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こんなクルマはもう出ない… 奇跡の名車FD3SマツダRX-7の足跡

掲載 更新 10
こんなクルマはもう出ない… 奇跡の名車FD3SマツダRX-7の足跡

 マツダは今から60年も前からロータリーエンジンの開発に情熱を傾け、多くの名車を生み出してきた。その中でもっとも強いインパクトを与え、スポーツカーファンを魅了してきたのがRX-7だ。

 マツダは、東洋工業を名乗っていた1967年5月にコスモスポーツを発表し、発売している。コスモスポーツは、世界で初めて2ローターのロータリーエンジンを搭載し、量産に成功した流麗なスポーツカーだ。この系譜に連なり、走りのDNAを受け継いでいるのがRX-7で、生産を終了した今も世界中に熱狂的なファンを持つ。

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 残念ながら、脱炭素社会を目指し、自動車界にも電動化の波が押し寄せている昨今、このRX-7のようなロータリーピュアスポーツがこの先、新たに発売される可能性は非常に低い。ただこのRX-7についていえば、その船出からして厳しい社会情勢であった。だからこそ、当時を知る自動車ジャーナリストに、なぜマツダはRX-7のようなクルマを発売できたのか。その足跡と道程を紹介していただいた。

文/片岡英明 写真/MAZDA

【画像ギャラリー】初期型からスピリットRまで! 唯一無二のロータリースポーツ FD3S型RX-7の歴史を振り返る

■スポーツカー受難の時代にロータリーエンジンを復活させたマツダ

初代サバンナRX-7は1978年3月に誕生した。搭載される12A型2ローター・ロータリーエンジンはグロス値130psという高出力を発生する。Cd値は0.36と、空力性能も優秀だった

 1970年代、排ガス規制が始まり、続いてオイルショックにも見舞われ、日本を含む世界中の自動車界において、高性能エンジンを積むスポーツモデルにとっては暗黒の時代となった。

 パワーアップどころではなくなり、燃費が悪いロータリーエンジンも発売直後から消滅の危機に瀕した。だが、首脳陣とエンジニアは夢を諦めなかった。不死鳥のようにロータリーエンジンを甦らせようと企画したのが「フェニックス計画」である。エンジンの改良と熟成に情熱を傾け、走りの愉しさの追求にも意欲を燃やしたのだ。

 SA22Cの型式を与えられたサバンナRX-7の登場は1978年3月である。低いノーズにリトラクタブル式ヘッドライトを組み合わせたスタイリッシュなスポーツクーペで、エンジンは最新の排ガス対策を施しながらも充分にライバルを超える高性能を宿していた。

 だから日本だけでなく北米を中心に海外でもヒットを飛ばした。

1985年10月に発売されたFC3S型RX-7。搭載エンジンは13B-T型2ローター。翌1986年8月にはアルミ製ボンネットフードやBBS製アルミホイールを装備した300台限定の特別仕様車「アンフィニ」が登場した

 1985年秋には第2世代のRX-7(FC3S型)を市場に放っている。日本仕様のパワーユニットは、13B型2ローター・ロータリーにターボの組み合わせだった。走りのポテンシャルは飛躍的に高められたが、さらに刺激的な走りを目指し、特別限定車の「アンフィニ」を送り出している。

 このアンフィニの開発は、カタログモデルの性能を高めただけでなく、次の3代目RX-7(FD3S型)の軽量化やサスペンションのセットアップに大きな影響を与えた。RX-7はいずれも傑作だが、もっとも研ぎ澄まされたスポーツ感覚を身につけ、操って楽しかったのがFD3S型だ。開発がバブル期と重なったこともあり、開発予算も多く取られている。これも世界トップレベルのスポーツカーを生む力となった。

■ル・マン総合優勝の年にFD3S型RX-7が誕生

第59回ル・マン24時間レース(1991年)で総合優勝を果たしたマツダ787B

1991年10月発売のアンフィニRX-7。RX-7特有のロングノーズ&ショートデッキスタイルは今も全く色あせていない

 1991年6月23日、4ローターのレーシングロータリーを積むマツダ787Bがル・マン24時間レースで優勝を飾っている。

 日本の自動車メーカーとしては初の快挙だ。

 この偉業から4カ月後の同年10月、3代目のFD3S RX-7がセンセーショナルなデビューを遂げている。アンフィニ・チャンネルのイメージリーダーとなる高性能スポーツクーペとして企画され、マツダの技術の粋を集めて開発された。設計コンセプトは「REベスト・ピュアスポーツ」と名付けられた。

 零戦の設計思想を参考に、ボディからシャシーまでグラム単位で軽量化に挑む「コンマゼロ作戦」を実行し、量産車として世界トップレベルのパワーウエイト・レシオを狙っている。そのために試作から肉抜きに力を入れ、6度の軽量化を行った。最終的には100kgもの軽量化を達成し、もっとも軽いグレードのRX-7の車重は1250kgに抑えられている。

