■2018年の北京モーターショーではパクリ車が姿を消した!
中国車と聞いて皆さんはどんなことをイメージしますか? パクリデザイン、安くて壊れやすい、時代遅れのダサいスタイル、安全性能など皆無…。あまり良いイメージを持っていない人が多いかもしれません。筆者(加藤久美子)も少し前まではそうでしたし、事実中国車にはそんな時代も長かったです。しかし、中国は今や年間2888万台もの新車が販売される世界最大の自動車市場です。ひと昔前のネガティブな中国車のイメージは、驚くべきスピードで消え去っているのです。
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2018年のオートチャイナ(通称:北京モーターショー)に行って驚かされたのは、2017年の上海モーターショー会場にはまだ数台あった、ドイツ車や日本車に似せた、いわゆる「パクリ車」が見当たらないことでした。
目立っていたのは、やたらとカッコいい中国メーカーの出展車です。未来的で洗練されたデザインではありますが、いずれもどこかに、オリエンタルなテイストを残しています。まず何台かご紹介します。
●正道集団(ハイブリッド・キネティック・グループ)のコンセプトカー
正道集団は香港の企業です。北京モーターショーには3台のコンセプトモデル「HK GT」「H500」「K350」を出展しました。3車とも正道集団が開発した電動パワートレインを搭載し、H500の航続距離は1000キロ超。これらのクールな車をデザインしたのは、フェラーリやアルファロメオのデザインでおなじみ、イタリア最大のカロッツェリアであるピニンファリーナです。その名を聞くと、カッコよくて当然と言ったところでしょうか。
正道集団はこの3台をはじめ、複数のコンセプトカーを発表していますが、いずれも単なるコンセプトカーではなく、2020年頃から市販車として生産することが発表されています。
●BYD汽車 王朝シリーズ「秦」
車名からしてオリエンタルな車です。BYD汽車はバッテリーBYDの子会社となるEVメーカーで、秦や唐、元など中国にかつて存在していた王朝を車名にしているのが特徴。世界的には電気バスが有名で、2階建てロンドンバスにもBYD製バスが採用されており、日本でも沖縄では港湾ターミナル送迎バスとして、京都では路線バスにも採用されています。
●Lynk & Co「01」
リンクアンドコーは、ボルボ社とその親会社である中国最大の自動車メーカー「吉利(ジーリー)」によるコラボブランドです。「01」は2017年に発売され、「137秒で6000台を受注」した世界的な記録を持つ車として話題を集めました。ボルボXC40をベースに外装デザインはボルボの著名デザイナーが担当しています。
● 駿派(ジュンパル)CX65
ジュンパルは、天津一汽夏利汽車の若者向けブランドです。これまで「ジュンパイ」や「ジャンパー」など英文字表記でのブランド名が定まっていなかったのですが(中国の老舗メーカーによくある傾向です)最近になって「ジュンパル」を名乗ることに決まったようです。
「夏利」とは、実は1980年代から中国で生産していたダイハツ・シャレードのことで、中国生産のトヨタ車との関係も深い会社なのです。
■日欧米のカーデザイナーやレーシングカーデザイナーがデザイン
前述で紹介した車のように、最近の中国車は海外メーカーのデザイナーや技術者を招き入れたり、ピニンファリーナをはじめとするカロッツェリアにデザインを依頼したりというパターンが圧倒的に増えています。
とくに、中国のリッチなユーザーはドイツ車がお気に入りなので元アウディのデザイナー、元メルセデス・ベンツのデザイナーと言った実績のあるスタッフを積極的に採用しています。
2018年2月、MINIの電気自動車生産についてBMWと提携を発表した長城汽車にも多数の日本人デザイナーが在籍しており、日産自動車でブルーバードシルフィなどのチーフデザイナーであった中島敬氏もその一人です。中島氏は現在、長城汽車でエグゼクティブ・デザインディレクターデザイナーを務めています。
それでは、中国メーカーのエンジニアは、パクリデザインの車が激減したこの傾向をどう思っているのでしょうか?
北京モーターショーの会場で中国老舗自動車メーカー、第一汽車のエンジニアに話を聞くことができました。
「中国の自動車オーナー、特に富裕層と呼ばれる人たちは中国メーカーのパクリ車を非常に忌み嫌っています。パクリ車自体もそうですし、そのような「偽物の車」に乗る人達のことを中国の恥だと思っています。それが最近は庶民の間にも浸透しつつあるように思います。
また、近年は新しい自動車ブランドに顕著ですが、外装デザインを日欧米のデザイナーに丸投げして、若者ウケするカッコいい車を作る傾向があります。しかし私たち第一汽車のような古くからある自動車メーカーにおいては、丸投げはほとんどありません。
中国最初の国有自動車メーカーとしての歴史やプライドがありますので、外国人デザイナーとうまくコラボして中国車らしさも極力残すようにしています。例えば、駿派(ジュンパル)CX65という車ではフロントが欧州メーカーで活躍した著名デザイナー、リアを自社でデザインしています」(一汽豊田エンジニアI氏)
■中国車のデザインはよくなったけど安全性はどうなの?
ここで気になるのは、中国車の安全性ですが、こちらも急激な進化を遂げています。世界的に高い安全性で知られるボルボとメルセデス・ベンツの2ブランドも現在、中国メーカーと深い関わりがあります。
ボルボは中国最大の自動車メーカー(吉利GEELY)の傘下に入っていますし、GEELYはまた、2018年よりメルセデス・ベンツをつくるダイムラー社の筆頭株主にもなっています。安全性に高い配慮をする車作りが中国車のスタンダードになりつつあるのです。
また、これら3社と全く関係がないブランドですが、世界で最も厳しい自動車安全テスト「ユーロ・NCAP」で圧倒的な結果を残している中国車があります。奇瑞汽車QOROS(クオロス)「3セダン」がその車で、2013年にテストをしたすべての車の中でなんと1位。同クラスのレクサス「IS」やメルセデス・ベンツ「CLA」よりも好結果を残しているのです。
これまで真似ばかりをしてきた中国車ですが、急激な進化を遂げ、外見だけでなく中身もしっかり進化し、世界トップレベルのクルマを世に送り出してきているのです。
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