この記事をまとめると
■NSXは1996年の全日本GT選手権でレースデビューした
スーパーGTのレジェンドがまさかの引退! 立川祐路選手が語った「葛藤」とは
■NSXは何度も改良を受けながら、HSV010-GTにスイッチする2010年まで参戦
■2023年シーズンをもってNSX-GTはスーパーGTへの参戦を終了することとなった
国内最高峰のハコ車レースで戦い抜けたNSXの栄光を振り返る
既報のとおり、スーパーGTでGT500クラスを戦う3メーカーの一角、ホンダが2024年に合わせて主力モデルを変更。シビックをベースにしたニューマシン「シビック・タイプR-GT」を投入する予定で、これにより、GT500の最前線を戦ってきた「NSX-GT」は2023年をもって、GT500クラスでの戦いに終止符を打つことになる。
振り返れば、ホンダのGTシーンは、いつの時代もNSXがGT500クラスを牽引してきた。
NSXがGTシーンに登場したのは1996年の全日本GT選手権で、チーム国光の高橋国光/土屋圭市がGT1クラスに参戦。1997年からはチーム国光より高橋国光/飯田章、無限+童夢より黒澤琢弥/山本勝己がNSXでGT500クラスに参戦するほか、1998年には無限の中子修/道上龍、童夢の金石勝智/山本勝己、NAKAJIMA RACINGの佐藤浩二/トム・コロネル、チーム国光の高橋国光/飯田章といったように勢力を拡大。さらに同年の第4戦・富士で、NAKAJIMA RACINGの山西/コロネルが悲願の初優勝を獲得すると、無限の中子/道上が第5戦のもてぎと第7戦のSUGOを制するなどNSXが計3勝をマークした。
以来、NSXはホンダの主力モデルとしてGT500クラスで躍進。1999年には童夢の脇阪寿一/金石勝智が開幕戦の鈴鹿、チーム国光の高橋国光/飯田章が第2戦の富士、NAKAJIMA RACINGのトム・コロネル/光貞秀俊が第6戦の岡山を制するなど、同年もNSX勢が計3勝をマークしたのである。
その勢いは2000年も健在で、童夢の脇阪寿一/金石勝智が第2戦の富士を制するほか、NAKAJIMA RACINGの伊藤大輔/ドミニク・シュワガーが第3戦のSUGOおよび第7戦の鈴鹿、ARTAの鈴木亜久里/土屋圭市が第4戦の富士を制覇。さらに計4度の表彰台を獲得した無限×童夢の道上龍がドライバー部門でチャンピオンに輝くほか、無限×童夢がチーム部門を制するなど、NSXがついに国内最大のGTレースでチャンピオンマシンになったのである。
※写真は2003年仕様
その後もNSXの躍進は続いた。2001年に計3勝を挙げると、2002年には計5勝をマーク。2003年および2004年も各1勝を挙げると、その勢いはスーパーGTでも衰えることはなく、2005年に計2勝、2006年に計3勝を挙げたほか、2007年には計3勝をマークしたARTAの伊藤大輔/ラルフ・ファーマンがドライバー部門、ARTAがチーム部門を制して、NSXが2度目のタイトルを獲得した。
ちなみに2007年はNAKAJIMA RACINGのロイック・デュバル/ファビオ・カルボーンが第9戦の富士を制してランキング2位につけたほか、未勝利ながらチーム国光のドミニク・シュワガー/細川慎也がランキング3位、第7戦のもてぎを制した童夢の道上龍/小暮卓史がランキング4位につけるなどホンダ勢が上位を独占。当時は「NSXでないと勝てない」と言われるほどの強さで、まさにNSXが猛威を発揮していた。
2008年の勝利は童夢の道上/小暮による第5戦のSUGOのみという状況となったが、2009年にはARTAのラルフ・ファーマン/伊沢拓也が計2勝をマークした。
こうしてNSXを投入して以来、常にスーパーGTの最高峰クラスとトップ争いおよびタイトル争いを繰り広げてきたホンダ勢だが、2010年より主力モデルを開発中のスポーツカーをベースとなる「HSV-010 GT」にスイッチ。2013年までNSXでの活動を休止していた。
NSXは市販車の登場とともにレースシーンへ復活を果たす
