約1年前、アメリカに次いでランボルギーのマーケットとして重要視される日本で、世界初お披露目となった「ランボルギーニ・ウラカンSTO」。モデル末期を飾るスペシャルエディションはまさにナンバーを取得できるレーシングカー。そのスーパースポーツを富士スピードウェイで試す機会を得た。
緊急事態宣言明け、少しだけ軽くなった心を慈しむように、あるショッピングモールを歩いているときのことだ。ちょうどシネマフロアに入ったとき『DUNE/デューン 砂の惑星』のポスターが目に入った。公開が始まったばかりだったが、描かれている壮大なる世界観やドゥニ•ヴィルヌーブ監督の演出などで、前評判の高いSF映画である。
「ペーパードライバー」から脱するにはどれくらい練習が必要か?
わずかな躊躇はあったが、観ることにした。アメリカのSF作家、フランク・ハーバートによる原作小説は1965年に単行本化され、SF映画の伝説的な作品とも言われている。あまりの壮大なストーリィが故に、映像化は無理ではないか、と言われながらも、これまでにテレビ版も含め、何度となく作品は世に出ている。
その中で1984年に、デヴィッド・リンチ監督が映画化に成功した『デューン/砂の惑星』があるのだが、それを観たことがある。白状するが『スターウォーズ』シリーズのような、ストレートなSF大活劇映画と言った期待感を抱きながら観たものだから、世間の評判ほどには、心に刺さらなかったのだ。感性が未熟だったのだろうが、その経験が最初の躊躇につながるのだ。それでも今度は時代も違うし、監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。その最新作に、違う感覚を得ることになるはず、と期待しながら作品と向き合ってみた。
いや~、心から大満足だった。3時間近くの長尺でも、若かりし頃に見逃してしまった壮大なる世界観の魅力に圧倒され、あっと言う間にエンドロール。監督が違うだけで……。いやそうではない。思い返せばデヴィッド・リンチ監督作品だって評価されるに値するクオリティだったはずだ。もう一度、そちらも観てみるか、などと考えたとき、ある事に気が付いた。多分、自宅で観るからDVDかぁ。2年近くも続いた自粛生活で、映画を楽しむと言っても自室のテレビがほとんど。音響もテレビ任せだったし、ご近所に配慮すれば、ヘッドフォンである。
それが今は久し振りの銀幕サイズに、最新のサラウンド音響。今、観賞直後に感じている高揚感を支えているのは、SF映画を楽しむには、まさに最善の状況があったから。作品の評価にこうしたバイアスが働いても、仕方がないかもしれない。やっぱり映画を思いっきり楽しむなら、相応な環境に限るのである。
改めてそんなことを思ったのは、この映画を観る数日前、「ランボルギーニ・ウラカンSTO(スーパートロフェオ・オモロガータ)」を、制限速度も対向車も歩行者も、何も気にすることなく、走らせたという事実があったからだ。STOというモデル名だが、要するにウラカンのレース車両として知られるスーパートロフェオEVOやウラカンGT3 EVOの「ストリートバージョン」といった意味で与えられたもの。まさにナンバーを付け公道を走れるレーシングカートと言っていい存在だ。
しかし、これほどのパフォーマンスを内に秘めながら、実際に走らせるのはアベレージ速度が時速30~40km/h程度の一般路。おまけに人混みや車群に包まれて、が現実である。そこに、このクルマのポテンシャルを試せる機会が訪れた10月某日、AQ編集部はブランニューのウラカンSTOを試す、「Huracan STO Driving Experience」と名付けられたイベントに参加、会場の富士スピードウェイに集合した。どこまでも晴れ渡った秋の空と富士山の美しいシルエットが出迎えてくれていた。
強烈に加速し、強烈に止まる
本来は、あるべき姿を、しかるべき場所で、ふさわしき人が楽しむからこそ、STOのようなスーパースポーツは、より輝きを増すもの。最高出力640PS、最大トルク565Nmの自然吸気V型10気筒エンジンを、車重1339kgの軽量ボディにぶち込んで後輪駆動で路面をかきむしりながら、0~100km/h加速3.0秒、0~200km/h加速9.0秒、そして最高速度310km/hというパフォーマンスを備えているのだから、当然である。ピットレーンに並んだSTOを観ながら唯一、引っかかることがあるとすれば、自分が“ふさわしき人”に値するかどうかだけであった。参考までに言えば、元F1ドライバーの鈴木亜久里氏を始め、GT選手権など活躍するドライバーたちも一緒に走るのである。
レーシングモデルのテクノロジーとノウハウをあますことなくフィードバックしたSTOには後方からルーフ上に延びるシュノーケルや3段階に調節可能な巨大なリアウイング、大きな開口部をもつボンネットやルーバー付きの、フロントフェンダー&フロントバンパーなど、レーシングカー同様の各種エアロパーツが付いている。当然だが空力面でもランボの最新レーシングテクノロジーが与えられているわけだ。
我々を待ち受けるSTOは、すでにインストラクターたちが純正指定タイヤとなったブリヂストンのポテンザタイヤを温めてくれていた。インストラクターを務める知人のレーシングドライバーが「このタイヤ、熱の入りが良くて、すぐに臨戦態勢になりますよ」と、にやりと笑いながら耳打ちしてきた。久し振りの富士スピードウェイ、その不安を見透かされたような気分である。
