660ccエンジンは64馬力以上のポテンシャルがある
日本独自のカテゴリー「軽自動車」。規格としては戦後間もなくからある古いもので、ボディサイズとエンジン排気量を制限されていることで知られている。エンジン排気量については、かつて360ccの時代があり、その後550ccまで拡大し、現在は660ccとなっている。
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軽自動車のナンバープレートをよく見ると、リアの封印がないことからわかるように、登録車とは異なるカテゴリー。あまり使われることはないが「届出車」とも呼ばれる。そのほか、自動車税が都道府県税なのに対して、軽自動車税は市町村税であるなど、じつは登録車とは根本的に異なるクルマだったりもするのだ。たびたび規格変更が話題となる軽自動車、その実態と可能性について考察してみよう。
さて、軽自動車の最高出力が64馬力(47kW)の自主規制となっているのは550cc時代からの名残であり、本来のポテンシャルに封印をしているといえる。なにしろスズキの軽自動車用ターボエンジンを積む輸入車「ケータハムセブン160」の最高出力は80馬力なのだ。
排気量拡大の話題が出ることもあるが、自主規制を撤廃しない限り、パフォーマンス面では大きな進化にはつながらないだろう。ただし、燃費面でいうと排気量アップにより低速トルクが出しやすくなり、ギヤ比の最適化と合わせてメリットは生まれると考えられる。
しかし、近距離ユースにおいてはゼロ・エミッションの電気自動車に置き換わるというグローバルなトレンドを考えると、今の段階で軽自動車の排気量を増やし、エンジンを新開発するメリットは少ないともいえる。もちろん、現在のコスト感でいえば軽自動車の電気自動車化というのは補助金を前提としないと難しい。
しかし、メーカーの枠を超えた部品共通化など電動化のコストダウンを図ることが、軽自動車の役割となるかもしれない。先日発表されたトヨタとスズキの業務提携を検討するといった動きも、こうした想像を膨らませてくれる要素だ。
軽の規格見直しは電動化を見据えてのものになるハズ
一方で、ボディサイズを制限した軽自動車規格は安全性において劣るのでは? という指摘もある。かつては衝突試験の基準において軽自動車は緩い条件だったが、現在は登録車と同じ条件であり、単独の衝突安全性については同等となっている。
なかには登録車よりも優れた結果を出すモデルもあるくらいだ。しかし、リアルワールドでのクルマ対クルマの衝突においては、それぞれの重量が大きな要素となるのは知られているところ。
自動車メーカーはコンパチビリティといってサイズにかかわらず安全性を高めることに苦心しているが、クルマ同士の衝突では軽い方に衝撃が集中することになるのは物理的に避けられない。つまり、単独事故を前提とした衝突安全性をいくら高めても、車重というファクターには敵わないのだ。
これは軽自動車に限った話ではなく、自動車全般に言えることだ。仮に1トンの軽自動車と500kgの小型車が正面衝突を起こしたら、後者のほうが危険度は高い。軽自動車だからというカテゴリーの問題ではない。もちろん、軽自動車はクルマ全体のなかで軽い傾向にあるのでクルマ同士の衝突事故になると不利な傾向にあるのは事実だ。
しかし、そうしたことを言い出すと軽自動車よりも大型乗用車、大型乗用車よりもトラックのほうがクルマ対クルマで当たったときには有利という話になるだけである。環境性能から重量軽減が言われているなかで、重量増に向かうということは考えづらい。
そうした軽量化のトレンドは軽自動車においてもキーになっている。仮にボディサイズを大きくして、少々クラッシャブルゾーンを増やしても重量車との衝突安全性が大幅に向上するのでないなら、ボディサイズの拡大という判断も難しいだろう。
ただし、前述したように電動化が進むと、それなりにバッテリーを搭載することにより結果的に重量増になってしまうことはあるかもしれない。
いずれにせよ、規格の変更というのは十年以上先までを見据えて行なうものだ。現在の軽自動車規格に変更されたのは1998年秋、じつに18年も変わっていない。20年先にはゼロ・エミッション化が進行していることが予想される。つまり、軽自動車規格の見直しは、電動化を前提としたものになることだろう。
(文:山本晋也)
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