もくじ
ー 生産 500台以下
ー 6.5ℓ V12の音色は?
ー 200km/hまで加速
『フェラーリ・モンツァSP2 グッドウッドで試乗』すべての画像をみる
生産 500台以下
フェラーリ・モンツァSP2は大量生産されるモデルでもなければ、今後何度も展示する機会があるわけでもない。そこでフェラーリはグッドウッドでこのクルマを積極的にアピールしていた。
スーパーカーのパドックはいつも通りひとで溢れていたが、特にフェラーリのブースは混雑していた。マラネッロからの激レア車はモンツァSP2だけではなかった。F12 TdFをベースとしたSP3JCはブルーとホワイトのペイントが周囲のロッソコルサと良い対比になっていた。そのほかにも顧客の依頼で製作されたP80/Cが周囲を威圧する。
一方のSP2は正反対の魅力を持つ。生産台数は500台以下で、その正確な価格も明らかになっていない。しかしその存在感はそれほど強烈ではない。そのベースが812スーパーファストであることを知っていれば、その劇的なデザインの変化に気づくだろう。フロント部分は大きく変更され、ウインドスクリーンはなく、1960年代風のバットレスを備えている。しかしそれを除けば、極めて調和の取れたデザインだ。
エレガントというのはイタリア製スーパーカーに使い古された表現だが、SP2はまさにその言葉がしっくりくる。車内に乗り込んでみよう。
6.5ℓ V12の音色は?
大きく変わったスタイリングに対し、インテリアは812と同様に快適かつ充実の装備を持つ美しい仕上がりだ。
SP2はどこにでも乗っていけるクルマでなければ、全天候型とも言いにくい。しかしそれがSP2を買わない理由ではないだろう。「ひととちょっと違うクルマ」の最高峰であり、ひとびとの視線はゼンヴォTSR-Sやケーニグセグ・レゲーラに向けられたものと同種であった。グッドウッドのハイライトの中でもトップに近い存在感だ。
SP2の6.5ℓV12のサウンドはもちろん大きいが、不快感はない。軽く吹かすだけでカメラを向けられる。しかし、この深いふたり乗りのキャビンにおさまれば、50m離れたクルマから聞こえているかのようだ。1速でトップエンドまで回してリアタイヤを鳴らし、スタートラインについた。そしてグリーンフラッグを待つ。
スタートすると、そのパワーデリバリーは非常にリニアかつ息が長い。1コーナーに差し掛かってもボディはフラットなままで、世界最高のスーパーカーであることを実感させる。
ここからがSP2の見せ場だ。
200km/hまで加速
グッドウッドのヒルクライムはこのクルマの速さを見せつけるというよりも、V12サウンドとタイヤスモークの素晴らしい不協和音を響かせる場なのだ。速さについてはP80/CやFXX Kの担当だ。とは言え、橋の下をくぐり最終のグランドスタンドを通過するときには、車速は200km/hをゆうに超えていた。しかし、それを感じさせないのが驚きだ。
必然的に、SP2の大半はコレクターや大物のガレージに収められ、こんな限界走行をする機会はないだろう。残念なことだ。非常に目立つルックスだが、決して見掛け倒しのクルマではないはずなのに。
今回のフェスティバル・オブ・スピードはSP2の走行展示にもってこいの機会であった。観客はこのクルマに熱狂し、コースはパワーを十分に発揮できる長さだ。そして何より、ルーフがなくても困らない陽気であった。米西海岸のパシフィックコースト・ハイウェイやブラックプール・プロムナードが似合うクルマであり、ガレージに閉じ込められるべきではないだろう
しかし、SP2が「量産」されるのは残念だ。その台数は多くはないが、希少性もその魅力のひとつである。幸い230万ポンド(3億1000万円)という高価格ゆえ、日常的に見かけるということにはならないはずだ。紛れもなくマラネッロ産とわかるそのサウンドを聴く機会があれば、非常に特別な体験となるだろう。
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