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フォルクスワーゲンはジュネーブモーターショー2019で、EVコンセプトカーの「ID.バギー」と現時点でトップレベルとなる先進運転支援システムを搭載した新型パサート、Bセグメントのコンパクト・クロスオーバースポーツモデルの「T-Rock R」、そしてドイツ製ディーゼル車で最高出力となる421psを発生するV8TDIエンジンを搭載する新型トゥアレグを出展した。さらに包括的なe-モビリティの提案として、電動スクーター、ラスト1マイル用の3輪電動スケートボードも出展している。
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「ID.バギー」とは
中でも注目はMEB(電気自動車専用)プラットフォームを採用した「ID.バギー」だ。1960年台のカリフォルニアで流行したデューンバギーのアイディアにインスパイアされたこのコンセプトモデルは、まさに現代版のバギーだ。「ID.バギー」は、これまでにフォルクスワーゲンが発表している電気自動車シリーズ、「ID.」(コンパクト・ハッチバック)、「ID.バズ)」(ミニバン)、「ID.クロス)」(SUV)と「ID.ビジョン」(ミッドサイズ・セダン)に続く第5弾となる。
デザインだけでなく、構造もかつてのバギーの発想を受け継いでいる。当時はビートルのプラットフォームが使用され、パワートレーンやシャシーはすべてプラットフォームと一体化しており、アッパーボディなしで走行できた。これと同様にID.バギーはフロア一体型バッテリー、モーター、シャシーが全てMBEプラットフォームに搭載されているため、アッパーボディのデザインには大幅な自由度があるのだ。
ID.バギーは62kWhのリチウムイオン電池を搭載し、204ps/310Nmのリヤモーターによって駆動される。さらにフロントにモーターを追加すれば4WDにも変身する。このようなID.バギーのプラットフォームに架装されるボディは、アルミニウム、スチール、プラスチックを組み合わせた複合ボディで、MEBプラットフォームから取り外すこともできる。
つまりフォルクスワーゲンが製造するMEBをベースに、デューンバギーと同様にフォルクスワーゲンとは関係ない小規模ボディメーカーやスタートアップ企業が独自のボディを架装することができるわけだ。つまり、他の企業のデザイン、オリジナリティで「ID.バギー」の魅力はより多様になり、若い世代にアピールできる高いポテンシャルがあるのだ。
蓄電もできるフレキシブル急速充電スポット
あまり注目を浴びなかったが、ジュネーブモーターショー2019の会場近くにフォルクスワーゲン・グループは新開発のフレキシブル急速充電スポットを設置した。この移動式高出力充電器は、ID.バギーが走り回る海岸でも、フェスティバル会場でも、また市街地の駐車場などあらゆる場所に設置でき、電気自動車に充電できることを意味している。
この急速充電ステーションは、限られた期間だけ、あるいは恒久的に設置することが可能だ。最大100kWに対応するDC(直流)急速充電技術を採用し、MEBモデルに搭載する駆動用バッテリーを30分で最大80%充電することが可能だ。
このフレキシブルな急速充電スポットは、最大360kWhの電力が蓄えられ、それは15台の電気自動車に充電可能な容量とされているのがポイントだ。もちろんこのフレキシブル急速充電スポットは既存の電力網と接続され電力を得るが、それだけ高い充電能力を持つのは難しいため、性能が劣化した電池セルを多数再利用し、最大360kWhを蓄電能力をもたせて供給しているのだ。
つまりフレキシブル急速充電スポットは、電力網と接続されると同時に高性能の蓄電能力を持つ大容量のリチウムイオン電池を併せ持つため、リチウムイオン電池には電力網から充電が行なわれるため、電力網の電力を一時的に蓄電できることになる。
そのためフォルクスワーゲンは、このフレキシブル急速充電スポットを「電力の銀行」と呼んでいる。つまりフレキシブル急速充電スポットが多数設置されれば、電力網の余剰電力が蓄電でき、電力網の電力バッファリングや、ピーク時の電力系統への負担軽減に役立つスマート・グリッドを構成することが可能になるのだ。
幅広いCO2削減構想
フォルクスワーゲン・グループは、風力や太陽光エネルギーで発電されたクリーン電力の余剰電力を電気分解して水素ガスを生産し、その水素ガスからメタンガスを生み出して既存のLNGパイプラインに接続する実証事件を行なっているが、同時にクリーン電力の余剰電力の蓄電、ピーク時の電力供給機能を併せ持つ、フレキシブル急速充電スポットを多数配置することでより電力網の安定性と、高性能な急速充電機能を両立させるという構想なのである。
