駆動用バッテリーをTの字に搭載 航続447km
電動のオープン・スポーツは、テスラ・ロードスターが先行するだろうと予想していた。ところが、それを待っている間に、MGサイバースターの販売がスタート。マセラティからも、グランカブリオ・フォルゴーレが発表された。
【画像】早朝のイタリアが極上体験 マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ オープンEVは他にも! 全112枚
このグランカブリオのサイズは、サイバースターよりひと回り大きい。ラグジュアリーな雰囲気を漂わせ、大人4名が座れるキャビンも備わる。グラントゥーリズモ・フォルゴーレの、カブリオレ版だ。
マセラティによると、この2台は完全なゼロから設計されたという。アルファ・ロメオのジョルジオ・プラットフォームとは、まったく構造が異なるそうだ。
技術者は、当初からクーペとコンバーチブルを想定。内燃エンジンと電気モーターの両方へ対応することも、前提だった。
新プラットフォームで特徴となるのが、近年のバッテリーEVでは一般的な、スケートボード構造ではないこと。容量83.0kWhの駆動用バッテリーは、フロア部分に敷き詰められているのではなく、上から見てTの形に積まれている。
3基の駆動用モーターなども、内燃エンジン版のドライブトレインや燃料タンクが載る位置へ、巧みに収まっている。一方で航続距離は418-447kmと、近年のモデルとしては短め。バッテリーEVへ最適化されていないことが、理由の1つかもしれない。
それでも、電動システムは電圧800Vで制御され、急速充電能力は270kWと高速。最短18分で、残量20%から80%へ回復できる。アップデート後の、ポルシェ・タイカン級の性能ではないけれど。
キャビンはしっかり4シーター 荷室は狭い
インテリア・デザイナーは、かなり頑張ったと思う。斬新で風合いの良い選択肢が、複数用意されている。マセラティらしく柔らかい本皮も選べるし、不要になった漁業用の網を再生した、ナイロン・エコニール素材も選べる。カラーバリエーションも豊富だ。
キャビンは、しっかり4シーター。身長180cmの大人がリアシートで快適に感じることはないかもしれないが、ポルシェ911 カブリオレやフェラーリ・ローマ・スパイダーより遥かに広い。
そのかわり、荷室は狭い。ソフトトップを閉めた状態でも151L。開くと114Lになってしまう。
駆動用バッテリーがフロア部分にないため、運転姿勢はかなり低い。ポルシェ・タイカンのような、高めの目線は免れている。
インテリアを観察すると、フィアット500eの部品が流用されていることに気づく。特に、プラスチック製のシフトセレクター・ボタンは、価格相応のアイテムへ置換するべきだと思う。
ステアリングホイールの裏側には、巨大な金属製パドルがある。これは、半分の大きさでも良いかも。フォルゴーレでは回生ブレーキの切り替え用で、内燃エンジン仕様ほど頻繁に触れることはない。ちなみに、ワンペダルドライブはできない。
合計829ps 驚くほど敏捷なコーナリング
グランカブリオ・フォルゴーレに載る駆動用モーターは、合計3基。1基当たりの最高出力は407psだが、システム合計では829psへ制限されている。駆動用バッテリーが、それ以上の電力を供給できないためだという。
とはいえ、すこぶる速い。0-100km/h加速は2.8秒。アクセルペダルの反応は滑らかで、パワーを引き出しやすい。むしろ、むち打ちする勢いの加速力は不要だろう。
ブレーキペダルの感触も線形的で、効き具合を調整しやすい。連続するコーナーが、待ち遠しくなるほど。
アウディSQ8 e-トロンも3モーターで、トルクベクタリング機能も実装されるが、実際に楽しめる能力までは備えていない。テスラ・モデルS プレイドも同様だ。
しかしマセラティの味付けは絶妙。ステアリングホイールのセレクターを回すと、トルクベクタリングとスタビリティ・コントロールの効きを調整できる。
設定次第では、リアアクスルが回頭をアシストし、2340kgのボディを驚くほど敏捷に感じさせる。サイズがひと回り縮んだように思えるほど。充分な道幅があれば、動的能力を存分に発揮できる。
穏やかに公道を走らせれば、エアサスペンションがしなやかに伸縮し、乗り心地はスポーツカーとして例外的に優秀。ステアリングのレシオも直感的といえ、スムーズで狙い通りにフロントノーズを導ける。
段差を超えた時などに生じる、ボディの粗野な振動は最小限。少し速めのペースで駆け抜けるのが、最高に気持ちイイ。
高い理想を抱きたくなるオープン・マセラティ
ちなみに試乗車のボディカラーは、パーソナライズ・シリーズのフォーリセリエに設定される、オレンジ・デビル。非常に美しいが、悪魔級に高い。このシリーズの塗装色には、1万6000ポンド(約323万円)から3万ポンド(約606万円)の追加費用が必要だ。
荷室はだいぶ小さく、航続距離は強みとはいえず、英国価格は18万5610ポンド(約3749万円)から。この電動マセラティに、どの程度の需要があるのか、疑問がないといえば嘘かもしれない。
それでも、相当に魅力的なオープン・グランドツアラーだと思う。急速充電能力が優秀で、1度の充電でもっと遠くまで走れればと、高い理想を抱きたくなるほど。
早朝にソフトトップを開き、イタリアの湖畔を走らせるのは極上体験だった。V8エンジンのサウンドがないのは寂しいが、小鳥のさえずりを楽しめる。清々しい空気も存分に味わえる。スタイリングも、うっとりするほど美しい。
マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ(欧州仕様)のスペック
英国価格:18万5610ポンド(約3749万円)
全長:4959mm
全幅:1957mm
全高:1353mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:2.8秒
航続距離:418-447km
電費:4.1-4.5km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2340kg
パワートレイン:トリプル永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:83.0kWh(実容量)
急速充電能力:270kW
最高出力:829ps
最大トルク:137.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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みんなのコメント
イタリアの感覚でオマージュとして葉巻型GPカーモチーフのグリルはわかるが、
世界的におそらく9割の人にササって無いと思う。
せっかくレバンテで新たな怒り顔を築いたと思ったら、大人しい葉巻顔に逆もどり、
ウラカンですら怒り顔なのに売れるわけ無いって