■ホンダが開発したこれまでにないEVの姿とは
ホンダは「2025年までに欧州で発売する4輪商品すべてを電動車両に置き換えることを目指す」と発表しています。すでに既存のラインナップからディーゼルモデルは姿を消し、ハイブリッドを中心とするラインナップに変わりつつありますが、その象徴となるのが新型EVの「ホンダe」です。
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2019年3月のジュネーブモーターショーではプロトタイプがお披露目されましたが、今回フランクフルトモーターショー2019で量産モデルが世界初公開されました。いったい、どんなクルマに仕上がっているのでしょうか。
筆者(山本シンヤ)は、ホンダeの開発責任者・LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)の人見康平氏に話を聞きました。
ーー量産モデルを発表したお気持ちは。
「当初は『無い物を作る』の精神でスタートしたものの、まわりからは『そんな物はできない』といわれてきました。しかし、チームの皆の頑張りで作り上げることができた、という歓びの一方で、ショーを見るとさまざまなライバルもいるので、『まだまだやることがあるな』と思う部分もありますね」
ーーまず、開発コンセプトは何でしょうか。
「ホンダeは単なるEVではなく、ネクストジェネレーションのクルマ。CASE(コネクティビティの「C」、オートノマス(自動運転)の「A」、シェアード(共有)の「S」、エレクトリックの「E」の頭文字)の階段を上がったときに『スモールカーってどうなるのだろう』という疑問に対し、『未来はこうだよ』と表現したモデルです」
※ ※ ※
今回のモーターショーでは、ホンダeの具体的なスペックが発表されました。パワートレインは「クラリティ」と同じモーター出力は100kW/113kWの2タイプ(トルクはともに315Nm)。バッテリーは35.5kWhの容量で、1回の充電で220kmの走行が可能となっています。
ーー現在のトレンドから考えると航続距離は短いように感じますが。
「世にある多くのEVは内燃機関の代替えとして開発されていますが、充電時間/コスト/ウエイトなどさまざまな問題があるのも事実です。そこでホンダeは、EVにあれもこれもと欲張らずに、いい意味で『割り切る』ことも重要だと考えました。
私はもっとバッテリーを真剣に使うべきだと考えています。こまめに充電すればいいのに、1週間充電しないために大きなバッテリーを搭載するのはナンセンス。EVはそういう物だと啓蒙していくことも必要だと思っています。
そういう意味もあり、ホンダeはまずは航続距離を220kmと決めて、バッテリー搭載量を決めました。今後はバッテリーの進化で、少ない搭載量でも航続距離は伸びると思いますが」
ーー割り切ったことで実現できたことはなんでしょうか。
「ボクシーなスタイルでタイヤも太いので、空力もそれほど良くないですが、これも航続距離を割り切ったことで実現できたことのひとつです。シンプルなデザインのために、サッシュレスドア、デジタルアウターミラーなど難しい技術を数多く使っています」
ーーモーターはリアに搭載し後輪を駆動する方式を採用しています。
「もし、小さいモーターなら前輪駆動を選びましたが、残念ながらホンダにはクラリティ用の大きなモーターしかありません。『あれしかないなら弾けるしかないよね』、『後輪駆動だよね』でした」
■将来はオープン化も!? ホンダeの将来像とは
ーー価格はスターティングプライスが約350万円と発表されました。コンパクトモデルにしては高めの設定だと思いますが。
「価格が高いのは電動化の部分ではなく、『わかりやすい未来感』や『質感』に(コストを)使っているからです。今後MaaSの時代もやってきますが、まずは個人所有で魅力あるクルマにすることが重要だと考えています」
ーーでは、魅力あるクルマにするために、どのようなトライをしていますか。
「まずは『デザイン』。不細工なクルマは選びませんよね。次にメーターやシートなど、ヒエラルキーではなく次世代のクルマを感じさせる『インテリア』。ホンダのクルマに期待される『ダイナミクス』。そしてIoTやエネルギーの連携といったクルマだけじゃないときの価値である『コネクテッド』と幅広いです」
--0-100km/h加速は約8秒と発表。NSX並みの500mmという低重心な上に、前後重量配分は50:50、前後オーバーハングの短いパッケージング、さらにタイヤはEVでは珍しいミシュラン・パイロットスポーツ4を驕るなど、運動性能もかなり期待できそうですね。
「重心が低いと柔らかいバネを使ってもロールが少ないので、運動性能と快適性能のバランスは高いです。ただ、アイポイントは高いので不思議な感覚ですね。
基本素性がいいのでスポーツ方向も考えましたが、今回はクルマのキャラクターに合わせて質感方向に振っています。0-100km/h加速は約8秒ですが、80km/hまではかなり速いですよ」
--EVは発生する音が小さいので、内燃機関を搭載するクルマよりも静粛性に気を使う必要があります。
「EVは単純な数値だけの話ではなく、音に対する感覚のランクが違いますね。ホンダeは、音の発生源が後ろにあるのでキャビンは静かですが、さらに厚いガラスの採用による遮音や、電子ミラー採用による風切音低減なども静粛性アップに寄与しています」
--また、最小回転半径4.3mと、取り回し性能が優秀なのもホンダeの特徴のひとつですね。
「ステアリングは45度切れるので、VGS(バリアブル・ギアレシオ・ステアリング:車速と舵角に応じてステアリングギア比を無段階に変化させる機構)も採用しています」
--今後、モデルバリエーションの追加などは計画されているのでしょうか。例えばフロントにモーターを搭載して電動AWDなどの可能性もありますか。
「やるかやらないかは別として、頭の中には色々ありますよ。ちなみにホイールベースはフィットと一緒ですが、これも『何が来てもいいように』の考えのひとつです」
--ホンダeは、ハッチバックでは珍しいサッシュレスドアを採用していますが、これはどのような理由があるのでしょうか。
「いい所に気が付きましたね。ちなみにルーフは1枚モノのガラスで、下にメンバーなどは通っていません。となると、色々なアイデアが生まれると思いませんか」
※ ※ ※
つまり、オープンモデルはそれほど難しくない、ということのようです。また、将来的にソーラーバッテリーの性能がアップしたら置き換えもできるかもしれません。
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