ドイツ・ビッグ3の牙城を崩せるか
スーパーサルーン市場は今までと変わらず小さいが、その競争は熾烈だ。ドイツのビッグ3が強力なプレゼンスを持つことに変わりはないが、数年前ほど支配的ではなくなっている。厳しくなる排出ガス規制により、他のブランドにもチャンスが広がっているということだ。
スーパーサルーン3台 計1861psの直接比較 新型BMW M5 vs AMG E63 S vs キャデラックCTS-V 前編
ここ数年の間、このセグメントへのアルファ・ロメオの回帰が目立った。ジュリア・クアドリフォリオは素晴らしいスポーツサルーンであり、他にも登場の気配を見せる。しかし、今年のチャンピオンはBMW M5だ。
BMW M5
最新の4WDパフォーマンスカーを運転したことがないひとにとっては、BMW M5が1位になったのは意外かもしれない。フォード・フォーカスRS、アウディR8、そして日産GT-R同様、M5のアジリティ、バランス、そして遊び心は驚異的だ。2トンの4WDスーパーサルーンとは思えない挙動を見せる。そしてこのクルマのボディコントロールは他にない素晴らしさだ。
これだけのパフォーマンスを見せつけられても、5つ星を与えられない理由はある。文句をつけるとしたらステアリングの重さ、ブレーキペダルのフィーリング、そして作り物のエンジンサウンドなどだ。これらは運転の楽しさを損なう恐れがある。
とは言え、BMW M5のダイナミクスは他のライバルとは一線を画しており、このランキングの最上位は確定だ。BMW Mの歴史を振り返って見ても最良の一台だろう。M5コンペティション・パッケージは乗り心地が硬くなりすぎるのでおすすめしない。
メルセデス-AMG C63 S
メルセデス-AMG C63 Sはこの戦いにおいて非常に優位であった。兄貴分のE63 Sをも上回る出来栄えだ。
素晴らしい6.2ℓV8がなくなったのは残念だが、このV8ツインターボもパワーやキャラクターにおいて劣っていない。
乗り心地は固く、路面状況を直接的に伝えて来るが、そのハンドリングは非常に楽しく、正確で応答性も良い。そしてトランスミッションもエンジンの素晴らしさをさらに強調している。
ロードノイズは若干大きめだが、中毒性のあるV8のサウンドはこれを補って余りある。非常に印象深く、われわれ好みのオールドスクールな良さを持つクルマだ。
アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ
ジュリア・クアドリフォリオはこのランキングの頂点をあと一歩のところで逃した。ハンドリングは素晴らしく、落ち着いた乗り味とゴージャスなルックスは、このセグメントでの優勝争いに必要不可欠だ。
フェラーリの手が入ったV6ターボも魅力のひとつだ。C63 Sに搭載されるメルセデス-AMG製のV8ほどのパワーやインパクトはないが、独特の持ち味がある。
しなやかでバランスが取れ、ダイレクトかつスポーツカーらしいフィーリングは他の4ドアでは味わえないだろう。
全体として、このクルマはアルファ・ロメオがスランプから抜け出すきっかけとなったように思える。ライバルと比較した上での相対的な欠点といえばキャビンだ。メルセデス-AMGやBMWのライバルと比べると安っぽい。
アルピナB5ビターボ 4WD
速いBMWを作る上でアルピナの手法はいつもBMW Mとは少し異なっている。より大人しいアプローチで、速いながらも快適性と洗練性を重視した味付けだ。
新しいB5ビターボも同様だ。この最新モデルは600psの4.4ℓV8に4WDシステムを組み合わせている。もちろん快適性は確保されているが、その速さは半端ではない。
スタンダードな仕様でも贅沢で、豪華なキャビンとM5にも劣らないハンドリングが手に入る。
そして控えめなルックスも、アグレッシブさが目立つライバルたちとは対照的だ。万能で魅力的なパッケージングだろう。
メルセデス-AMG E63 S 4マティック+
E63 Sの最大の魅力をあげるとしたら、その爆発的なエンジンだろう。
この4.0ℓV8ツインターボは612psのパワーと86.7kg-mのトルクを発生する。0-100km/h加速は公称3.5秒だ。中型の4ドアサルーン、またはエステートとしては常軌を逸している。
圧倒的なパワフルさが魅力だが、もちろん欠点もある。エアスプリングに変更された一方で、ボディコントロールや乗り心地は以前より悪化している。ダンピングの制御が甘く、乗り心地も固すぎるのだ。
しかし、非常に魅力的なクルマであることは確かであり、ドリフトモードも面白い。だがアルファやC63 Sには一歩ゆずるのが事実である。
BMW M3 CS
