通称「4Lモンキー」前後に本格的サスペンションを装備した第三世代、モンキーZ50J(1974年)
前後リジッドサスペンションの初代モンキーZ50Mを第一世代、フロントにテレスコピックフォークを採用した(リヤはリジッド)Z50A/Z50Z系を第二世代として、少しずつ進化してきたモンキー。
しかし、この時期までレジャーバイクとしての人気は同門のダックスホンダほど高まらなかった。そしてホンダが取った次なるモンキーへの方策は、クルマで連れて行ってもらえる小さくて可愛いモンキーからの「独り立ち」だった。Z50ZK1登場から2年後の1974年、モンキーは大きく変貌を遂げた。ポケットモンキーからワイルドなモンキーへと進化したのだ。
【画像15点】ホンダ・モンキーZ50J、Z50JZのエンジン、足まわり、装備を写真で解説!
可愛いモンキーからの脱却は、公道でさらに乗りやすく、走破性を高めるための「成長」だったが、実際従来のモンキーは同門のダックスホンダに対し販売的には今ひとつ伸び悩んでいたようで、その要因のひとつが「走らない」ことだった。
そこでリヤをショック付きスイングアーム式とし、前後にストローク性を確保。ついでに、未舗装路などでも楽しめるようにブロックパターンタイヤを履かせ、リヤキャリヤを標準装備とした。また、行動範囲を広げるべく燃料タンク容量は1.5L増の4Lへと拡大。このタンク容量が、そのままZ50Jの通称「4Lモンキー」ともなっている。
タイヤ径は従来からの8インチを踏襲するが、従来比でホイールベースは20mm増、全長で70mm増と車格が大きくなり、車重も5kg増えたが、走破性向上のための必然だった。折りたたみ式のハンドルは標準装備するものの、ニュースリリースからは四輪トランクに収納できるといううたい文句はなくなり、モンキーは積まれるものではなく、独り立ちするものになったのだ。
こうしていっぱしのバイクとしての走りを手に入れたモンキーは、小さな車体ながらも足まわりのチューンアップがやりやすくなり、同時にエンジンチューンのベース車としても注目されるようになった。アフターメーカー製のモンキー用チューンアップパーツが盛り上がり始めるのもこの頃で、第三世代以降のモンキーは、カスタムの対象としても人気を得ていくこととなった。
(写真説明)
■Z50J車体:前後サスペンションのグレードアップでの走行安定性確保とともに、オフロードでの走破性も連想させるZ50J。前後ブロックパターンタイヤ、ガード&プロテクター付きアップマフラーなどを標準装備。リヤキャリヤの採用とタンクの大型化も、同車の行動範囲を広げる装備と言える。長めになったシートは、17mmの範囲で高低2段階が選べる調整機構を装備。
■Z50Jエンジン:先代から性能は変わらない横置きOHCエンジン。自動遠心クラッチの3段変速も同様だが、シフトペダルはシーソー式ではなく、Z50ZK1と同様の前側だけのタイプとなる。特徴的なのは、エアクリーナーボックスの形状変更。止め金具で簡易に外せる仕様となったが、オフ車を意識した装備か。
■Z50J後輪まわり:2本ショックのスイングアーム式となったリヤサスは、新世代モンキーにふさわしい装備。最低地上高も先代比5mmアップ。前後フェンダーは、長さ幅ともにサイズアップし、タイヤはブロックパターンに。フロント分離機構とセンタースタンドは廃止され、サイドスタンドが標準装備となった。
■Z50J燃料タンク:Z50Jの象徴と言える4Lタンク。燃料漏れ止めキャップ、折りたたみハンドル(フロント分離機構は廃止)などで、車載コンセプトは踏襲するものの、より自走での楽しさが盛り込まれ、結果的にこの世代から新たに人気を高めていった。
■Z50JII車体:保安部品の改良を図ったマイナーチェンジモデルが1975年発売のモンキーZ50J II。ウインカーステーの延長で被視認性を向上させたほか、サイドスタンドも強化型へ変更。なお、エンジン性能と変速方式に変更はないが、シフトレバーはシーソー式が復活。価格は先代から一気に2万円アップの9万9000円。
■Z50Jの1974年版カタログ:1974年発売のZ50Jの不思議なカタログ。1970年代半ばから後半にかけてのオカルトブームを受けてなのか、Z50Jの特徴をなぜかUFOや宇宙人に絡めてアピールするという異色の内容。車両そのものを直接アピールする写真や文面が見られないのだ。
モンキーZ50J主要諸元(1974年)
■エンジン 空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク39×41.4mm 排気量49cc 圧縮比8.8 点火方式フライホイールマグネトー 始動方式キック
■性能 最高出力2.6ps/7000rpm 最大トルク0.3kgm/5000rpm 最高速度50km/h
■変速機 常時噛み合い式3速リターン 変速比 1速3.181 2速1.823 3速1.190 一次減速比── 二次減速比──
