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三菱の商品戦略、大成功──新型デリカミニ試乗記

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三菱の商品戦略、大成功──新型デリカミニ試乗記

三菱のデリカシリーズに新しくくわわった「デリカミニ」を、渡辺敏史が試乗した。想像以上に良くできたスーパーハイトワゴンとは?

1万6000台の事前受注

愛車の履歴書──Vol21. 長谷川京子さん(後編)

三菱デリカのルーツは19660年代にまで遡る。“デリバリーカー”を名の由来とすることからもおわかりの通り、当初は商用車として親しまれてきたが、1980年代に四駆を設定してからは快適性や積載力などで自家用としても支持されるようになった。現在は車種統廃合などを経て、三菱のピープルムーバー全般を指す銘柄となっている。

シリーズの代表となる「デリカD:5」は3列シートで7/8人乗りのミニバンの体でありながら、全グレード四駆という独自色の強いものとなっている。これもまた、長年に渡るユーザーの支持によって辿り着いた構成だ。

デリカミニはまさにその、デリカD:5のタフなイメージをスーパーハイトワゴンにトレースしたような企画の軽自動車。おなじカテゴリーにはスズキ「スペーシア・ギア」やダイハツ「タント・ファンクロス」といった直接的なライバルがいるものの、“元ネタ”たるデリカブランドの強さにくわえて、四駆にまつわる動的ノウハウをしっかりフィードバックしているのが差別化の力点となるようだ。

販売は好調で、5月25日の販売開始以前に1万6000台の受注があったという。とりわけ四駆比率は6割に達するというから、お客さんの4WDへの期待値が伝わるところだ。

デリカミニは自然吸気かターボかというエンジンバリエーション、大きくは先進運転支援システムの有無という装備差で4つのグレード構成となり、全てで前輪駆動か四駆かを選択できる。

悪路走行のサポート機能としては、雪道などの低ミュー環境で発進時にスリップ輪にブレーキを掛けてグリップ輪側の推進力を高める「グリップコントロール」をはじめ、坂道発進時の車体の後退を抑えるヒルスタートアシスト、急坂道を下る速度を低速に保ってくれるヒルディセントコントロールなどが全グレードに標準装備だ。

くわえて四駆を選ぶと、ロードクリアランスをちょっぴり高める径の大きなタイヤが与えられ、悪路での快適性にも配慮した専用チューニングのダンパーも装備される。

内装はベースとなっている「ekスペース」の意匠や使い勝手に準拠するが、シートは専用表皮の撥水仕様と、アウトドア的な用途にマッチしたものが選ばれた。

また、上級グレードではシートバックとラゲッジボードに樹脂系素材を用いるなど、より手入れのしやすい仕様となっている。

安心感の高い乗り味ホンダ「N-BOX」を筆頭に、スーパーハイトワゴンは軽で1番の売れ筋カテゴリーとなっているが、理由は乗り込むと納得させられる。ともあれ広い。

デリカミニも後席は300mm以上のスライド量を確保しており、それを前側に寄せれば大きな荷物もまるっと飲み込むし、後ろ側まで引けば「マイバッハSクラス」もかくやのレッグスペースでふんぞり返ることも出来る。

運転するぶんにはあまり関係ない室内高だが、自転車を積み込むにしても、子どもを車内で立たせて着替えさせるには必要なもの。生活道具としての要求項目を忠実に満たし続けてきた挙げ句のかたちがこれともいえる。

そしてスライドドアも今やファミリーカーを求めるユーザーの大半にとってマストの装備だ。後ろに子供を乗せての開閉管理が楽だったり、たくさん買い物袋を抱えていても後席部にスムーズに積み込めたりと、1度使うともう離れられなくなるという。デリカミニは助手席側の電動スライドドアにジェスチャーでタッチレス開閉できる機能が標準で備わるなど、使い勝手にも抜かりはない。

試乗車のグレードは「Tプレミアム」。ターボユニットを搭載するトップグレードの四駆仕様だ。装備もてんこ盛りで重量は1tを軽く超えるとあって、動力性能はさすがに余裕綽々とはいかない。

エンジンの特性的にもごく低回転域のトルクが細く、発進時や加速時はエンジンがにぎやかにまわる。侵入音量は低めに抑えられているが、やはり回転の上下動がせわしない印象は拭えない。クルマのコンセプト自体が遠くに行きたくなるようなものだが、もう少しトルクに厚みがあってくれるとロングドライブの疲れにくさにも繋がるだろう。

逆に感心させられたのはシャシーの味付けだ。ちょっとした悪路での路面追従性や快適性を意識したという足の動きはふんわりと穏やかで、ちょっとした凹凸の乗り越えなどでも突き上げを感じない。もちろん本格的なオフローダーのように岩場やガレ場を走るようなキャラではないが、砂利道程度であればストレスなく移動できる。

一方でオンロードではロールやピッチといったクルマの基本的な挙動が適切にコントロールされていて、背高ボディでも安心感の高い乗り味に仕上がっていた。

特に感心したのはつんのめるような沈み込みが綺麗に押さえ込まれ、全体でギュッと沈み込むように安定している制動姿勢の出来の良さだ。高重心ボディにして、乗員を酔わせないように唐突な動きを抑えながらの運転が難しくないというのはなかなかの巧者であると思う。

デリカミニのヒットは約束されたようなものだ。

文・渡辺敏史 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

6件
  • 車は顔が命とわかった1台。私も買いました。納車が待ち遠しいです。
  • 三菱自動車の報告によれば、
    2022年度の国内販売  登録車: 17958台  軽自動車:16259台
    軽自動車が売れることは、ダイハツなら喜べるけど、三菱自動車は・・・・・?
    台数だけで喜んで良いのやら。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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