走らせて静かで速く、4WDで安全、安心、車内はだだっ広くて快適なテスラ・モデルX。効率(電費)はどうか? また家電同様に寒いとバッテリーのもち(航続距離)は落ちるのか? 東京から宮城蔵王まで走ってチェックしてみました。
本稿は「前編」の続きです。未読の方はぜひ前編からお読みください。
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文&写真:塩見智
■「寒いから電費が悪くなる」というわけではない
今回、テスラ・モデルX75Dで東京~蔵王を往復。2日間で964.2km走行した。
消費した電力は213.3kWh。電費は221Wh/kmということになる。過去、夏場にモデルX 75Dで走行した際の電費とほぼ変わらない。
家電のバッテリーと違ってEVのそれは、温度が一定の範囲を保つべく、夏場や冷やし、冬場は暖めているため、寒いから性能が悪化するということはない。
正確には、エンジン駆動車は冬場にヒーターを使う場合、その熱はエンジンが発する熱を利用するために燃費への影響がほぼないが、EVは熱をもたないため、ヒーターを使うと、その熱をわざわざ発するぶんだけ電費に悪影響を及ぼす。
「ファルコンウィング」と呼ばれるガルウィングドアが最大の特徴。案外雪道でも不便なく走れました
■夜間充電を利用すれば「電力費」はガソリンの約半分
さて、モデルXの電費が221Wh/kmと言われても、日常的にEVに親しんでいる人でない限り、これが良いのか悪いのかピンとこないだろうから換算してみた。
まず一般的なガソリン車でこの距離を走行した場合、燃費15.0km/Lだと64.3Lのガソリンが必要となる。ハイオクが150円/Lとすると9645円かかる。同様に燃費が10km/Lなら1万4460円、20km/Lなら7230円かかる。
では今回モデルX75Dが実際に消費した213.3kWhを充電するのにかかるコストはいくらか。
東京電力の「夜トク(いわゆる深夜料金契約)」プランだと、1kWh当たり20.78円(夜トク8)、22.55円(夜トク12)かかる(基本料金はEVを充電しなくてもかかるから無視)。ちなみに昼間に充電するとそれぞれ32.14円、33.76円だ。
これを適用すると、213.3kWhを充電するのにかかるのは4432~4810円(昼間だと6855~7201円)ということになる。夜間に充電すれば15.0km/Lのハイオクガソリン車のおよそ半額で済む。
電費221Wh/kmをやや複雑な計算を用いて一般的な「~km/L」に換算(ガソリン等価換算燃費)すると約32.0km/Lということになるのだが、より単純に考えてみよう。
964.2kmを約4600円で走行するには、ハイオクガソリン車の場合、31.4km/Lの燃費を叩き出さなければならないということになり、だいたいガソリン等価換算燃費と一致する。モデルXのように車重2.3トン超、最大トルク500Nm超のクルマ(しかも今回はスタッドレスタイヤ付き)でその数値はあり得ない。
■テスラは安い!(ただし車両価格の話は除く)
今回のように旅に出る場合、当然ながらすべて自宅で充電することはできず、途中で充電することになる。全国の高速道路のSA/PAなどにある急速充電器や街中の普通充電器などを利用できる「テスラチャージングカード」を契約すると、月額3510円かかる。
逆に言えば自宅で一切充電しなければ、いくら充電してもこの額で済むということ。日産は月額2160円で同様のサービスを実施している。
加えてテスラの場合、国内の都市部を中心に19カ所と拠点数はまだ少ないものの、スーパーチャージャーという専用の超高速充電スポットを無料で利用できる。これだと高速道路SAにあるCHAdeMO充電器の2~3倍の勢い(目安は約30分間で280km走行分)で充電が可能だ。
というわけで、モデルXの走行にかかるランニングコストは圧倒的に安い。そもそも車両の価格が1000万円を超えるということを決して忘れるわけにはいかないのだが。
【テスラ・モデルX価格】
75D 最大航続距離 417km 価格=1041万円
100D 最大航続距離 565km 価格=1241万円
P100D 最大航続距離 542km 価格=1780万円
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