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次期型メルセデス・ベンツ Sクラスの車内はSFの世界! 3DやARを満載した次世代コンセプトを渡辺慎太郎が解説

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次期型メルセデス・ベンツ Sクラスの車内はSFの世界! 3DやARを満載した次世代コンセプトを渡辺慎太郎が解説

Mercedes-Benz S-Class

メルセデス・ベンツ Sクラス

次期型メルセデス・ベンツ Sクラスの車内はSFの世界! 3DやARを満載した次世代コンセプトを渡辺慎太郎が解説

フルモデルチェンジは2020年9月

いよいよ2020年9月に、次期Sクラスが発表される。それに先駆けて、メルセデス・ベンツは新型Sクラスに搭載される新しいHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)をお披露目した。

最近、こうした“分割式ティザー公開”が流行っている。ポルシェも992型911やタイカンで、クルマそのものの発表前にパワートレインやインテリアなどを小出しにしてきた。市場の期待を煽るというのもあるだろうし、競合車への買い控えを狙う目的も背後に見え隠れする。いずれにせよ「もうちょっとで新しいのが出ますから待っててくださいね」という直接的なメッセージに代わる手法である。

有機ELやAR、3Dなど先進技術の満艦飾

今回のポイントはいくつかあるけれど、これまでの“MBUX”が“My MBUX”へと進化する点もそのひとつ。ドライバーを含む乗員すべてにパーソナルなサービスを提供するから“My”なのだ。また、有機ELディスプレイやARや3Dグラフィックなど、先進技術を惜しみなく採用している。以下にそのさまざまな機能を紹介するが、これでもまだほんの一部である。

車内の「画面」は次のステップへ

・センターディスプレイには縦長の有機ELディスプレイを採用
・メーターディスプレイには、3Dメガネをかけたときのようなリアルな立体的グラフィックを表示
・リヤに最大3つのディスプレイを搭載
・画面の内容を他の乗員と簡単に共有
・後部座席からもナビゲーションの目的地の選択・修正が可能

乗る人それぞれを判別する車内環境

・ラジオ局のメモリーや事前に選択した個人プロファイルは、どのシートにも転送可能
・個人プロファイルは同一車両内で最大7つまでメモリー可能
・個人プロファイルは“Mercedes me”の一部としてクラウドに保存できるので、新世代のMBUXを搭載した他のメルセデス・ベンツとも共有
・指紋認証/顔認証/音声認証など、新しい生体認証機能を搭載。ドライバーディスプレイには、オプションで2つのカメラを設置。顔認証にも用いる

人の動きや声から意志を読み取る

・助手席のチャイルドシート未装着認識機能と、新しいブラインドスポット警告機能を追加。これは、乗員の動きから降車の意思を検知して、他車の接近などを早期に警告するもの
・肩越しに後方を見るだけでリヤのローラーブラインドが操作できたり、手の動きでスライドサンルーフの開閉を行うなど、ジェスチャー機能を搭載
・音声認識システムの「Hi, Mercedes」は後部座席からも操作可能。複数のマイクがどの座席からの発声かを認識、アンビエント照明が点滅して発声者の位置を識別
・「Hi, Mercedes」は各種機能の説明をサポート。例えばスマートフォンのBluetooth接続方法や、救急箱の場所の提示など

AIやARが作り出す電脳空間

・特定の機能ではアクティベーションキーワードである「Hi, Mercedes」を毎回唱える必要がなく、例えば着信時には“Accept call”で直接応答可能
・AIを搭載した「Hi, Mercedes」は、自然言語で27種類に対応。これまで以上に自然な対話が可能に
・スマートホーム機能により、家庭用システムや家電製品を車内から音声でコントロールすることも
・2種類のヘッドアップディスプレイ(HUD)を用意。サイズが大きくなったHUDではAR(拡張現実)コンテンツを提供。
・シート調整はドアパネルのスイッチだけでなく、ディスプレイ画面からも可能に。シートヒーターやマッサージなどの機能は、音声コントロールでもオン/オフ可
・メカニカルスイッチの数を前モデルより27個減。ただし、ライトやワイパーなどの主要機能はこれまで通りのメカニカルスイッチを採用。エアコンのコントロールパネルは、ディスプレイの下端に常時表示
・センターディスプレイの操作はタッチやスワイプ、音声コントロール、ハンドジェスチャーに加えて、視線コントロールなど入力方法の選択肢を拡大

リアルの風景に仮想オブジェクトを連動

新しいヘッドアップディスプレイにはAR(拡張現実)を採用している。ARとは実存する風景にバーチャルな視覚情報を重ねて表示することにより、目の前に広がる世界を仮想的に拡張するというもの。

ディスプレイの開口角は水平10度/垂直5度で、画像は実質的に10メートル離れた場所に表示されているように見える。運転支援システムやナビゲーション情報など、多岐にわたるコンテンツを表示することが可能だが、前方の風景にうまく溶け込むので、ドライバーは気が散ることなく運転に集中できるという。

