現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 脅威の営業利益5兆円突破!!! トヨタ佐藤恒治社長 1年目の通信簿

ここから本文です

脅威の営業利益5兆円突破!!! トヨタ佐藤恒治社長 1年目の通信簿

掲載 25
脅威の営業利益5兆円突破!!! トヨタ佐藤恒治社長 1年目の通信簿

 ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。

 第三十回目となる今回は、ズバリ、「トヨタ佐藤恒治社長 1年目の通信簿」。EVシフトの鈍化、グループ企業の相次ぐ不正などトピックの中、2023年4月の社長就任から1年を駆け抜けた佐藤氏、および新体制の取り組みを振り返る。

脅威の営業利益5兆円突破!!! トヨタ佐藤恒治社長 1年目の通信簿

※本稿は2024年4月のものです
文:中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)/写真:トヨタ ほか
初出:『ベストカー』2024年5月26日号

■最大の功績はEVと水素モビリティの取り組みを加速化、一定の目途を付けた点

2023年春からスタートしたトヨタの新経営陣(中央が佐藤社長)。グループの不正問題に悩まされながらも積極的な発信で株価は急上昇している

 トヨタ自動車の佐藤恒治氏が社長に就任して1年が経過しました。

 その間に世界の情勢は激変し、トヨタのマルチパスウェイ(全方位)戦略が注目され、評価は著しく好転しました。

 一方、トヨタグループに深刻な不正が発覚し、佐藤社長はその対応に追われた12カ月でもありました。アナリスト視座的に、佐藤社長1年目の通信簿を考えてみます。

 電撃的な社長抜擢で登板した佐藤社長のここまでの最大の功績は「EV」と「水素モビリティ」の取り組みを加速化し、一定の目途を付けたところにあると筆者は考えます。

 この2つは将来のトヨタ競争力の重大な足かせにもなりかねない、佐藤社長の言葉でいえばマルチパスウェイ戦略の重要な「ミッシングピース(足りない部分)」であったのです。

 その取り組みを全社的に強化し、昨年6月の「テクニカルワークショップ」、9月の「モノづくりワークショップ」はともに渾身の力を込めた情報発信となったのです。

 現在、EVシフトには陰りが見えハイブリッド車の人気が急上昇しています。「それ見たことか。マルチパスウェイを貫くトヨタは正しかった」という声も聞こえてきます。

 しかし、カーボンニュートラルを目指す世界のなかでハイブリッドでは乗り越えられない規制の強化はいずれ訪れます。

「EV」と「水素モビリティ」は自動車メーカーが手の内化しなければならない重要なテーマなのです。

 長い目で見ると、移動のエネルギー源は「電気」と「水素」に収れんしていくでしょう。

 2023年の世界新車販売の15%以上が、すでにEVやプラグインハイブリッドの「電気モビリティ」に置き換わっています。

 マルチパスウェイのなかで、最も早く転換が進むゼロエミッション車は、エネルギー転換効率から考えて間違いなくEVなのです。

 その先には水素モビリティへの転換も始まると考えられます。

 水素は電気に形を変える燃料電池車だけでなく、CO2と合成したカーボンニュートラル燃料に変換して貯蔵、輸送、燃焼でき、大型商用車においては水素そのものの燃焼エンジンも可能となります。

 要するに、結果としてマルチパスウェイになることは間違いないのです。

 しかし、マルチパスウェイは戦略として正しくとも、その順番を間違えれば競争力を失います。

 マルチパスウェイのなかで早く普及するEVの競争力を高め、その先にある水素モビリティへの布石を打つことが持続可能な競争力となっていくのです。

■「余力づくり」の取り組みに注目

 社長就任の1年間でトヨタの株価は110%も上昇しテスラの時価総額に迫っています。

 佐藤社長、中嶋裕樹副社長の強いリーダーシップで生まれた情報発信があっての成果でしょう。

 就任直後の佐藤社長が、自分が社長になったことで同社の株価がアンダーシート(売られ過ぎ)するのではと恐れていたことを思うと、隔世の感を禁じ得ないのです。

 この危機意識がミッシングピースへの取り組みを劇的に強化し、積極的な情報発信を実施する強い動機になったのでしょう。

 その後は先人の努力と運のよさも重なり、素晴らしい株高を演じました。これだけ不祥事が発覚してもです。

 トヨタグループの不祥事は、2021年の国内ディーラーの「車検不正」に始まり、2022年に日野自動車、2023年にはダイハツ工業、豊田自動織機、2024年に入って豊田自動織機の自動車エンジン不正に発展しました。