スーパーGTに再びNSXが帰ってきたのは、2014年になってからで、NSXのコンセプトモデルをベースとする「NSXコンセプトGT」を投入し、第5戦の富士で、童夢の山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィが同モデルでの初優勝を獲得。2015年にはTEAM KUNIMITSUの山本尚貴/伊沢拓也が第6戦のSUGOを制するなど再びNSXを武器にホンダ勢が躍進した。
2016年は未勝利に終わったが、「NSX-GT」を投入した2017年はARTAの野尻智紀/小林崇志が第5戦の富士を制覇したほか、NAKAJIMA RACINGのベルトラン・バケット/松浦孝亮が第6戦の鈴鹿を制覇。さらに2018年には第6戦のSUGOを制したTEAM KUNIMITSUの山本尚貴/ジェンソン・バトンがドライバー部門でチャンピオンに輝くほか、TEAM KUNIMITSUがチーム部門を制するなど、NSXが3度目の二冠を達成した。
ちなみに2018年はARTAの野尻智紀/伊沢拓也が計2勝をマークしたほか、REAL RACINGの塚越広大/小暮卓史が開幕戦の岡山を制するなどNSXが躍進していた。
2019年は未勝利に終わったが、新型コロナウイルスの影響により変則的なシーズンとなった2020年にはTEAM KUNIMITSUの山本尚貴/牧野任祐が最終戦の富士を制してドライバー部門でチャンピオンに輝いたほか、チーム部門においてもTEAM KUNIMITSUがチャンピオンに輝いた。
2021年もARTAの野尻智紀/福住仁嶺が2勝、TEAM KUNIMITSUの山本尚貴/牧野任祐が第4戦のもてぎ、REAL RACINGの塚越広大/ベルトラン・バケットが第2戦の富士を制するなどNSXが計4勝をマークし、勝率5割を達成。
さらに2022年にはTEAM KUNIMITSUの山本尚貴/牧野任祐が最終戦のもてぎを制するほか、REAL RACINGの塚越広大/松下信治が第7戦のオートポリスを制するなど、NSXの強さは続いていた。
そして、NSXのラストシーズンとなる2023年もホンダ勢の活躍が続いており、第2戦の富士でTEAM KUNIMITSUの山本尚貴/牧野任祐がポールポジションを獲得したほか、ホンダのホームコースでのラストランとなる第5戦の鈴鹿ではARTAの福住仁嶺/大津弘樹がポール・トゥ・ウインを達成した。
まさにNSXはホンダのGTレーシングのシンボルであり、記憶にも記録にも残る名勝負を繰り広げてきただけに、ホンダのドライバーたちにとっても“NSXの引退”には万感の思いがあるようで、TEAM KUNIMITSUで100号車「STANLEY NSX-GT」のステアリングを握る牧野任祐によれば「2016年にGT500にデビューしたときからNSX-GTに乗ってきたので、いろんな思い出がありますね。チャンピンを獲らせて貰えたので、もっとも印象に残っているのは2020年ですが、2021年は最終戦で嫌な終わり方をしているので悔しい思い出もあります」とのこと。
そのうえで「NSX-GTはコーナリングマシンで、予選のアタックはフォーミュカーと変わらないフィーリングを持っているほどパフォーマンスが高い。アタック中はハコ車に乗っている感覚がないぐらい速いマシンです」と改めてインプレッションしている。
一方、ARTAで8号車「ARTA MUGEN NSX-GT」のステアリングを握る野尻智紀は「GT500クラスにデビューしたときからNSXで戦ってきたので、いろいろな思い出があるんですけど、チャンピオンを獲れていないので、どちらかと言うと悔しい思い出のほうが強いかもしれません。チャンピオンを獲れていないので、ぜひ、今年はタイトルを獲りたいと思います」とのこと。
そのうえで、NSX-GTのパフォーマンスについて「いまはGRスープラもZも小さくなって、ドラッグという部分ではNSXが多くてストレートスピードが稼ぎにくい部分はあると思うんですけど、ダウンフォースが強くてコーナリングスピードは高い次元で維持できるクルマですね」と分析する。
NSXがスーパーGTで戦うのは残り3戦。どのようなフィナーレを飾るのか、NSX伝説の最終章に注目したい。
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