画像形成ユニット(テキサス・インスツルメンツ社製デジタルミラーデバイス)は、130万枚の個別ミラーからなる高解像度マトリクスと高効率の光源で構成され、映画館の投影装置などにも用いられている技術とのこと。ヘッドアップディスプレイに使用されるのはSクラスが初めてだそうだ。

裸眼で立体視できるメーターパネル

また、ドライバーの目の前にあるメーターディスプレイは3D対応となっている。3Dといっても専用のメガネを着用する必要はなく、ディスプレイ内のグラフィックに遠近感を付けることで、空間的な奥行きを形成しているという。

「MBUXインテリア・アシスト」は、オーバーヘッド・コントロール・パネルに内蔵されたカメラと学習アルゴリズムを用いて、乗員の動作から希望や意図を認識する機能。頭の向きや手の動きなどのボディランゲージを解釈して、該当する装備を作動させる。簡単に言えば、いわゆるジェスチャー機能である。

例えば、ドライバーが肩越しにリヤウィンドウの方を見ていると、自動的にサンブラインドを開いたり、暗闇の中でドライバーが助手席で何かを探していると、自動的にライトが点灯する。さらに、アウトサイドミラーのいずれかを見るだけで左右どちらのミラーを調整したいのかを判別するので、最初に左右ミラーの選択ボタンを押す必要もない。自然な手の動きも認識し、運転手や同乗者は手を動かすだけでサンルーフを開けることもできるという。

最大30%省エネできる有機ELディスプレイ

「Organic Light Emitting Diode」の略であるOLEDすなわち有機ELディスプレイはこれまでの液晶ディスプレイとは異なり、プラスチック基板の上に有機層を何層も重ねて形成した画面である。

Sクラスでは、有機ELディスプレイをガラス面の奥に配置。さらにその後ろにあるアクチュエーターや圧力センサーと組み合わせて、ディスプレイに直接触ったときのアンサーバックを可能にしている。有機ELディスプレイは電流を流したときだけ発光するので、液晶ディスプレイのように外部照明は必要なく、エネルギー消費量を最大30%削減できるそうだ。

27言語に対応する学習型音声認識機能

音声認識システムの「Hi, Mercedes」は、これまでユーザーに一定の固定コマンドを要求していたが、新しいMBUXでは自然言語を理解できるようになったので、クルマの操作に関するほぼすべての言葉を実質的に把握できるという。対応言語は27種類で、日本人が話す英語など、非ネイティブスピーカーの言葉も学習機能を利用して、使えば使うほど認識力が向上する。

また、例えば室内が少し寒いので「足元の温度を24度に上げて」とわざわざ詳細な説明をしなくても、「寒い」のひと言で対応できるようになったそうだ。音声認識のソフトウェアは車載とクラウド上のものを併用し、通信環境がよければクラウドを使い、悪ければ車載に自動的に切り替えるので、使えなくなることはない。

SクラスがSクラスであるために

これらの機能は仕向地によって使用の可否が異なるが、約90%の機能は地球上のどこでも使えるという。また、今後は他のモデルにも随時採用する予定だそうだ。新技術はまずSクラスに搭載し、やがてラインナップの裾野まで広げていくという、いつものメルセデスのやり方である。

一方で、個人的にはオンライン・カンファレンスにチーフデザイナーのゴードン・ワグナーが登場したことが興味深かった。基本的には出たがりの彼なので、あるいは単純にそうなっただけかもしれないが、HMIとデザイナーが深く関わることはむしろ重要だと考える。

HMIの開発ではどうしても電子機器関連の専門部署が主導権を握ってしまい、グラフィックがどうのとか階層がどうのとか、ディスプレイの中の世界に集中してしまいがちになる。ところがワグナーはそれをあくまでもインテリアの一部として捉えている。

「私たちのデザインテーマはSensual Purityですが、この二極性をMBUXのオペレーティングシステムにも移植しました。美しさへの欲求と機能性の両立です。同時に、ラグジュアリーとは美への欲望と並外れた何かへの欲望でもあります。MBUXにも、そのような考えを反映させました」

インテリアの広報写真はまだ一部しか見えないけれど、それはモニターが並んだ未来のクルマというよりも、まごうかたなきSクラスの室内の風景だった。ワグナーが言いたかったのはつまりそういうことだろう。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

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みんなのコメント

11件
  • ナビや安全装置の視認性を考えると高輝度の大型パネルは理に適っていると思う。
    音声認識も「てにをは」の問題はあるにせよ実用に届いてきているし、テスラやベンツが先進によるコクピットの革新を図っているのが興味深い。

    残されたBMWやアウディがどう巻き返すかが楽しみになります。
  • 金持ちの優越感を満たすのも大変だなメーカーも
    ネタが尽きなきゃいいけど
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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