2021年6月15日に、8代目となる新型フォルクスワーゲン ゴルフ、「ゴルフ8」が発表された。48V マイルドハイブリッド(MHEV)の搭載やデジタルコクピットの採用などがトピックとして注目されている。今回は、そのフルモデルチェンジ発表当日にフォルクスワーゲングループジャパンのティル シェア社長(以下、シェア社長)にゴルフ8の魅力をはじめ、GTIやR、ヴァリアント、アルテオンシューティングブレークなど、今後の展開についてMotor Magazine誌編集長の千葉が話を聞いた。
ゴルフ8は、ゴルフ7からも大躍進したシンプルで完璧なクルマ
千葉:ゴルフ8のトピックはたくさんあると思いますが、その中でも「ここは注目して欲しい」と思うところをいくつか挙げていただけますか。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
シェア社長:まずシンプルさが挙げられますが、デジタル化や電動化も大きなポイントです。「eアクティビティ」という電動化へのシフトしている中で、ゴルフ8に初めて48VマイルドハイブリッドのeTSIエンジンを2種類搭載することになりました。また、シンプルに運転していだだけることを目的に開発したデジタルコクピットも全グレードに搭載しています。
実は、私自身が乗っているゴルフ7は、完璧なクルマだと思っていました。しかし、それから比べても大きく進化したと感じています。おっしゃるとおり、ゴルフ8にはたくさんのトピックがあって、フォルクスワーゲンのイノベーションがいくつも投入されています。
千葉:ゴルフ7では、「トレンドライン」、「コンフォートライン」というグレード展開でしたが、ゴルフ8では「アクティブベーシック」、「アクティブ」、「スタイル」、「Rライン」に変わりました。今後もフォルクスワーゲンのモデル全体で、こうしたグレード名の統一が行われていくのでしょうか。
シェア社長:そうですね。しかし、この名称で統一するわけではありません。すでに導入している新型のパサートやティグアンの一部グレードには、「エレガント」を使用しています。名前がキャラクターを表すようなグレード名をそれぞれ使用しています。
また輸入車ですので、注文いただいてから日本に届くまである程度の時間が必要です。そのため、お客様の手元にクルマが届くまでに、どのようなクルマかイメージしやすくなるという意味でも、こうしたネーミングはメリットなのかなと思います。
ただ、今回の4グレードで全部かというと、必ずしもそうではありません。たとえば「GTI」のようなスポーティモデルが日本で強く求められているのは理解しています。それは2021年後半の導入を考えておりますし、「R」ももちろん検討中です。フォルクスワーゲンの多様なお客様に、多様な選択肢を提供したいです。
千葉:「GTI」と「R」の話が出ましたが、そのほかにゴルフシリーズでは「ヴァリアント」、「オールトラック」があります。日本への導入時期、また「ヴァリアント」の48V MHEV搭載モデルの導入についても教えてください。
シェア社長:「ヴァリアント」は日本にいずれ来ることになると思います。走行性能と環境性能をともに高めていくことが48V MHEV搭載の理由ですので、前向きに検討中です。また、「オールトラック」の導入についてはまだ検討段階です。
千葉:「ヴァリアント」はいつ頃導入の予定ですか。「GTI」より前ですか、後ですか。
シェア社長:「ヴァリアント」は2021年の夏の終わりぐらいです。その後、秋になって「GTI」というスケジュールになると思います。
千葉:今回、ゴルフ8は48V MHEVの搭載が大きなトピックだと思います。その効果は大きく、先日試乗したときゴルフ7と比べて進化幅はかなり大きいと感じました。ただ、言葉で「48V MHEVです」と説明しただけでは、この効果を実感することは難しいと思います。その理解を深めるためにはゴルフ8に試乗してもらうことが重要であり近道だと思いますが、フォルクスワーゲングループジャパンとしての施策はありますか。
シェア社長:ゴルフ8の進化を感じていただけて嬉しいです。お客様にその良さを知っていただく方策、いわゆるリテール活動と言いますが、私は現場感覚を重視していますのでパートナーやディーラーに足を運んで、直接対話することが重要だと思っています。