 それでいてボディやシャシーの剛性も高かった。

 ボディとホイールベースは2代目より短くされ、全高と重心も低く抑えている。逆に全幅とトレッドは広げられ、地を這うようなルックスとなった。曲面を基調としたキュートなフォルムが特徴で、心ときめくデザインだ。RX-7のアイコンとなっているリトラクタブル式ヘッドライトを受け継いでいるが、全てが新鮮と感じられる。今も色あせない、抑揚の強いフォルムは、のちのコルベットなどにも影響を与えた。

■熟成を重ねたFD3Sのロータリーエンジン

255psでスタートした13B-REW型エンジンは、4型で265psに、5型で280psにパワーアップ

 注目のパワーユニットは、大きく進化させた2ローター・ロータリーの13B-REW型だ。単室容積654ccの2ローターで、これに低回転時は1基だけ、高回転時は2基稼動させるシーケンシャルツインターボを装着している。

 最高出力は255ps/6500rpm、最大トルクは30.0kgm/5000rp。全域にわたって高効率の過給を行い、滑らかで力強い加速を実現していた。パワーウエイトレシオは4.9kg/psと、当時としては世界トップレベルにあった。トランスミッションはクロスレシオの5速MTと電子制御4速ATを設定する。

 サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンの4輪独立懸架だった。アーム類やリンクにはアルミ材を使用し、高い剛性を確保しながら軽量化を図っている。ロータリーエンジンをフロントミッドシップに搭載し、軽量で重心も低いからシャープなハンドリングを披露した。

 クルマはステアリングを切った通りに正確に向きを変える。限界は驚くほど高く、攻めの走りが似合うスポーツクーペだった。運転席に座った瞬間から「もっと速く走れ」とドライバーを急かせる。そんなクルマだった。

 無駄な動きのないシャープな走りが「FD」の最大の持ち味だった。ヒール&トゥを駆使して最適なギアを選び、ブレーキングもほどほどにステアリングを切り込んでコーナーを駆け抜ける。スムーズな走りよりもリズムに乗ったダイナミックな走りが似合っているのだ。

 だが、初期モデルと中期モデルは限界付近の挙動がピーキーで、油断すると一気に挙動が乱れる。乗りこなすには繊細なテクニックと大胆さが要求されるが、これが魅力のひとつでもあった。

■マツダのエンジニア魂がほとばしる珠玉の1台

RX-7タイプRS。写真は2000年9月以降に生産された6型

 FD3S型RX-7はマイナーチェンジのたびに進化を続けている。

 1995年春にリアスポイラーのデザインを変更し、大径のブレーキを採用した「タイプRZ」も加わった。1996年1月にはエンジンにメスを入れ、最高出力を265psにパワーアップしている。そして1998年12月にはついに自主規制枠いっぱいの280psに達し、最大トルクも32.0kgmに引き上げられた。

 シャーシを強化したファイナルバージョンが送り出されたのは2000年12月だ。

 人馬一体のシャープな動きとニュートラルなハンドリングを身につけた3代目のFD3S型RX-7は操る愉しさに満ちている。だが、2002年8月、排ガス規制への対応が難しいと判断し、RX-7の生産は終了した。

 代わって登場したのが、自然吸気のロータリーエンジンを積むRX-8だった。こちらも魅力的だったが、ターボで武装したFD3S型ほど刺激的ではなかった。いま振り返ってみると、FD3S RX-7が成立していたこと自体が奇跡的な出来事であり、この先ももうあんなクルマが量産型として普通に街のディーラーで購入でき、整備される時代は来ないのかもしれない。

 マツダのエンジニア魂がほとばしる珠玉の作品であり、数々の奇跡を生んだRX-7がFD3S型である。他のメーカーにはできない、直球勝負のピュアスポーツカーだった。

 難しいのは重々承知で、無理を言っているのは分かったうえで、「あの走り味」が脳に刻み込まれていて忘れられないファンのために、もう一度復活させて奇跡を起こしてほしいと願ってしまう。

2002年4月、RX-7最後の限定車「スピリットR」が発売された。写真は2シーター5速MT仕様のタイプA

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みんなのコメント

10件
  • ウチの青いFDも来月の車検で21年目。
    何度乗っても、何度眺めても、
    自分にとってこれ以上のクルマはないと確信する。
    こんなクルマを出してくれて、毎度面倒見てくれて、
    本当マツダには感謝しかない。
  • 運転席に座った瞬間から「もっと速く走れ」 初めて乗った時にすべての操作が追い付かず、そんなこと言われてるみたいでした。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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