電気自動車のバッテリー容量が増大する一方のため、「超高出力充電システム」が各国で構想されているが、こうしたシステムが多数設置されると電力網の負担は大きくなる。これに対してフレキシブル急速充電スポットは車載用リチウムイオン電池を多数使用することで蓄電能力があり、電力網に負担をかけないどころか、電力網をカバーする存在となる点が大きなメリットである。
もうひとつ注目すべきは、ツヴィッカウ工場で生産されるEV第1号車の「ID.」の生産で、CO2排出量の削減、回避を目標として、バリューチェーン全体に焦点を当てていることだ。バッテリーセルは、グリーン電力を使用してヨーロッパで生産され、さらに、原材料の生産にまでおよぶサプライチェーン全体で、さらなるCO2削減の可能性がないか、サプライヤーの協力を得て検討が行なわれているのだ。
ツヴィッカウ工場では既に、再生可能エネルギーの電力で生産されており、余剰電力は工場外に供給している。生産工程において避けられないCO2の排出に関しては、認証された気候プロジェクトへの投資によって相殺している。その結果、「ID.」は当初からCO2ニュートラルなクルマとして生産されるわけだ。
このようにフォルクスワーゲン・グループはEVを開発・生産するだけではなく、かつてないほど幅広いEV、CO2削減構想を実現しつつある。
電気自動車戦略はさらに拡大強化
「フォルクスワーゲン・グループの電気自動車戦略とMEBプラットフォーム」のように、フォルクスワーゲン・グループは、2017年秋に宣言した「ストラテジー2025」の電動化戦略ロードマップを2018年春に修正した。2020年までに10万台の「ID.」、「ID.クロス」モデルを含む15万台の電気自動車を販売する計画で、2025年までに100万台の電気自動車を生産し、将来的にはグループ全体で、このMEBを使用して1000万台の電気自動車を生産するとしていた。
しかし、2019年3月12日に開かれたメディア・カンファレンスで、ヘルベルト・ディースCEOは、電動化戦略をさらに徹底して推進し、今後10年間で発売する新型EVの計画を50車種から70車種まで増加させること、そしてグループのEV用プラットフォームを採用した電気自動車の生産台数は、今後10年間でこれまで策定していた目標の1500万台から2200万台に引き上げることを明らかにした。
さらに2050年までに車両および生産工程で、完全にCO2ニュートラルを達成することを目的とした包括的な脱炭素化プログラムを策定し、パリ協定が定める気候目標の達成に全力で取り組むとしている。
しかし、現時点では限りなくゼロに近いEV生産台数から、今後10年間で2200万台生産するという目標設定は、驚くべき目標だ。単純な計算で、年平均220万台で、フォルクスワーゲン・グループ全体の年間生産台数は1100万台前後とみることから、全生産台数の20%を電気自動車とするということになる。現在の電気自動車のリーダーであるルノー/日産/三菱の現状や、今後の見通しをはるかに凌駕するレベルだ。しかも単純な年平均での電気自動車の割り合いは20%という数値だが、ディースCEOは2030年までには全生産車での電気自動車の比率を40%にするという。
多くの研究機関や調査会社がグローバルで見て、2030年時点の電気自動車の占める割合は10%以下としているのに対して、フォルクスワーゲンは真っ向から異議を唱えたわけだ。もちろん、フォルクスワーゲンとしてはその電気自動車の生産の過半は、電動化政策を進めている巨大市場の中国を想定しているのだろう。
ただ、こうした野心的な計画が実現できるかの鍵は実はバッテリーの生産・供給能力にある。民生用とは信頼性の基準が全く違う電気自動車用の高性能リチウムイオン電池をどこが生産するのか? それが大きな課題だ。
フォルクスワーゲン・グループは戦略的な規模での電池セルのサプライヤーとして、サムスン、LG化学、SKI(以上3社は韓国メーカー)、寧徳時代新能源科技(CATL:世界最大の電池メーカー)を選定している。さらにフォルクスワーゲンは、増加の一途をたどる需要を考慮して、ヨーロッパにおけるバッテリーセルの自社製造の可能性も検討中だという。つまり、リチウムイオン電池の生産・供給に関してもテスラ社の空前規模の巨大電池工場「ギガファクトリー」が霞んで見えるほどの大規模な生産・供給体制を構築しつつあるのだ。
また将来的には、全固体電池の大きな可能性にも注目しており、QuantumScapeと提携し、量産可能なレベルまで技術を共同開発を進めることを目指している。
このように見てみると、10年間で累計2200万台の電気自動車を生産するという目標はヘルベルト・ディースCEOの単なる打ち上げ花火ではなく、相当リアルな計画であると受け止めざるを得ないだろう。
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みんなのコメント
よう待って10分だな
どこの暇人が30分も待てるんだ?
全然ダメな性能
販売量が実成績。
ウソは言っていない。 ただ、あり得ない計画を言っているだけ。