新車試乗レポート [2022.04.01 UP]
新型WRX S4公道インプレッション
リアルワールドで実力検証
プロトタイプ試乗を既にお届けしたWRX S4。
ようやく公道試乗の機会が巡ってきた。
スバルのハイパフォーマンス4WDの旗頭となるスポーツセダン、
その真価に迫る!!
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
快適? 楽しい? これが新型の実像だ!!
SUBARU 新型WRX S4
STIスポーツR EX
●車両本体価格:477万4000円
●ボディカラー:セラミックホワイト
■主要諸元(STIスポーツR EX) ※オプションを含まず
●全長×全幅×全高(mm):4670×1825×1465 ●ホイールベース(mm):2675 ●車両重量(kg):1600 ●パワートレーン:2387cc水平対向4気筒DOHC直噴ターボ(275PS/38.2kg・m) ●トランスミッション:CVT ●WLTCモード燃費(km/ℓ):10.8 ●燃料タンク(ℓ):63(プレミアム) ●サスペンション(前/後):ストラット式/ダブルウィッシュボーン式 ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(前後) ●タイヤサイズ:245/40R18
高性能だがヤセ我慢不要、快適だ
全開では高性能スポーツ
普段は穏やかなセダン
最高出力275PSの2.4ℓターボを搭載。ホイールアーチを覆うクラッディングパネルといかにもな空力造形。スペックも見た目もやる気満々のリアルスポーツなのがWRX。それがこけおどしでないのはサーキット試乗で確認したが、その特徴は往々にして生活の場では短所を生み出しやすい。そこはマニア心で納得するしかないか、と思っていたのだが……。
納得も何も、ツーリングは意外なほど快適である。電子制御ダンパーはコンフォート/ノーマル/スポーツの3モードで制御され、それぞれドライブモードに対応。スポーツ(スポーツ+モード)選択時はストロークを抑えた硬さを意識させられるが、コンフォート(ノーマル/コンフォートモード)では段差等の突き上げを程よく往なすしなやかさを示す。乗員をさいなむような硬さや振動が抑えられ、揺れ返しは少なく据わりもいい。乗り味の質感も悪くない。加減速や横G、車速に応じた減衰力制御も適切であり、良質な乗り心地と確実な操縦性を幅広い状況で維持する。標準サスよりまとまりがよく、STIスポーツRのコンフォートはWRXで最も乗り心地に優れたセットでもある。
元々柔軟なドライバビリティを軸に開発されたパワートレーンの扱いやすさもフットワークの特性によくマッチしている。大トルクかつコントロール性のいい回転域が広く、駐車場の取り回しから高速道路での追い越し、山岳路の加減速など多様な状況で扱いやすい。全開に近い領域では高性能スポーツらしく、普段使いでは悠々の余力の穏やかな実用セダンとして振る舞う。パワートレーンの特性を知って乗りこなす、なんてことは考えなくていい。大技も小技も自在、柔軟で不得手がないタイプ。付け加えるなら高回転まで回してもエンジン音やエンジン回転感覚に威圧感はなく、速さに比べて騒音も控え目なのも長所のひとつ。
ただ、外観の印象に比べて走りの迫力を欠くとも言える。ドライブモードをスポーツ+にセットしてもマニアックなスポーツセダンにしては穏やか。迫力とか昂揚感を求めると薄味過ぎるかもしれないが、高性能の演出より高性能の使い方、あるいは速さの維持に掛かるストレスを極力抑える、換言すればスポーツ性能の本質を求めた結果でもあり、ひと昔前にスバルが謳った「全天候500マイルツアラー」の理念とも合致している。スポーツもツーリングも良質な走りが楽しめるモデルである。
●2.4ℓ水平対向直噴ターボ“DIT”
FA24型ターボエンジンはピークで爆発力を売りにするタイプではない。アクセル操作への即応性と幅広い領域での豊かなトルク供給により、ドライバーとの一体感を追求している。
【IN CIRCUIT】プロトタイプ試乗会
WRX S4プロトタイプ試乗会@袖ヶ浦フォレストレースウェイ
ツウも納得! 走行ラインも
車体姿勢もコントローラブル
スリップアングルが深くなっても高いトラクションを維持しやすいのが4WDスポーツの長所だが、WRXのサーキット走行はそんなじゃじゃ馬馴らしではなく、もっと洗練されたもの。回頭を的確に抑えて弱アンダー領域を維持しやすく、若干イン側に切れた操舵角の4輪ドリフトに持ち込むのもそれほど難しくない。ラインと姿勢のコントロール性ではどの回転域でも太く制御しやすいトルクを発生するエンジンの効果も大きい。高性能に翻弄されることもなく、自分の求めるコーナリングを実現するためのツールを豊富に揃えているのが印象的。ツウ好みの走りとも言える。
【同じ2.4ℓターボでどう違う?】vs レヴォーグ STIスポーツR
レヴォーグ STIスポーツR
STIスポーツR同士なら
大きな違いは感じられない
サーキット試乗で乗り比べた時に、基本特性はほぼ同じながら、身のこなしはレヴォーグが若干緩く感じられた。ワゴンボディのためと早合点しそうだが、サスチューン自体がWRXのほうが硬めとのこと。公道試乗でもWRXのほうが乗り味が硬めかと思ったが、実際はそう目立った違いは感じられなかった。この辺りは電子制御ダンパーの効果が大きいのかもしれない。標準サス仕様で乗り比べればはっきりとした差が出るかもしれないが、STIスポーツR同士ならば、走り云々よりボディ違いの好みや実用性で選び分ければいい。どちらも一級のスポーツ&ツアラーなのだ。
エクステリア
'17年の東京モーターショーで注目を集めた「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」を忠実に再現。“Aggressive”をテーマに、ハイパフォーマンスカーらしい迫力を持たせている。
ホイールはGT系がガンメタ、STI系は切削光輝。245/40R18の専用タイヤを履く。
インテリア
インテリアも当然スポーツ志向。EXの大型センターディスプレイに象徴される先進感と相まって、ドライバーの気持ちを高めてくれる。ホイールベース拡大により居住性も向上。
EXは11.6インチのセンターディスプレイを標準装着。他のグレードはセットOPだ。
メカニズム&装備
●スバルパフォーマンストランスミッション
VTD(可変トルク配分)センターデフを継承しつつ、シフトダウンを50%、シフトアップを30%高速化。8速固定ギヤ制御やオートブリッピング制御を備え、耐久性も向上した。
ボディフォルムに加え、各部の空力処理を徹底。樹脂外装パーツの表面には空気の剥離を抑制するハニカム状のパターンを施す。
●SGP+フルインナーフレーム
パネルや構造用接着剤を適所に使用し、SGPの強固な骨格の剛性をさらに高めている。
●フロントサスペンション
●リヤサスペンション
●電子制御ダンパー
4輪独立懸架のサスはロングストローク化され、SGPの効果もあって乗り心地や静粛性が向上。STI系はZF製の電子制御ダンパーを採用、好みに応じてキャラ変が可能だ。
●シンメトリカルAWD
重量バランスに優れる4WDシステムは、ボクサーエンジンと並ぶスバル車の技術的支柱だ。
●アイサイトX
高速道路などでの渋滞時ハンズオフが可能なアイサイトXは「EX」にのみ搭載される。
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