バンクのある高速周回路では最高速テストが行われた
「谷田部」って知っているだろうか? 自動車メディアで「谷田部」という場合、それは1980年代から90年代にかけて、自動車雑誌やビデオが毎月のようにテストを行ない、その最高速やゼロヨンのタイムに一喜一憂したテストコースのことを指す。
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正式には、茨城県谷田部町(当時 現つくば市)にあった財団法人日本自動車研究所(JARI=現 一般財団法人日本自動車研究所)の高速テストコースのことをいう。(財)日本自動車研究所は、1961年に設立された(財)自動車高速試験場が前身。1964年には、高速周回路完成・谷田部テストコースの運用が開始された。ここには総合試験路やスキッドパッド、旋回試験場などさまざまなテストコースが用意されていたが、その最大の特徴は、日本で初めての本格的な高速周回路があったこと。
谷田部の高速周回路は、一周5.5km。約1.5kmの2本の直線を、半径400mのコーナーで結んだ、オーバルコース。その南北二つのコーナー部分は、円曲線部最大角度45度のバンクになっていた。
このバンクのおかげで、バンク内は180km/hで走行すれば、ステアリングを直進状態にしたまま走ることが可能だった(谷田部の高速周回路の設計速度は、イエローラインの部分で180km/h)。逆に言えば、180km/h以下で走るときは、コーナーのアウト側にステアリングを切らないと、バンクからずれ落ちてきてしまうという区間だった。
量産車でいえば、1966年にトヨタ2000GTが3つの世界新記録と13の国際新記録を樹立したスピードトライアルの舞台もこの谷田部のテストコース。R32GT-Rは、ノーマル(リミッターカット)で250km/h、Z32は同じ280馬力でもボディの空力が優れていて、R32GT-Rよりも10km/h以上最高速が伸びた。フェラーリF40が実測300km/hを記録したのも谷田部!
いまでも45度バンクのなごりを見ることができる!
チューニングカーでは、あの伝説の「光永パンテーラ」が国内初300km/hオーバー、307.69km/hを記録したのが、1981年の谷田部。国産チューニングカーではじめて300km/hの壁を破ったのは、「HKS M300」(セリカXX)の301.25km/h(1983年)。国産車で「光永パンテーラ」のレコードを塗り替えたのは、トライアル3LツインターボZ(1984年)の307.95km/h……。いずれも舞台は、谷田部の高速周回路。
その後、日本自動車研究所は、つくばエクスプレスの開通に伴い、2005年にテストコース機能を茨城県城里町に移転。かつての高速周回路だった部分の大半は取り壊され、商業施設やつくばエクスプレスの研究学園駅、公園などになってしまった。しかし、茨城県つくば市学園南2丁目8-5(県道123号の西岡交差点から、北に185m)に、あの45度バンクの一部が切り取られたように保存されている場所がある。
なかに立ち入ることはできないが、フェンス越しに覗くことは可能。
真冬の早朝、筑波おろしの強い風が冷たく、凍えながら光電管や小野ビット(計測器)をセッティングした思い出がある、当時の自動車雑誌編集部員も今ではもう50歳前後のオジサンばかりだろうが、あの頃の自動車好きにとって、谷田部は特別な地。
外周路や中庭の芝生のうえでも、よく撮影が行なわれていたし、テストが早朝だったため、研究所内の宿泊施設に前泊することも多かった。(余談だが、谷田部の日本自動車研究所の正門前が、1985年の筑波科学万博の会場だった)
グーグルMAPにも「旧JARI(谷田部) 45度バンク」(観光名所!)として載っているので、かつての最高速アタックの聖地、“谷田部”の痕跡を見に行ってみるのもいいのでは?
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