クーペとカブリオレとの間の小さなギャップ
text:Simon Davis(サイモン・デイビス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ポルシェの中でも、気取り屋のモデルとして見られることがある、911タルガ。コアな911ファンの一部には、シリアスなスポーツカーではなく、ハリウッドの目抜き通りでひけらかすようなモデルだと受け止める人もいるだろう。
その反面、AUTOCAR英国編集部には、911タルガを好きなメンバーが何人もいる。腕利きのドライバーでも、タルガルーフのアイデアを嫌いにはなれないようだ。
筆者もその考えに賛同する。最新の992型タルガを見てほしい。ルーフを大胆に開いても、911らしいサイドシルエットは、ほとんど変わらないのだから。
リアウインドウまで消えてしまう最新のカブリオレも、今まで以上にハンサムになった。でもタルガほど、粋なルックスの訴求力は得ていないと思う。相当にカッコ良い。
威風ある容姿のタルガが、英国編集部やエンスージァストから愛されてきたことは事実。一方、基本的な911のモデルツリーの中で、タルガが頂上に位置することもなかった。
ルーフがない分、ボディ剛性はクーペより劣り、車重もかさむ。特にリア周りで、重心位置は高くなる。ダイナミクス性能を鈍らせてしまう要素は少なくない。代々、受け継がれてきた短所ともいえる。
クーペとカブリオレとの間にある小さなギャップを埋めるべく、存在してきたタルガ。同時にこれまで、ポルシェの目指すところを正確に表現できていなかった。魅力的なスタイリングは別として。
997型タルガ以来続く四輪駆動
最新の992型タルガはどうだろう。多少の妥協は、従来どおり避けられないのだろうか。左ハンドル車ではあるが、試乗して確かめてみよう。
992型の911タルガには、2種類のモデルが存在する。ベースのタルガ4と、パワフルなタルガ4S。つまり、どちらも四輪駆動。2006年に登場した997型タルガ以来、変わらない駆動方式だ。
タルガ4に搭載されるエンジンは、ポルシェ製の3.0Lツインターボ・フラット6。最高出力385ps、最大トルク45.8kg-mと、不足はない。
タルガ4Sでは、450psと53.9kg-mまで引き上げられる。その結果、1675kgもあるスポーツカーを、静止状態から3.8秒で100km/hまで届けてくれる。最高速度は304km/hだ。
トランスミッションは、タルガ4では8速PDKのみとなるが、4Sでは7速MTも選べる。英国価格はタルガ4が9万8170ポンド(1325万円)で、タルガ4Sが10万9725ポンド(1481万円)。MTを選ぶと、追加費用なしでスポーツクロノ・パッケージが付く。
今回の試乗車は、タルガ4SのPDK版。スポーツクロノ・パッケージがオプションで装備されていた。ポルシェ製のアクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)と呼ばれるアダプティブ・ダンパーと、トラクション・マネージメント(PTM)は4と4Sで標準装備となる。
4Sではさらに、トルクベクタリング(PTV)・プラスと呼ばれる電子制御リアデフも標準で搭載。MT版ではPTVが、メカニカルLSDとなる。
タルガルーフの開閉時間は19秒。走行中の開閉は、徐行でもできない。
タルガらしい硬すぎないサスペンション
ポルシェの場合、自動車メディアへ貸し出すクルマには、10mm車高が低くなるスポーツ・サスペンションを付けることが通例。でも今回のドイツ仕様の911タルガ4Sには、組まれていなかった。新鮮だ。
同じ日に、スポーツ・サスペンションの付いた911の後輪駆動、カレラSにも試乗する機会があった。路面状態の良いドイツの一般道や高速道路では、標準サスペンションとの乗り心地の違いは限定的のようだ。
この環境では、タルガの乗り心地は目的通り。硬すぎず、スポーツカーとしてだけでなく、長距離用のGTとしても充分に使えそうだ。ポルシェ911らしい、素晴らしいドライビング・ポジションと、前後ともに優れた視界も備える。従来のタルガもそうだった。
ルーフを閉じていれば、外界からの隔離感は申し分ない。だが911共通ではあるが、幅が305もある21インチのリアタイヤからは、かなりの量のロードノイズが車内に響く。その騒がしさは、長距離ドライブを遠ざけてしまう理由にもなり得る。
クーペとのサスペンションの設定で違いを実感できるのは、興奮を誘うような、路面の管理状態が悪い郊外の道に出てから。PSAMをソフトな状態に保っている限り、鋭い隆起部分ではカレラと変わらない落ち着きで通過。路面のくぼみも、しなやかに均してくれる。
コーナリング時のボディロールは、カレラより大きい。それでも四輪駆動の強力なトラクションと、素晴らしい重み付けがされた正確なステアリングのおかげで、一般道でのタルガは驚くほどに速い。
姿勢制御と乗り心地との見事なバランス
シリアスなドライビング体験でいえば、後輪駆動のカレラSの方が良いだろう。タルガよりタイトで、より純粋なスポーツだ。クルマが生む興奮度も自由度も大きい。積極的にコーナーを攻めれば、リアタイヤがドライバーの背後で穏やかに流れる感覚も楽しめる。
だが、重く柔らかいタルガ4Sでも、姿勢制御と乗り心地とのバランスは見事。ルーフを格納できるという魅力もある。道を取り巻く環境、サウンドや燃えるガソリンの匂いを、全身で感じ取れる。
ただし、ルーフを開いても、期待ほど911のエンジンサウンドに直接さらされるわけではない。フルスロットル時以外では、キャビン全体を耳障りな風切り音が包んでしまう。ドライバーの肩越しに、バッファ音も立ててしまう。
過剰とさえいえるほど高性能化した、992型の911。空気が生む音響的な体験が、せっかくのタルガの満足度を低めている。
一方でほかの911と変わらず、3.0Lのフラット6ユニットは素晴らしい。エンジン自体のサウンドがターボで霞められているものの、アクセルレスポンスは期待通りに即時的。加速感は、個性を感じるほどにリニアで、永遠に続くのではと感じるほど。
PDKも最上級の仕上がり。トランスミッション任せで、素早く、意図通りに変速してくれる。ステアリングホイールに取り付けられたシフトパドルへの反応も、申し分ない。
従来以上に増したドライバーへのアピール力
911クーペにサンルーフか、カブリオレか、タルガか。オープントップの911に対する思いで、選択は変わる。後輪駆動のクーペは、間違いなくベターなドライバーズカーだ。
後輪駆動のカレラSカブリオレは、オープントップを満喫するなら、より魅力的な選択肢となる。911クラスの価格帯では大きな違いにはならないだろうが、4Sタルガより英国では5600ポンド(75万円)ほど安い。
もしカブリオレより足の速い、オープンエアを楽しめる四輪駆動の911を求めるなら、タルガの順位は上昇してくる。価格は4Sカブリオレとほぼ変わらず、見た目もイイ。車重は50kg重くても、一般道で違いを実感する時間は限定的だろう。
確かに、気取った雰囲気はある。周囲へのアピール力は強い。だが、これまで以上にドライバーへのアピール力も高められているのが、最新のポルシェ911タルガといえそうだ。
ポルシェ911タルガ4S PDK(欧州仕様)のスペック
価格:10万9725ポンド(1481万円)
全長:4519mm
全幅:1852mm
全高:1299mm
最高速度:304km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:9.3km/L(WLTP値)
CO2排出量:245g/km(WLTP値)
乾燥重量:1675kg
パワートレイン:水平対向6気筒2981ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps/6500rpm
最大トルク:53.9kg-m/2300-5000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
素敵すぎる