レクサス「RC」は2014年に登場した全長約4.7mのミドルサイズのクーペだ。シャープな印象のルックスはデビューいらい、新鮮さを失っていないと感じていたが、2018年10月におこなわれたマイナーチェンジによって、“スピンドルグリル”と呼ぶフロントグリルやエアダムのデザインが変わった。あわせて、インテリアや走りの面も改良された。
搭載するパワートレーンは3種類だ。ひとつは3.5リッターV型6気筒エンジンを載せる「RC350」、2.5リッター直列4気筒エンジン+モーターのハイブリッド仕様の「RC300h」、そして2.0リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載する「RC300」だ。さらに標準モデルのほか、スポーティに仕立てた「F SPORT」、ラグジュアリーなインテリアが特徴の「version L」と、計3つのグレードを設定する。
わずかな改良で驚くほど進化した日本のフラグシップ──レクサス LS500h試乗記
今回試乗したのはRC300のF SPORTだ。245psの最高出力と、350Nmの最大トルクを発揮する1998cc直列4気筒ターボエンジンをフロントに搭載し、8段オートマチック変速機を介し、後輪を駆動する。
白状すると、最初は期待していなかった。いくらマイナーチェンジとはいえ、登場から4年を迎える少々古いモデルだ。
しかし、試乗してすぐに先入観は打ち砕かれた。想像以上に運転が楽しいし、よく走るのだ! しかも道を選ばない。高速道路と市街地、それにワインディングロードを走ったが、どの道でもファン・トゥ・ドライブであった。また、距離を重ねていくほどに好感が増すクルマでもあった。
たっぷりしたトルクは、1650rpmの低い回転域から最大に達する設定だ。したがって、走り出しから力強く、かつ、アクセルペダルを踏み込んだときの加速フィールが気持ちいい。
十分に速い加速性能であるが、決して暴力的ではない。おだやかにスピードをあげていく様相は、おとなっぽいスポーティさという表現が似合う。また、エンジンの応答性はよく、アクセル・ペダルの踏み込み量によってクルマをうまく自分のコントロール下においている感覚が味わえる。
今回のマイナーチェンジで、RC300が搭載する2.0リッター直列4気筒ターボエンジンはコンピューターのプログラムを見直したそうだ。スロットルの応答性を高めており、同時にターボチャージャーの過給応答性も向上させたという。
サスペンションも見直され、ダンパーが新しくなった。「ストローク速度がきわめて低い状態から十分な減衰力を持つところに特徴がある」と、レクサスは述べる。さらに、フロントのロワーアーム用ブッシュは従来に対し剛性を高めた。走行中の姿勢変化をより抑え、コーナリング能力を高めるためという。たしかに、これまでのモデルよりくいくいと気持ちよく曲がる。
運転すればするほど新型RCが「ドライバーをどう楽しませようか?」と、しっかり考え、各所をチューニングしているよう思えてきた。
ボディの空力も徹底的に見直されたという。ボディのアンダーカバー、バンパーダクト、ホイールハウス、リア・クオーターガラス下部のフィンなどは空力を高めるために新設計のパーツに変わった。「回頭性や直進安定性のさらなる向上」のためという。
SUV全盛のなか、RCのような走りを楽しませてくれるクーペを持つレクサスは偉い。販売台数を考えれば、これだけの改良を実施したのは高く評価出来ると思う。かつてトヨタ「ソアラ」に憧れた20~30代も、今では50~60代だから生活に余裕ある層も多いはず。そんなオトナに勧めたい1台でもある。
価格はRC300の標準モデルが556万円、version Lが603万円、今回試乗したF SPORTが608万円だ。クルマにおける”娯楽”とはなにか? を、あらためて教えてくれるモデルだった。
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