ドイツの名門ブランドKWで仕上げるアバルト595
パーツメーカーやスペシャルショップが、自慢のアイテムや技術を惜しみなく投入しているのが「デモカー」。それぞれどんなコダワリを投入しているのか、そして実際のところ、純正スペックと比べて何がどう変わっているのでしょうか? 今回は輸入車チューニング界で大人気の「アバルト595」に、ドイツの名門KWのサスペンションを装備した橋本コーポレーションのデモカーに試乗してみました。
「アバルト595」の柔と剛を使い分け!? トライアルのストリート仕様とサーキット仕様を乗り比べました【デモカー試乗】
ニュルブルクリンクで鍛えられたKWサスペンション
KW(ケーダブリュー)とはドイツのサスペンションメーカー。ニュルブルクリンク24時間レースでも圧倒的なシェアを誇ることでも有名だ。特徴的なのはそのしなやかさ。ニュルはハイスピードでコーナリングし、アップダウンもめちゃくちゃ激しい。その上、縁石もめちゃくちゃ高い。しなやかでありつつも、しっかりとハイスピードでもボディの動きを抑えるという、相反する性能を両立させる必要があるという。
そこでKWでは多くのモデルで複筒式構造を採用している。フリクションロスが少なくしなやかにストロークしつつも、しっかりとダンピングさせるという性能を併せ持っているのだ。筆者はニュルブルクリンクは実際に見たことがないが、そこで鍛えられたKWには大きな期待を抱く。
以前にトヨタ「86」のKW装着車両に乗ったことはあるが、まさに上記のような味付けだった。しなやかで乗り心地が良く、ノーマルサスを上回る乗り心地ながら、しっかりと減衰力は効いていて、サーキットもストリートも気持ちよく走ることができた。
2WAY調整式のKW V3をアバルトに装着
このアバルト「595コンペティツィオーネ」は橋本コーポレーションのデモカーで、サスペンションは「KW V3」を装着。数多くのモデルがあるKWだが、本格的な車高調のスタンダードモデルがこのV3だ。減衰力は2WAY調整。伸び側を16段階、縮み側を12段階で調節できる仕組みとなっている。
一般的な車高調の減衰力調整というと1WAYが多い。これはダイヤルで伸び側と縮み側の減衰力が同時に変わるタイプなのだが、構造的に伸び側がメインに変わり、縮み側はそれほど変化がないことが多い。逆に言えば、縮み側を調節したくても、それ以上に伸び側の減衰力が大きく変わってしまう。
それを別々に調整できる2WAYは細かくセットが詰めやすい。縮み側とは、走りながら段差や継ぎ目を乗り越えてサスが縮められる場面や、ハンドルを切ったりブレーキを踏んだりしたときの反応に影響する。それと伸び側を独立して調整できるので、より好みに合わせやすいのだ。
そんな細かいことはわからないという方もいるかもしれないが、履いているタイヤによってマッチするサスペンションの性能は大きく変わる。タイヤに合わせて細かくセッティングできるのは、快適性とハンドリング向上に有効だ。
繊細な動きにもしっかり反応してくれる
今回は京都市内の市街地とワインディングロードで試乗した。このアバルト595コンペティツィオーネでは、タイヤはADVAN FLEVA 205/40R17を前後に装着し、ホイールは7JのOZレーシング ウルトラレッジェーラという組み合わせとなっていた。
乗ってすぐに感じるのが、ハンドル操作に対する応答の自然さ。ハンドルをわずかに切った時にサスペンションもわずかに縮む。そのときに動き始めからしっかりとその速さをコントロール(減衰)してくれる。減衰力が素早く立ち上がっているのだ。こういった場面であまり性能の良くないサスだと、ハンドル操作に対して減衰力が反応せず、クルマがわずかに遅れてグイグイと動くことがあるのだ。さすがKW、めちゃくちゃ細かい動きから反応してくれる。
乗り心地自体はどちらかと言えばスポーツ系。純正サスと同等かそれ以上の乗り心地のまま、スポーツ性能が引き上げられている感じ。もともとホイールベースが短く、サスペンションのストローク量も短く、ノーマルの乗り心地がきわめて厳しい車種である。それを大幅に改善してコンフォート仕様とまでには至らないが、スポーツ性能をアップさせつつ、乗り心地はやや良くなっている印象だ。
アバルト595をもっとコンフォート志向に仕上げたい人は、KW V3ではなく、純正形状サスなど他の選択肢を選んだ方がいいだろう。
ワインディングロードを走ると、その気持ちよさは一層高まる。しっかりとタイヤが路面を掴んでいる感覚が高まる。減衰力調整をしてその反応を見たくなるところだが、フロントの下側の調整とリアの調整は、どちらもタイヤを外さないとできないのが少し残念なところではある。
75-PERFORMANCEブレースバーの恩恵も大きい
また、このアバルト595には橋本コーポレーションのオリジナルブランド、「75-PERFORMANCE」のブレースバーが装着されていて、フロアトンネルをつないでいる。これが効果を発揮しているようで、ハンドルの切り始めからしっかりとボディが反応してくれる。小さなボディだが意外とびっくりするほど剛性アップの恩恵があるようだ。
マフラーは「tubi style」を装着。イタリア製の高性能マフラーで、音量はノーマルプラスアルファ程度でそこまで大きくない。高回転まで回したときにエンジン回転が落ちていくときの音が気持ちよくチューニングされていて、思わずエンジンを回してからエンジンブレーキを使いたくなる。
サスペンションとマフラー、ブレースバーだけで仕上げられたアバルト595だが、十分にその楽しさは引き出されている。サーキットとなるともっと攻め込みたい部分もあるが、街乗り+ワインディングがメインであれば、スポーティな乗り味とハンドリングを楽しめるはずだ。
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