16代目クラウンの誕生を機に、あらためて各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」を紐解く特別連載企画。第2回は、1962年に誕生した第2世代「RS4#/MS4#型」をご紹介しよう。日本初のオールアルミV8エンジンも設定されるなど、高級車としてのポジションを高め始めたモデルである。(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より)
第2世代クラウンは、国産車随一の高級車路線を歩み始めた
7年もの長きにわたって初代クラウンは好調な販売を維持したが、基本設計の古さが目に付くようになった。そこで62年9月に初めてモデルチェンジを断行している。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
センセーションを巻き起こしたのは、伸びやかで美しいフォルムだ。T字型をモチーフにしたフロントグリルの幅いっぱいに4灯式ヘッドランプを並べ、ボディサイドには効果的にメッキのモールを配した。ドアは前後とも一般的な前ヒンジドアに改められている。
インテリアもワイド感を強調したモダンなデザインだ。インパネは高さを抑え、ドライバーの前にはスマートな横長のメーターを装備した。アメリカ車を模倣した初代モデルから一転して、独自の世界を築き上げたのが2代目のRS40型だ。精緻なプレス技術と相まって上質ムードが高まっている。
フレームは高強度のX型フレームだ。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアはスタンダードを除き、乗り心地のよいトレーリングリンクをおごった。
エンジンは今までと同じ3R型4気筒OHVだ。2種類のチューニングがあり、ミッションは3速マニュアルとオーバードライブ付きの3速、そして2速ATのトヨグライドを設定する。63年9月には3速MTがフルシンクロ化され、トヨグライドも全自動となった。
3R型OHV直列4気筒エンジンは、ボア×ストローク88×78mmで、総排気量は1897cc、圧縮比は8.0対1で、最高出力90ps/5000rpm、最大トルク14.5kgm/3400rpmを発生する。最高速度は140km/hをマークする高性能モデルだ。
メカニズム面での革新ポイントを挙げると、2バレル・キャブレター、ダブル・スプリング式バルブスプリング、ラバー・マウント式エンジン・サポート、ダブル・マフラー、コルゲート式ラジエーター等を採用している。
55年のマイナーチェンジでは3R-B型を新設定、デラックスの廉価版として新設されたオーナー・スペシャルに搭載された。クラッチは従来のコイルスプリング式を、放射状の円盤型スプリングのダイヤフラム式スプリングに変更した。
■トヨペット・クラウン DX(デラックス) オーバードライブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4610×1695×1460mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1265kg
●エンジン:直4OHV
●総排気量:1897cc
●最高出力:90ps/5000rpm
●最大トルク:14.5kgm/3400rpm
●トランスミッション:コラム3速MT+OD
●駆動方式:FR
●当時の車両価格(税込):110.0万円
高速化時代に対応した直列6気筒SOHCユニットが主役に
65年7月には、高速時代へ対応すべく新鋭エンジンを投入した。
M型とネーミングされた6気筒SOHCエンジンは、ボア×ストローク75×75mmのスクェア・タイプ、排気量1988cc。搭載モデルは「MS型」と呼ばれた。ボディ構造はRS型と変わらなかったが、パワフルなエンジンのおかげで最高速度は155km/hに向上している。
クロスフロー式吸/排レイアウト、半球式燃焼室、7ベアリング式クランク支持、シングル・ステージ・ダブルローラー・チェーン式カム・ドライブ──などの新メカニズムを採用。2バレル・キヤブレターをコンビしたM型は105ps/5200rpm、16.0kgm/3600rpmのパワー/トルク性能を発揮。