そしてディーラーに十分な試乗車や展示車を供給しなければなりません。フォルクスワーゲンブランドのディーラーは全国で248店あり、ショールームに車種を揃えてお客様に見ていただき、十分な台数を用意して試乗していただきたいと思っています。
もちろんコロナ禍において、しっかりした安全基準を守ったオペレーションを行っています。ショールームに来ていただくにしても、試乗していただくにしても、安全をしっかり確保していることはお伝えしたいところです。
クルマの買い方はインターネットがここまで普及する前は、ディーラーに何度も足を運んでようやく契約するという感じでしたが、今ではオンラインでチェックして、クルマの詳細を知った上でディーラーにいらっしゃいます。だからこそ試乗していただき、違いを感じていただくのがとても重要だと思っています。
千葉:ゴルフ8の革新的インテリア、とくに大幅にデジタル化された点に注目しています。今後もフォルクスワーゲンとしては、こうしたデジタル化も48V MHEVと同様に主力となっていくと考えていいですか。
シェア社長:はい、そのとおりです。ゴルフ8は前世代と比べると大進化を遂げ、そこが大きな違いになっています。この後、アルテオンやティグアンをはじめとする他の車種にも導入され、今までとはまったく違う世界が展開されるでしょう。
千葉:ゴルフ8から少し話は逸れますが、日本での販売はコロナ禍や半導体不足の影響もあって少し苦戦しています。大きな理由はクルマが供給されなかったことだと思います。これから挽回のステージに入ると思いますが、そのための具体的な方策があればお聞かせください。
シェア社長:おっしゃるとおり2020年から2021年前半は供給面でとても苦労しました。コロナ禍による工場の操業一時停止により、いくつかの車種は品切れを起こしたこともありました。しかし2021年後半は5種類のモデルの投入をします。この数はこれまでなかったことです。
今回のゴルフ8とすでに発表しているパサート、ティグアン/ティグアンR。そして今後の登場を予定しているアルテオンとアルテオン シューティングブレークは、日本でも注目いただけるのではないかと思います。2017年の東京モーターショーで好評を博したこともあって、とても楽しみにしています。
またパサートのプラグインハイブリッド(PHEV)版も秋に投入します。コロナ禍が落ち着き、半導体の供給も安定していることが前提ですが、きっとフォルクスワーゲンブランドを牽引してくれると期待しています。
千葉:フォルクスワーゲンファンは日本に多く、まだまだ売れるポテンシャルを持っているブランドだと思っていますので今後に期待しています。最後の質問ですが、気になるピュアEVの「iD.」シリーズの導入はいつ頃になるのでしょうか。
シェア社長:日本で販売されたピュアEV(電気自動車)の台数は、2019年に約2万5000台ほどでしたが、2020年は約1万8000台にまで落ち込みました。これはおそらく市場に対する製品のオファーが減ってしまったということだと思います。
しかし、世界を見わたすと急速に伸びている国もあります。その理由は、まずは製品のオファーがしっかりしているということ、それから充電設備を含むインフラ整備、政府による助成金もあると思います。
フォルクスワーゲンはこれまで、ピュアEVの「e-ゴルフ」でお客様からの反応をお聞きし、今回のゴルフ8でMHEVを提供、さらに今秋のパサートにPHEVを導入、2022年にiD.シリーズを投入したいと考えています。その頃には日本での充電インフラもさらに強化されていると思います。
環境が整えば、ピュアEVの需要は高まってくると期待します。国や地域によっては2030年、2035年に向けてEVシフトするという目標達成を表明していることもあり、市場はピュアEVに向けて活性化すると思います。フォルクスワーゲンも今後はiD.シリーズでピュアEVのラインナップの拡充を図っていこうと思っています。
[ アルバム : フォルクスワーゲン グループジャパン ティル シェア社長インタビュー はオリジナルサイトでご覧ください ]
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