F80型M3はWLTPへの適合措置が取られることなく生産が終了した。現在残っているのは登録済み未使用車か、ディーラーの在庫車だろう。
もしこのクルマをお求めなら、最終型のM3 CSがおすすめだ。直6ツインターボのパワーは460psに引き上げられ、トルクはM4 GTSと同等だ。GTSゆずりのカーボン製ボディパーツが多様され、中でもカーボンファイバー強化樹脂のボンネットが特徴だ。そしてハイグリップなミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2が装着されている。
F80型M3や、その兄弟であるM4は、パフォーマンスの追求という非常に明確な目的を持っている。過度な誇張や横向きに走るのではなく、サーキットでも通用する正確性やボディコントロールを持つのだ。
スピードのスリルを追求するのであれば良いが、実力の90%以下で楽しもうとするならば、他のライバル車を選んだ方が良いかもしれない。
メルセデス-AMG CLS53 4マティック+
メルセデス-AMGが新たにそのポートフォリオに加えたガソリンハイブリッドのスーパーサルーンがCLS53だ。
雄叫びをあげるV8のかわりに、非常にモダンな直列6気筒を搭載し、電動の過給機との組み合わせにより435psを発揮する。エンジンの53.1kg-mにモーターが25.4kg-mのアシストを加えることにより、そのトルクは強大だ。メルセデスは「システム総合」のトルク値を公表していないが、これはモーターのアシストはエンジンのトルクが細い低回転域で効力を発揮するため、単純に合計することができないのだ。
しかし、このパワートレインは十分なトルクを持ち、先代のCLS 63 Sと比べても48km/hから113km/hまでの中間加速では0.1秒も変わらないのだ。
乗り心地やハンドリングはV8モデルほどハードコアではないが、それこそが特徴だ。これは14km/ℓ級の燃費とドライビング・エクスペリエンスを両立するツーリングカーなのだ。
アルピナB7
弟分であるB5と同様、B7も超高速移動と快適性を両立させ、さらに目立ちたくないひとにもってこいのサルーンだ。
このクルマはアウトバーンを長距離移動するために設計されてはいるが、より刺激的な道でも楽しむことがきる。これはアダプティブサスペンションによるボディコントロールのおかげだ。
ただし、欠点はステアリングだ。直進時の反応のあいまいさや、コンフォートモード時の重さに不満が残る。とはいうものの、速くラグジュアリーなリムジンとして非常に好ましい1台だ。
テスラ・モデルSパフォーマンス
このクルマ抜きにスーパーサルーンを語ることはできないだろう。やや路面から隔絶されすぎたコントロール性や、限界域でのハンドリング、そしてエアサスペンションのシャシーにバランスがとれいない。
しかし、600ps超のパワーと100kg-mほどのトルクを持つミドサイズの4ドアサルーンでありながらゼロエミッションを実現していると考えれば、ハンドリングの欠点など大きな問題ではない。
バッテリーのみで600km以上の走行が可能であり、条件が揃えば0-100km/h加速は3秒という実力の持ち主だ。
最近の価格調整により、テスラは最上級グレードの価格を13万ポンド(1900万円)超から9万ポンド(1300万円)以下にまで引き下げた。この電動スーパーサルーンは今が買い時といえるだろう。
アウディRS3サルーン
アウディのR&D部門の予算削減や、排ガス規制の変化に伴いアウディ・スポーツのRSモデル登場がしばらく途絶えていた。しかし、このRS3は今手に入る数少ない4ドアRSモデルのひとつだ。しかし、読者のみなさんの中にはこのサイズゆえスーパーサルーンに含めることに異論があるかもしれない。
全長は4.5m以下だが、BMWのE36型M3よりは大きいのだ。そして「たったの」5気筒しか持たないが、ロータス・カールトンよりもハイパワーだ。
アウディによれば0-100km/h加速は4.1秒としているが、これはやや保守的な発表だ。われわれの計測では、ローンチコントロール使用で0-97km/h加速を4.0秒以下でこなしていた。この数値はスーパーサルーンとして文句ないだろう。
このクルマの乗り心地やハンドリングは、5気筒エンジンやギアボックスほど印象的ではない。乗り心地についてはやや減衰力が過剰であり、ハンドリングはバランスと適応力に欠けると感じた。しかし、安定して乗りやすく、爆発的な速さを持つRSのキャラクターを好むのであれば、このクルマがぴったりだ。
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