スポーツ指向のクラウンSには、SU型ツインキャブで軽くチユーンしたM-B型を搭載した。こちらは、オリジナルから+20ps、+0.5kgmアップした125ps/5800rpm、16.5kgm/3800rpmを発生。
4速フロアシフトとのコンビで、きわめてスポーティなフィーリングを演出。実際にクラウンSのカタログデータは、最高速度が165km/h、SS1/4マイルは18.5秒を達成していた。
スポーツ・カーとはいえないまでも、それに近い性格も、ある程度含まれているこのモデルには、独立したメーター類に加えて、タコ・メーターまであり、いわゆるパーソナル・カーとしていかにもクラウンの上級車らしい豪華なルーム・デザインが特徴的だった。
■インプレッションダイジェスト
エンジンのレッド・ゾーンはメーター上で6000rpmとなっているが、回転の上昇は極めて良く、多気筒型エンジン特有の振動の少ない豪快な加速感を味わうことができる。ギア・レシオは加速カーブ、あるいはギア比そのものからも判るように、1速と2速、3速と4速がそれぞれ接近しており、2速と3速がやや離れたものである。当然のことながら、1-2速における加速は強力だが、トルク変動の少ない多気筒エンジンに加えて、フラットなトルク特性は3-4速でも、加速力の低下といったものは見られない。3速の守備範囲は極めて広く、25km/hから130km/hまでをカバーする。コイルスプリングとトレーリング・アームを組み合わせたリア・サスペンションは、独立懸架に準じた構造でバネ下重量もオーソドックス・タイプに比較すれば、軽量化されているものと見られる。居住性の向上と共に走行安定性にも優れた特徴を発揮している。ブレーキはサーボ付きで前輪にはディスク式が装着されている。(池田英三)
■トヨペット・クラウンS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4635×1695×1460mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1280kg
●エンジン:直6 SOHC
●総排気量:1988cc
●最高出力:125ps/5800rpm
●最大トルク:16.5kgm/3800rpm
●トランスミッション:コラム4速MT
●駆動方式:FR
●当時の車両価格(税込):113.6万円
VG10型──日本初のV型8気筒エンジンを搭載、真のVIPサルーンへ
64年4月には日本初のV型8気筒エンジンを積むVIPサルーン、クラウン・エイト(VG10型)を投入する。ホイールベースを延ばし、トレッドを拡大してエグゼクティブ色を高めた。純毛のカーペットや高価な西陣織のパワーシートなど、内装も贅の限りを尽くしている。
クラウン・エイトは、基本的に今まで経験のないV8エンジンを採用し、その結果、ボディ、足回りともクラウン・デラックスを母胎にホイールベースでプラス50mm、トレッドをプラス160mmも拡大してバランスの取れた大型化が試みられた。
エイトを見て感じることは、真横からよりもむしろ正面から見た大きさである。すなわち、全長ではわずか110mmの延長に対し、全幅では150mmも大きく、1460mmの車高はクラウンと変わっていない。いっそう豪華に見える大きさになった。
さらにクラウン・エイトには、トヨタ自動車の技術陣が積極的に開発した新しい技術が数えきれないほど盛り込まれている。
まず、V型とネーミングされたエンジンは、ボア×ストローク=78×68mmというオーバースクェア・タイプで、総排気量は2599cc。バルブ形式はハイドリック式ラッシュアジャスター(いわゆるオイル・タペット)を組み合わすOHV式だ。カム・シャフトの駆動はサイレント・チェーンを採用する。ギア駆動のような騒音も解消される。
90度バンクのシリンダーは、軽量なシリコンとマグネシウムを含むアルミ合金製で熱膨張が少なく剛性が高い特徴を持つ。スチール・ライナーを内蔵する。シリンダーヘッドもブロック同様アルミ合金製だが、鋳造法はセミパーマネント・モールド法で製造される。クランクシャフトの支持は5ベアリングで、メタル材質は鉛ベースのホワイト・メタルを採用。
