次々とNEWモデルを発表・発売し、確実に輝きを取り戻しつつある今の日産。EVとe-POWERが日産の今後を支える屋台骨になることは間違いなく、三菱自動車との共同プロジェクトで企画・開発を進める軽クラスのEVを2022年度初頭に発売することも発表されたばかり。
日産ファンにとっては嬉しいニュースが続く今日この頃だが、日産がここまでの復活を果たしたその裏には、セールス的に決して成功したとは言えないものの大胆な挑戦で時代をリードした数多くのモデルも存在する。今回は、そんな“隠れ名車”たちを紹介したい。
後世に語り継ぎたい「日本クルマ界 歴史の証人」日産カーデザイナー 松尾良彦【VOL.1】
文/FK、写真/日産、三菱
[gallink]
「キックス」と聞いて“軽自動車”を連想するアナタは相当な日産マニア!?
2008年10月にデビューしたキックス。KIXという名前は、“興奮”“熱中”の意味を持つ「KICKS」と“未知数” を意味する「X」を組み合わせた造語だった
キックス(KICKS)といえばe-POWERを搭載したコンパクトSUVを思い浮かべる人が大半だろうが、スペルこそ異なるものの、過去に同じ“キックス(KIX)”の車名で販売されていた軽自動車があったことをご存じだろうか?
2008年10月デビューのキックスは、三菱自動車からのOEM供給によって発売された軽自動車SUV。パジェロミニがベースだったキックスとはいえ、パジェロミニとは一線を画すフロントグリルは兄貴分であるエクストレイルを彷彿とさせるもので魅力も十分。
エンジンは街乗りから高速道路、さらには山坂道までパワフルかつスムーズな走りを実現する直列4気筒SOHC16バルブ4A30インタークーラーターボを搭載。
2WDと4WDの切り替えがトランスファーレバーで簡単に操作できるイージーセレクト4WDと相まって高い走破性と機動力も発揮した。これにアプローチアングル38°、デパーチャーアングル46°、最低地上高195mmという十分なロードクリアランスと15インチの大径タイヤによる悪路走破性の高さが加わり、刺激的な走りにも十分に応える1台だったが、パジェロミニの生産終了にともなって2012年6月に生産を終了した。
コンパクトSUVのジューク&キックスの成功の裏に「デュアリス」あり!
美しいシルエットラインを持つミドルサイズクローオーバーSUV、デュアリス。デビュー後約1.5カ月で受注台数が累計1万163台を達成するなど、ロケットスタートを決めた
ONとOFF、デュアルライフでの充実を提供したいという想いが車名に込められたデュアリスは、“スマート&コンパクトクルーザー”をコンセプトとしたミドルサイズクロスオーバーSUV。
デビューは2007年5月でその後のジュークやキックスといった日産のSUVに大きな影響を与えたデュアリスは、軽快かつコンパクトな上半身とSUVらしいダイナミックさを有する下半身を融合させたエクステリアデザインが最大の特長だった。
2010年8月にはマイナーチェンジを実施。いまや日産の代名詞となったVモーショングリルの採用をはじめ、視認性と高級感を高めた大径メーター、瞬間燃費やメンテナンス必要時期などの情報を表示する車両情報ディスプレイなどが新たに搭載されたが、2014年3月に販売が終了に。
日本でこそセールスは伸び悩んだものの、欧州でのモデル名であるキャシュカイの販売台数では、日産車のラインナップにおいて3年連続No.1を獲得するなど人気を博した。2021年2月には、新型キャッシュカイを欧州市場に投入することを発表。空前のアウトドアブームに沸く今の日本に導入されることがあれば話題になることは必至だが、果たして?
