フルモデルチェンジした新型ホンダ「アコード」に今尾直樹が試乗した。今や、“アメリカ育ちの日系アメリカ車”とも言うべきモデルとなった最新アコードの魅力に迫る。
3代目アコードを思い出す
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本年3月に発売された新型アコード、1976年の初代から数えて11代目に都内で試乗した。ファストバックのシルエットは先代似だけれど、顔が違う。メッキのないグリルにワイド感を強調した新型は、「シビック」の大きなお兄さん、という感じ。プロのバレーボールとかバスケットボールの選手みたいな雰囲気もある。長身で、スッキリ爽やか。でも、ひとクセある、といいますか。
運転席に乗り込むと、着座位置がスポーツカーみたいに低い。先代もこんなに低かったっけ? 記憶にないのは、私は試乗していないからでした。
思い出したのは1980年代半ばの3代目。リトラクタブル・ヘッドライトに、4輪ダブル・ウィッシュボーンの足まわりを備えた革新的なモデルだ。あれからおよそ40年。アコードの伝統は脈々と生きている……のかもしれない。
日本仕様のパワーユニットはホンダ独自のハイブリッド、3モーターのe:HEVのみ。本革仕様のモノグレード1本、と、車種構成は潔い。価格は544万9400円と、トヨタの「クラウン・クロスオーバー」の中間グレード並みだ。
ハイブリッドの進化走り出すと、めちゃくちゃ静かである。首都高湾岸線から環状線へ向かう辰巳PAで乗り換えて、いきなりの高速巡航だけれど、エンジンは始動していない。もしかして始動して発電していたかもしれない。私が気づいていないだけで。
ホンダ独自のハイブリッド、e:HEVは発電用と駆動用、ふたつのモーターを備えているところが特徴で、シンプルに役割分担しているから効率がいい。というのがホンダの主張だ。電池に電気エネルギーがある限り、エンジンは始動せず、EV走行する。その範囲が新型では広がっている。筆者の記憶のなかの2世代前のモデルとの比較ですけれど。
ドライバーがアクセルを深々と踏み込み、これでは電気が足りない。と、車載のコンピューターが判断するや、エンジンが始動して発電し、モーターで走るより効率がよい高速巡航時にはエンジンと前輪との間にあるクラッチを繋いで、エンジンで走る。
e:HEVのスペックを先代と比較すると、次のようになる。まず、新型のLFD型2.0リッター直4DOHC、自然吸気、アトキンソン・サイクルは、最高出力147ps/6100rpmと最大トルク182Nm/4500rpmを発揮する。先代のLFB型はそれぞれ145ps/4500rpmと175Nm/3500rpmだったから、より高回転、高出力型になっている。
駆動用モーターは、184ps/5000~6000rpm、315Nm/0~2000rpmから、184ps/5000~8000rpm、335Nm/0~2000rpmに。最高出力の数値はそのままで発生回転域が広がり、最大トルクは20Nm分厚くなっている。モーターの型式は旧型のH4から新型ではH6に。ということは、違うものが使われている。
2830mmのホイールベースとフロントのトレッドの1590mmは同じ。前ストラット、後ろマルチリンクのサスペンション形式も同じだ。1580kgの車重は先代比20kg増し。主因は、伸びやかなスタイリングを実現すべく全長が75mm伸びているからだろう。成長すれば重くなるのは自然の理。全長5.0mまであとちょっとのこのサイズにしては軽い部類だ。
動力用のリチウムイオン電池は同じまま、エンジンとモーターの出力をあげれば、燃費に影響しそうだけれど、WLTCモードは先代の22.8km/Lから23.8km/Lに向上している。その秘密は、ハイブリッドのマネージメントにあると考えられる。「スポーツi-MMD」と呼んでいたアコード・ハイブリッドの発売は2013年だから、かれこれ10年。他社同様、わかってきたことも多いはずで、いつエンジンを始動して、いつ停止するか。バッテリーに電気エネルギーをどこまで蓄え、どこまで放出するか。そういう知見をホンダも蓄えている。
筆者の記憶によれば、先先代アコードのハイブリッドは、電池が空っぽになると明瞭なパワーダウンが感じられた。新型アコードではその気配がない。エンジンは音も振動も出さずに始動する。おまけに上まで回してやると、DOHCらしい快音を発する。アトキンソン・サイクルとしては珍しい。
ニッポンの常識にとらわれない乗り心地はハイウェイでは快適だ。ロードノイズも低い。一般道だと、多少ゴツゴツ感がある。可変ダンピングのモードをコンフォートにしても、235/45R18という低扁平サイズが勝る。スポーツモードを選ぶとボディ全体の動きが小さくなり、ステアリングは重くなって、エンジン音が活発になる。“アコードはやっぱりこうでなくちゃ”と、感じてしまうのは、筆者が時代遅れだからである。現代のアコードは静かで、ときにスポーティ。アメリカナイズされた図体はデカいけれど、後席は広い。ファストバックゆえ頭上空間はミニマムだから座高の低い人向けではある。
時代遅れの筆者は、1980年代の後半、アメリカで3代目アコードに乗ったときの驚愕が忘れられない。レンタカーのシボレー「カプリス」だっただろうか、それから乗り換えたら、まるでスポーツカーに思えた。ゆるゆるのお座敷列車みたいな、ま、そこがいいわけですけれど、アメ車とは違って、ニッポンのアコードは、ステアリングが正確で、乗り心地はフラットで引き締まっていて、つくりが端正で、すごいぞ、ニッポン! と、誇らしく感じた。
そんなアコードはアメリカ人からも愛され、1990年代にはベストセラー1位の座を何度も獲得。過去40年間の全米の販売台数で、フォードFシリーズ、シボレー「シルバラード」に次ぐ第3位、アメリカで最も売れたセダンという栄誉が与えられている(出典:ホンダ北米法人発表)。
SUV全盛の現在にあってなお、2022年11月にアメリカで発売された11代目アコードは翌23年、19万7947万台が販売され、ベストセラー・トップ20の17位にランクインしている(出典:Motor1.com)。
日本市場はというと、月販200台というのがホンダの販売計画で、ということは年間2400台にすぎない。2023年度の輸入車の統計(出典:JAIA)に当てはめると、BYDの2026台よりちょっと多い程度。日本向けの新型アコードは先代同様、タイ生産だから輸入車ではある。
東南アジアでつくられているとはいえ、アコードはいまやアメリカ育ちの日系アメリカ車と捉えるべきだろう。そういう新型アコードを受け入れるニッポン人は、ニッポンの常識にとらわれない“コスモポリタン”と、呼べるかもしれない。コスモポリタンが月に200人もいるとすれば、ニッポンも捨てたもんじゃない。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
ホンダに見捨てられた市場だけど、って意味か?
HONDACARSのディーラー行っても、展示車は「ステップワゴン」「N-BOX」「FREED」しかありませんがね(笑)