■寸法・重量 全長1325 全幅615 全高855 軸距895 最低地上高135(各mm) 前後タイヤ3.50-8(2PR) 車重58kg
■容量 燃料タンク4L
■価格 7万9000円(当時)
2007年のキャブレター最終型まで不変のフォルムを継続した第四世代、モンキーZ50JZ(1978年~)
比較的短期間でモデルチェンジを繰り返してきたモンキーだが、その完成形と言えるのが1978年に登場したZ50JZ。5Lのティアドロップタンクとシート形状は、同車のキャブレター仕様が終焉する2007年まで不変だった。
1970年代半ばのZ50Jの登場により、走りに磨きがかかったモンキーは、ここから新世代に入った感がある。前後を普通のサスペンション形式としたことで、走りのチューンアップベース車としても注目を浴びるようになったからだ。そしてZ50JZは、より走りの行動範囲を広げる方向に進んだ。
特徴のひとつが1L増となった5Lタンク。このタンクも、歴代モンキーの識別時に「5Lモンキー」と通称されるが、もうひとつ同モデルからは、燃料漏れ防止付きキャップではなくキーロック付きの通常型キャップへ変更された。これにより、モンキーを横倒しでトランクに積む車載形態と決別。ニュースリリースでも「小型乗用車で目的地に運ぶことも可能」とし、トランク収納を謳わなくなった。
そして、より快適方向に厚みを増したシートは新作となり、ヘッドライトは大型化され光量もアップ。ウインカーも新デザインとなっている。ほかに、リヤキャリヤの標準装備もZ50Jから踏襲し、ツーリング用途も意識したものとなった。
なお、1978年に同時に登場した派生モデルとしてゴリラがある。こちらはモンキーをベースによりツーリング性能を高めたもので、変速はマニュアルクラッチのリターン4速化。モンキーはこの時点では自動遠心クラッチの3速だが、後に1985年から4速マニュアル式が標準採用される。
(写真説明)
■Z50JZ車体:ティアドロップ型の5Lタンクと大径化されたヘッドライトが特徴のJZ型。ハンドルを折りたためる機構は残すものの、ガソリン漏れ防止装置を廃止するなど、トランクに横倒しする積載は想定しなくなった。全長はZ50Jから15mm長くなっているが、車重は変わらず乾燥で58kg。シートは着座ポイントの厚みを増した新デザインとされ快適性に配慮。ほかに従来装備した高低2段階のシート高調整は廃止された。なお、このフォルムが2007年のキャブレターモデル生産終了までモンキー不変の意匠となり、タンクやシート色を特別にあしらった限定モデルも数多く発表された。
■Z50JZとゴリラの合同カタログ:ゴリラ(左)とモンキー(右)、それぞれの個性をアピールする1978年版の両車合体タイプのカタログ
■Z50JZエンジン:2.6psと最高出力が不変のエンジンは、自動遠心クラッチ3段+シーソーシフト。しかし、兄弟車ゴリラに採用されたマニュアルクラッチ4速を、後にモンキーも採用。1979年販売の銀メッキのリミテッドで4速が初採用となり、1985年型から標準モデルが4速化し、エンジンの最高出力は3.1ps/7500rpmに向上。
■Z50JZ後輪まわり:先代のZ50Jから踏襲した2本ショックのスイングアーム式リヤサス。撮影車のタイヤはロードタイプだが、標準はブロックパターン。ちなみにシート下に配置の6Vバッテリーは、1992年型より12V化(MFバッテリー装備)され、同時に点火はCDI式とされた。
■Z50JZ燃料タンク:キーロック付きキャップを持つティアドロップ型5Lタンクの採用で、先代より航続距離は延びた。燃費をスーパーカブ50並みの50km/L前後とすれば、軽く200kmを超える。タンクの愛らしい丸みを持つ造形を生かし、この部分やシートをスペシャルカラーとする限定車も数多く発表された。
モンキーZ50JZ主要諸元(1978年)
■エンジン 空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク39×41.4mm 排気量49cc 圧縮比8.8 点火方式フライホイールマグネトー 始動方式キック
■性能 最高出力2.6ps/7000rpm 最大トルク0.3kgm/5000rpm
■変速機 常時噛み合い式3速リターン 変速比 1速3.181 2速1.823 3速1.190 一次減速比3.722 二次減速比3.083
■寸法・重量 全長1340 全幅600 全高845 軸距895 最低地上高150(各mm) 前後タイヤ3.50-8(2PR) 車重58kg
■容量 燃料タンク5L
■価格 10万円(当時)
まとめ●阪本一史 写真●山内潤也/ホンダ
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みんなのコメント
この“4L”へのモデルチェンジが、『GORILLA』の出現(!)に繋がり、現行の125cc 『monkey』にまで成長させたとも言えるのでしょう。
ガソリンタンクが大きくなりましたね。