 2023年度では合計30万台の生産を失う多大な影響を及ぼしました。

「経営」と「現場」が乖離して、組織の風通しの悪さを引き起こし、そして経営陣がそれを見落としてきたところに原因があります。

 本年の4月11日、就任1年目の節目に佐藤社長は投資家、株主向けに経営の振り返りの説明会を開きました。

 そこでは、不正対策としてのガバナンス改革に対する詳細な取り組みが語られました。

 トヨタグループ、トヨタ、子会社の3つの組織レイヤーに対し、01)風土、02)体制/組織、03)仕組み/ルールの3つの取り組みを9つのマトリックに分け、2時間の時間を使って丁寧にガバナンス改革の具体的な取り組みを説明しました。

出所:会社資料を基に筆者作成

 風土を醸成するのは豊田章男会長の役割であり、佐藤社長ら執行側は体制/組織、仕組み/ルール作りに取り組んでいます。

 しかし、「仕組みだけでグループ社員一人ひとりの行動を変えるのは難しい」と佐藤社長は言います。

 人の心の源流にある風土そのものを改革していくことがグループ改革には重要だと主張します。

 体制/組織改革のなかで、「余力づくり」が新たなトヨタの取り組みとして注目されます。

 これは今の仕事を見つめ直し、10年先の働き方を作ることを意味しています。台数を無闇に追わず、生じる余力を10年先にあるべき構造転換につぎ込むということです。

 ここでの構造転換とは、OS化、ソフトウェア化されたクルマが電気や水素エネルギーと繋がる循環経済型事業への転換を意味します。

 規制が一時的に後退し、「ハイブリッドでよかった」という油断モードの外野とは違い、グループ不正の危機を捉え、トヨタはグループの未来を再定義しようとしています。

 この努力が10年後の会社の繁栄をもたらすのです。

https://youtu.be/uEkVv_qk-mk?si=bzpOnspFgOM3nRak

ベストカーチャンネル特別映像「【トヨタのEV戦争】中西孝樹の特別授業~誰と何のために戦っていくのか~」プレスブリーフィング独占公開!

●これまでの連載はこちらから!