高級感あふれる大柄な見た目とは裏腹なコスパ抜群の大人のセダン「ティアナ」
V6 3.5リッターエンジンは231psを発生。美しさと強さを併せ持った「洗練された大人のための高級セダンだった
2003年2月に発売されたティアナはモダンリビングを思わせる品格あるインテリアを最大の特長とした、洗練された大人のための高級セダンとしてデビュー。
その特長を具現化した、落ち着きと新鮮さを醸し出すウッドパネルや贅沢なソファのようなシートなどを採用したインテリアは“和らぎ”、“もてなし”、“匠”といった日本人の生活価値観や新しい高級感を表現した秀逸な仕上がりだった。
エンジンは実用域のトルクを重視した新開発のV6 2.3リッターエンジンを量販グレードに採用。また、V6 3.5リッターエンジン搭載車には世界初の大排気量FF用ベルト式エクストロニックCVTを搭載し、高級セダンたるスムーズな変速と滑らかな走りを両立していた。
その後、2008年6月に2代目、2014年2月に3代目が登場。エンジンは最終的に無鉛レギュラーガソリン仕様の直4 2.5リッターに統一され、CVTの協調制御によるスムーズな走り出しと力強い中低速トルクによる心地良い加速によってクルーズ感覚を味わうこともできた。
2019年12月に生産終了となったティアナだが、昨今のセダン離れが逆に追い風となり、現在は高年式の中古車でも手が出しやすい価格で推移している。
「エルグランド」は威風堂々という言葉がびったりハマる高級ミニバンの元祖
キング・オブ・ミニバンとして君臨し続けるエルグランド。2010年5月に8年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たした
高級ミニバン人気の火付け役で、かつ高級ミニバンの元祖と言っても過言ではないモデルが、1997年5月に発売されたエルグランドだ。キャラバンコーチやホーミーコーチの後継となる日本最大級のLサイズミニバンは居住性に優れた大柄なボディはもとより、前後席間のウォークスルーを可能にしたスーパーマルチシート、多彩なシートアレンジを実現する回転対座方式の2列目シートや跳ね上げ方式の3列目シートの採用などによって快適な室内空間を提供した。
その後、2002年5月と2010年8月にフルモデルチェンジを実施して、より洗練されたミニバンに進化。従来モデルから継承する同乗者へのもてなし感にあふれたインテリア、上質な乗り心地をもたらすトリプルオットマン付シート、圧倒的な臨場感を演出する電動開閉式11インチ大型ワイドモニターとBose® 5.1chサラウンドサウンドシステムを採用した後席プライベートシアターシステムなど、くつろぎと快適性を徹底的に追求した充実装備の数々は圧巻!
キング・オブ・ミニバンたる存在感抜群のエクステリアと相まって、今もなお日産の最上級ミニバンの座に君臨している。
電動化への未来の道を切り拓いた世界初の量産型EV「リーフ」
世界初の量産型EV、リーフ。「技術の日産」の粋を結集したクルマとして国内外から注目された。日本のEVの歴史を変えた!
持続可能なゼロ・エミッション社会に向けた新しいモビリティを提案する世界初の量産型EVとして、2010年12月に発売されたリーフ。
走行中に二酸化炭素などの排出ガスを出さないだけでなく、リチウムイオンバッテリーと電気モーターの搭載によって力強い加速性能、高級車のような静粛性能、優れた重量バランスによる高い操安性も実現し、今までにない運転感覚を可能としたエポックメイキングな1台であることは周知のとおり。
デビュー当時の航続距離は200km(JC08モード)だったが、2017年9月登場の2代目は新型e-パワートレインの採用などによって400km(JC08モード)にまで進化。2018年7月にはピュアスポーツのスタイリッシュなフォルムとパフォーマンスを注入したNISMOバージョンも登場。
専用チューンを施したコンピュータはNISMOならではの力強く俊敏なアクセルレスポンスを実現し、市街地やワインディングにおいて気持ちの良いドライビングフィールをもたらした。
単に環境に優しいクルマだけでは終わらせない、スポーツマインドも刺激するバリエーションモデルを登場させるあたりは“やっちゃえ日産”の真骨頂か!?
第2世代のe-POWERを搭載した「ノート」は燃費ヨシ、加速ヨシ、静粛性もヨシ!
超進化を遂げた新型ノート。プラットフォームを新設計とし、第2世代の「e-POWER」を初搭載するなど、日産の最新テクノロジーが凝縮されている
ここまでに紹介してきた偉大な先達の薫陶を受け、続々とNEWモデルを発表・発売する現在の日産。そんなNISSAN NEXTを象徴する重要な1台として忘れてはいけないのが、3代目のノートだ。
2020年12月に発売されたノートは、従来のシステムを大幅に刷新してパワーアップを図った第2世代のe-POWERを初めて搭載。先代のノートに比べるとトルクが10%、出力が6%向上したモーターがよりパワフルで気持ち良い発進加速と、中高速からの追い越しでの力強い加速感を実現。
インバータも第1世代より40%の小型化と30%の軽量化を達成、エンジンの効率を高めたことで燃費性能も向上している。
さらに、システムの制御によるエンジンの作動頻度低減や車体の遮音性能向上によって、クラスを超越した静粛性も実現。
新世代に移行する日産デザインのキーワード“タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム”を具現化したエクステリアも好評を博し、発売1カ月で月間販売目標の2.5倍となる2万台を突破。2021年4月にはe-POWERの国内販売累計が50万台を突破するなど、EVと並ぶ日産の電動化技術の要であるe-POWERの勢いは止まらない!
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