーも同時デビュー
6.5リッターV12搭載のフェラーリ新型モデル『12チリンドリ』登場。スパイダーも同時デビュー
AUTOSPORT web
ベースは極上2002 クーペ BMWガルミッシュ(2) 現代のカロッツエリアが見事に再現
ベースは極上2002 クーペ BMWガルミッシュ(2) 現代のカロッツエリアが見事に再現
AUTOCAR JAPAN
BMWガルミッシュ(1) 巨匠ガンディーニによる先取り3シリーズ 同意を得ず「密かに」製作!
BMWガルミッシュ(1) 巨匠ガンディーニによる先取り3シリーズ 同意を得ず「密かに」製作!
AUTOCAR JAPAN
充電環境もプレミアムブランドにふさわしく
充電環境もプレミアムブランドにふさわしく
グーネット
ルクレール予選2番手「マシンは良い状態で、大きな修正は必要なかった。明日は優勝を狙う」フェラーリ/F1第6戦
ルクレール予選2番手「マシンは良い状態で、大きな修正は必要なかった。明日は優勝を狙う」フェラーリ/F1第6戦
AUTOSPORT web
GW明けだけど渋滞あり! 中央道の東京区間で交通規制 NEXCO中日本が迂回呼び掛け
GW明けだけど渋滞あり! 中央道の東京区間で交通規制 NEXCO中日本が迂回呼び掛け
乗りものニュース
「信号待ち」はフットブレーキを踏む? それともギアを「Pレンジ」に入れる? どっちがクルマに優しく安全なのか
「信号待ち」はフットブレーキを踏む? それともギアを「Pレンジ」に入れる? どっちがクルマに優しく安全なのか
くるまのニュース

みんなのコメント

72件
  • 日本の自動車メーカーって凄いねえー。
    EVだって言われたら即座に車を造っちゃう。

    でも、今の価格ではEVは日本国内では普及しないだろうね。
  • 原発止めて天然ガス燃やしまくっている日本でBEVはナンセンス。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

264.0299.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

166.1289.8万円

中古車を検索
MX-30の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

264.0299.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

166.1289.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村