こんな記事も読まれています

使いこなせば一流営業マンも夢じゃない? 紙カタログの廃止で変化する[新車営業術]
使いこなせば一流営業マンも夢じゃない? 紙カタログの廃止で変化する[新車営業術]
ベストカーWeb
デミオ改め[新型マツダ2]登場もうすぐ!? そもそもどうしたら生き残れるのか!?
デミオ改め[新型マツダ2]登場もうすぐ!? そもそもどうしたら生き残れるのか!?
ベストカーWeb
BYD、“パクリメーカー”の汚名を返上し「リチウムイオン電池」で大成長 その背後にあった「非特許技術」の活用とは
BYD、“パクリメーカー”の汚名を返上し「リチウムイオン電池」で大成長 その背後にあった「非特許技術」の活用とは
Merkmal
巨匠が残した含蓄に富む名台詞を振り返る!! 小さな高級車論ほか 【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】
巨匠が残した含蓄に富む名台詞を振り返る!! 小さな高級車論ほか 【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】
ベストカーWeb
30年ぶりに[カプチーノ]復活へ!! 1.3Lターボ搭載で[FRオープンスポーツ]開発中!? 価格は300万円か
30年ぶりに[カプチーノ]復活へ!! 1.3Lターボ搭載で[FRオープンスポーツ]開発中!? 価格は300万円か
ベストカーWeb
FRポルシェにラングラーショート、アルピナ高騰確実!? 今ならまだ買える!! むしろ今買っとかなきゃなクルマたちイッキ見
FRポルシェにラングラーショート、アルピナ高騰確実!? 今ならまだ買える!! むしろ今買っとかなきゃなクルマたちイッキ見
ベストカーWeb
工夫の塊[新型スイフト]はちょっと不便!? 正常進化も[リアに室内灯なし]!! トラウマになってるクルマって?
工夫の塊[新型スイフト]はちょっと不便!? 正常進化も[リアに室内灯なし]!! トラウマになってるクルマって?
ベストカーWeb
エンジン車が生き残れる夢の燃料【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
エンジン車が生き残れる夢の燃料【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
グーネット
打倒ハリアーなるか!? [新型CX-5]やっとハイブリッド搭載!! 
打倒ハリアーなるか!? [新型CX-5]やっとハイブリッド搭載!! 
ベストカーWeb
新車買うなら[加入必須]?! 最近激推しされる[メンテナンスパック]って本当にいる?
新車買うなら[加入必須]?! 最近激推しされる[メンテナンスパック]って本当にいる?
ベストカーWeb
新人営業マンにドラマあり? 新車買うならベテラン営業マンより[新人]を選びたい納得のワケ
新人営業マンにドラマあり? 新車買うならベテラン営業マンより[新人]を選びたい納得のワケ
ベストカーWeb
「なんでいなくなった!?」人気車だったはず……だよね? 忽然と姿を消したクルマたち5選
「なんでいなくなった!?」人気車だったはず……だよね? 忽然と姿を消したクルマたち5選
ベストカーWeb
1.3Lターボってマジかよ!! [新型カプチーノ]普通車で開発中!? でも初代もスズキのホンキっぷりがヤバすぎた
1.3Lターボってマジかよ!! [新型カプチーノ]普通車で開発中!? でも初代もスズキのホンキっぷりがヤバすぎた
ベストカーWeb
初代BRZ開発のキーマンがSTIのトップへ就任。手応えを磨き、スバル車をさらに進化させる【STI株式会社代表取締役社長 賚 寛海氏:TOP interview】
初代BRZ開発のキーマンがSTIのトップへ就任。手応えを磨き、スバル車をさらに進化させる【STI株式会社代表取締役社長 賚 寛海氏:TOP interview】
Auto Messe Web
[アルファード]もアイシスの解放感にはかなわず!? ずっと売れ続けた秘訣は180万円以下スタートの価格設定か!?
[アルファード]もアイシスの解放感にはかなわず!? ずっと売れ続けた秘訣は180万円以下スタートの価格設定か!?
ベストカーWeb
マツダ新型ハイブリッドに秘策あり!! ロータリーは伏兵だ……スカイアクティブXの燃焼技術が生きるかも?
マツダ新型ハイブリッドに秘策あり!! ロータリーは伏兵だ……スカイアクティブXの燃焼技術が生きるかも?
ベストカーWeb
トヨタ株主総会、佐藤社長が陳謝、再任の豊田会長「喜んで“院政”を」[新聞ウォッチ]
トヨタ株主総会、佐藤社長が陳謝、再任の豊田会長「喜んで“院政”を」[新聞ウォッチ]
レスポンス
なんで[ルーミー]に負けるの[ソリオ]!! 販売店の量が原因だと思ってたけど差をつけられてる原因が他にもあった!?
なんで[ルーミー]に負けるの[ソリオ]!! 販売店の量が原因だと思ってたけど差をつけられてる原因が他にもあった!?
ベストカーWeb

みんなのコメント

25件
  • ******
    株主としてはもう少し配当を増やして欲しいが、BEV化が遅いだとか言われていたけど、結局経営層の判断は正しかった
    無配当のテスラとは差が出たな
  • ********
    安全で不正の無いまともな車づくりを目指して頑張ってください!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村