インテリジェンスなドライビングスタイルが似合うクルマだった
2024年7月末から8月末の1カ月間、米国西半分の博物館を巡る取材旅行に出かけてきた筆者。個々の博物館への探訪記はまた別の機会に譲るとして、まずは取材の足としてアメリカを駆け巡ったホンダ「アコード」の試乗インプレをお届けします。
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“アメホン”のラインアップの中で最も高価なセダン
家族はこれが最後の海外取材旅行と固く信じているようだが、はたしてそうなるかはともかく、自分でも体力に自信がなくなり、しばらくは海外出張も控えたいと思っているのは事実。となれば取材の足は、学生時代から憧れ続け、サラリーマン時代には2代目のSZ、3代目のCA、そしてフリーランスになってから4代目のCB9と合わせて3世代のモデルを乗り継いだ経験のあるアコードにしたい。
アコードが世界戦略モデルとしてそのポジションを確立した北米での“乗り味”も気になるところで、アメリカン・ホンダ、通称“アメホン”にお願いして、広報車を借り出すことになった。グレードはTouring Hybrid。パワーユニットは、最高出力206psを捻り出すハイブリッド・システムを搭載。価格は3万9300ドル(原稿執筆時点の邦貨換算で約587万7000円)からという“アメホン”のラインナップの中で最も高価なセダンとなっている。
より上質、そしてよりパフォーマンスの高いTouring Hybrid
その前の週に1週間ドライブしたインテグラのタイプSが、乗り始めてすぐ、横断歩道の前の段差を乗り越えた時に驚くほどに不快感がなく、それだけで十分と評価したことは前回書いたとおり。やはり最上級モデルの最上級グレードだけあって、アコードのTouring Hybridは、この段差通過のショックも軽やかで、一層好ましいものとなっていた。
だからと言ってフワフワした感じは皆無でタイヤが上下に移動しながらも、その入力をサスペンションですべて吸収し、ボディはまったく上下に揺れることなく段差を通過していく感があったのだ。サスペンションが秀逸なことは、高速道路のロングドライブでも明らかだった。
ペブルビーチのコンクール・デレガンスを取材した後、最後の取材目的地である国立自動車博物館、通称“ハーラー・コレクション”のあるリノに向かうインターステート・ハイウェイ(州間高速道路)の80号線(IS-80)ではシエラネバダ山脈を越えるために高速のワインディングロード(例えていえば中央高速とか中国道のカーブ連続区間)が続くのだが、こういった状況下でもロールは過大ではなく、安心して心地よいロングドライブを楽しむことができた。
206psのパワーは、車重3532 lbs(ポンド=約1602kg)のボディに対しては、特筆するようなパフォーマンスは期待していなかったが、実際には十分以上。ISの郊外区間では時速70マイル(約112km/h)の制限区間が多いようだが、この条件での巡航は楽ちん。
ひとクラス上の上質なクルマ
しかもアクセルを踏む右足に少し力を入れるだけでスーッと加速してくれるからロングドライブも全くノーストレスだ。ただし、これは平坦なセクションでのこと。今回のようにシエラネバダ山脈を突っ切っていくような登りのセクションでは、もう少し右足に力を込める必要があったが、特にフルスロットルだった訳でもない。だから一言で言うならパフォーマンスは必要にして十分、と判断してよいだろう。
かつて学生時代には空冷2気筒のホンダZを愛用し、四国地方をメインに西日本一帯を走り倒していて、初めてシビックRSを走らせた時、そして初めて親父のアコードをドライブした時の、それぞれの感動は、はっきりと記憶に残っている。もちろん数値化されたデータではなく、見える化とは無縁のイメージでしかなく、それも半世紀近くも昔のことなので記憶も曖昧になっているから、全く説得力がないのは承知の上、と断りながら言ってしまうなら、初代シビックのRSと初代アコードのEXの立ち位置は、北米でドライブしたインテグラのタイプSとアコードのTouring Hybridのそれに通じるものがあった。
つまりスポーティに振った上級モデルと、ひとクラス上の上質なクルマ、という訳だ。もう少し付け加えておくなら、RSやタイプSが程よく強化したエンジンとサスペンションを持ったスポーティな上級モデルなら、EXやTouring Hybridはより上質にシフトした格上のクルマとでもいったら、よりイメージし易いかもしれない。
インテリジェンスなドライビングスタイルが似合うクルマ
アコードと言えば忘れられない思い出がある。まだ学生時代、ホンダZでブイブイ言わしてた(?)頃のことだった。若葉マークは卒業していたけれど、なかなか親父のアコードを運転する機会には恵まれてなく、偶に借りることができても、ホンダZをドライブしているのと同様に、右車線に左車線に、と隙間を見つけては車線変更しながら先を急ぐような運転をしていて姉貴に諭されたことがあった。
アコードを運転する時にはアコードに相応しい運転をしなきゃ、と。孫が社会人となった今では娘と2人で藤井風くんのライブに出かけるような、くだけたお祖母さんになっているが、当時は親父や兄貴よりも怖い存在だったから反論する余地もなく、少なくとも姉貴の見ている前ではその仰せ通りに従順しい運転スタイルを心掛けていた。
ただ、1人で運転するようになってからはZスタイルのドライビングに戻っていたのは否定しない。今回アメリカでドライブしたアコードのTouring Hybridは、まさに半世紀近く前のアコードEXと同様に、従順しい、というかインテリジェンスなドライビングスタイルが似合うクルマだと直感できた。
しかしその一方でキビキビとしたドライブを楽しむようなスタイルも似合っているようにも感じられた。ということで、姉貴も見ていなかったことだし、後者のドライビングスタイルでロングツーリングを心行くまで楽しむことになった。姉貴、これがアコードに相応しい運転だよ、と憎まれ口をききながら。
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みんなのコメント
新型アコードに至っては、レクサスと比べても乗り心地でも同等、走りではリードしていると言う評価。
その辺りはアメリカの販売台数に如実に表れている。
レジェンドの最終型でも同じ事が書かれていたが、日本でホンダのセダンは殆ど売れてない。
日本に限って言えば評価するポイントが違うと言う事だ。