燃料供給は、日本電装が閲発したトランジスタ式電磁ポンプとオートチョーク付きの2バレルキャブレターを採用する。2バレル式といっても、2つのシングル・キャブを合わせたもので、両バレルとも、それぞれあらゆるエンジン状態の要求に応じられるようになっている。インテーク・マニホールドは、アルミ合金製で、エンジン冷却水により暖められ、良好な混合気を得るようになっている。
このアルミ合金を多用したV型エンジンの乾燥重量は152kgと発表されている。数値的には、1900ccの3R型エンジンより軽量なのである。なお、1965年7月のマイナーチェンジで、4速フロア・シフト仕様のVG10-A型と3速オーバードライブ付きコラムシフト仕様のVG10-C型もラインアップに加えられた。
■クラウン・エイト 主要諸元
●全長×全幅×全高:4720×1845×1460mm
●ホイールベース:2740mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:V8 OHV
●総排気量:2599cc
●最高出力:115ps/5000rpm
●最大トルク:20.0kgm/3000rpm
●トランスミッション:コラム4速MT
●駆動方式:FR
●当時の車両価格(税込):165.0万円
オマケ情報──第2世代クラウンが「走った」時代
■1962年(昭和37年)の出来事
・東京都が世界初の1000万人都市に。北陸本線・北陸トンネル(1万3869m)完成
・堀江謙-、ヨットで太平洋単独横断に成功
・戦後初の国産飛行機・YS11、初飛行
・米、キューバの海上封鎖を声明
・英国リバプールにてビートルズ結成
・植木等主演映画『ニッポン無責任時代』公開
・ファイティング原田がフライ級世界チャンプ
・鈴鹿サーキット完成。若戸大橋開通
・全日本自動車モーターショー入場者数百万人
・9月クラウンをモデルチェンジ(RS40型)
■1963年(昭和38年)の出来事
・初の日米テレビ中継でケネディ大統領暗殺
・着工から7年。黒部第四ダム完成
・『鉄腕アトム』『鉄人28号』『8マン』放映
・門司、八幡、小倉など5市が合併、北九州市発足
・坂本九『上を向いて歩こう』が米で100万枚突破
・『こんにちは赤ちゃん』『高校三年生』がヒット
・吉展ちゃん誘拐事件発生
・力道山刺殺
・名神高速道路一部開通
・大阪駅前に横断歩道
・第1回日本グランプリ自動車レース開催
・年間新車登録台数が100万台突破
■1964年(昭和39年)の出来事
・第18回オリンピック、東京で開催
・東京モノレール、東海道新幹線開業
・海外観光旅行自由化。団体観光ツアーがハワイヘ
・新潟地震発生。山陰・北陸地方に豪雨
・巨人・王貞治、ホームラン55本の日本新記録
・北ベトナムが米駆逐鑑を攻撃(トンキン湾事件)
・米原子力潜水艦・シードラゴンが佐世保港入港
・ローリング・ストーンズ、デビュー
・『平凡パンチ』創刊。VANがブーム
・首都高1号・4号線開通
・ホンダ、8月のドイツGPでF1に初参戦。
■1965年(昭和40年)の出来事
・米軍、北米開始
・ベ平連、初主催のデモ・東京教育大教授・富永三郎、教科書検定訴訟
・日韓基本条約調印。中国で文化大革命始まる
・プロ野球第1回ドラフト会議。堀内-巨人など
・日本航空、ジャルパック発売。シンザン5冠
・朝永振一郎、ノーベル物理学賞受賞
・美空ひばり「柔」で日本レコード大賞受賞
・名神高速道路全線開通。第三京浜開通
・トヨタ・スポーツ800発表(3月)
■1966年(昭和41年)の出来事
・ビートルズ来日。3日間で5回公演。前座はドリフ!
・日本の人口が1億人を突破
・丙午で出産数激減
・共和製糖不正融資・黒い露事件が明るみに
・五木寛之「青ざめた馬を見よ」が直木賞受賞
・『おはなはん』『ウルトラマン』放送開始
・『おそ松くん』『ハリスの風』魔法使いサリー』放映
・BOA機の空中分解など、航空機事故、相次ぐ
・国立劇場開場。日産とプリンスが合併
・日産自動車に
・トヨタ・カローラ(KE10型)発表
編集部註:掲載本文は1963年~1966年のモーターマガジン誌から抜粋しています。技術的表現などは、当時の表記を優先しています。画像の一部(トヨタ博物館所蔵の2台)は、写真:早川俊昭。
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素敵です。