「ハイハイ、了解しましたよ」と平静を装いながら、リクライニング機構が備ったシートに体をねじ込んだ。ヘルメットを装着しているので、乗り込みでは頭をぶつけたが座ってしまえばその収まり具合は快適ですらあった。無骨なロールゲージも視界に入らないためノーマルのウラカンと見える景色は大きく変わらない。
いよいよインストラクターに続き、コースイン。3つあるドライブモードからまずメーカーから安定してサーキット走行可能と奨められた「トロフェオ」をセレクト。この他によりコンペティションな「STO」モードとウエットなどに対応する「PIOGGIA」がある。走り出したまず感じたのは後輪駆動としてのセンシティブなフィーリングだった。基本的にウラカンは大出力を4WDによって路面へと伝えていて、その操縦安定性は実に高く、サーキットでも安心して走れる。しかし今回の試乗車は、レースのレギュレーションに対応するためもあるようだが、リア駆動のみである。腕に覚えのあるドライバーに取っては、そんなところもSTOを操る魅力なのかもしれないが、それでも慎重を期す。いくら「トロフェオ・モードはESCの解除はなく、車両姿勢をコントロールさせる制御が働きます」と言われても、サーキットでの過信はしゃれにならない事態を繋がることもある。
だが、そんな抑制が効いていたのも最初だけ。意外なほどに快適なサーキット走行は周回を重ねるほど、アベレージ速度が上がっていく。最終コーナーを立ち上がり、アクセルを床まで踏み込んで強烈の加速でホームストレートを駆け上がると、エンジンが7千回転を越えた辺りから、さらに別の世界が広がったかのような加速を見せる。第1コーナー手前のブレーキングポイント直前では、メーター読みで時速270km/hに迫ろうとしていた。ここからは4輪カーボンディスクブレーキによる一気の減速だが、その減速の安定感は路面に張り付いているかのようで、ボディの姿勢は乱れることない。ペダルのフィールも良く、ストッピングパワーに不安はほとんどなく、極上とも言えるブレーキングだ。
「ああ、やっぱりレーシングカーにふさわしきは、サーキットか」と感じながら、充実したテスト走行を終えた。2013年12月にガヤルドの後継車種として登場以来、8年目を迎えるウラカン。今回のSTOがモデルを締めくくるファイナルエディションとも言われている。当然、新世代のベビーランボ(パフォーマンスは大人級だが……)が登場するとすれば、STOのDNAは受け継がれていくはず。例え電動化へのシフトが不可避とは言え、スポーツカーの壮大なる魅力までは消えることはないはずだ。
そんないま、『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編が2023年10月に公開予定と言うニュースを耳にした。良き物はしっかりと伝承される。来るそのときも、何の屈託もなく大きなスクリーンで存分に楽しみたいと願うばかりである。
ボディカラーの違う6台のSTOが参加者を待ち受ける。
新たに純正指定されたポテンザ。サーキット走行の「Race」と、ウエット路面にも対応する「Sport」の2つのトレッドパターンを用意。
ヘルメット装着は全開走行に近いサーキット走行時の鉄則。
エンジンフードの真ん中には黒いシャークフィンが装着。
よく見るとフェンダーとボンネットフードが一体成型されていることがわかる。まさにレーシングカーと同じ一体構造である。
3段階に調節可能なリアウィングスポイラー、リアのエンジンフードにはルーバーが切り込まれ、そしてシュノーケルを装備。
放熱性を高めるため、フロントフェンダー部分にもルーバーが切られている。
右ハンドル仕様も用意されていた。ペダル類のオフセットもあまり気にならなかった。
サーキット走行と街乗りの両方に対応できる、ホールド性のいいシート。
ドアの内画にもカーボンを張り巡らし、軽量化を徹底。
ホームストレートでは270kmに迫る速度を体験。
(価格)
41,250,000円(税込み)
SPECIFICATIONS
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,547×1,945×1,220mm
車重:1,339kg
駆動方式:MR
トランスミッション:7速AT
エンジン:V型10気筒DOHCツインターボ 5,204cc
最高出力:470kw(640PS)/8,000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6,500rpm
問い合わせ先:ランボルギーニ:0120-988-889
TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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みんなのコメント
公道サーキットモデルとしてはここ最近で最高の出来では?
ツインリンクもてぎの100Rをミッドラインから綺麗に処理出来てて凄かった。
来週のもてぎランボルギーニイベントもたのしみだ。