2020年1月30日に創立100周年を迎えたマツダが、ホームページで『歴代のマツダ車 あなたのお気に入りの一台は?』という投票を行っている。投票は2020年12月末まで受け付けており、2021年1月29日(100周年最終日)に最終結果発表を予定している。
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まだまだ続くコロナ禍を自動車界一丸で立ち向かう マツダがフェイスシールドフレーム生産開始
創立時からの「人々の生活を豊かにする」という志を継承し生み出された代表的なクルマがエントリーしており、マツダファンならずとも一票入れたくなる。
ランキングの結果は、毎月中旬に更新されることになっている。今回は、中間発表順位という形だが、2020年5月18日時点でランキングされているトップ5台(レーシングカーを除く)について、そのクルマの横顔と、記憶に残る試乗時の思い出を、自動車評論家の片岡英明氏に語ってもらう。
最終決着となる2020年12月末には、ランキングが変動する可能性はあるが、あなたの思い出の一台は現在何位にランクインしているだろうか? 是非チェックしてもらいたい。
文/片岡英明
写真/MAZDA
【画像ギャラリー】ファンが選んだ! マツダ100周年の間に生まれたクルマランキングTOP5
■1位 オートザムAZ-1 1992年
数あるマツダ車のなかで、暫定とはいえファン投票1位に選ばれたのは、なんと「オートザムAZ-1」だった。
マツダは、1989年秋の東京モーターショーに3タイプの軽スポーツカーを参考出品している。そのなかで反響が大きかったA案を仕立て直し、1992年10月に市販している。それがオートザムチャネルから送り出されたベビーギャングの「AZ-1」だ。
シート後部に搭載されたエンジンはスズキ アルトワークスに搭載された直列3気筒のDOHCターボ。なお、ガルウイングドアを採用した国産車は現在までこのAZ-1とトヨタ セラのみだ
驚かされるのは、レーシングカーのように大断面のサイドシル構造を持つスケルトン・モノコックフレームの上にFRP製のクーペボディを被せたことである。ミッドシップならではの低く構えたスタイリッシュなルックスに加え、ドアはスーパーカーのように跳ね上げ式のガルウイングタイプだった。
シート後方に搭載されるのは、スズキのカプチーノやアルトワークスと同じ657ccのF6A型 3気筒DOHCインタークーラーターボだ。64ps/8.7kgmを発生し、その気になれば8000rpmまで実用になる。しかも720kgの軽量だから、レーシングカーのように切れ味鋭いハンドリングを見せる。
刺激的な走りを存分に楽しむことができたが、限界付近ではピーキーな挙動を見せた。ボクはサーキットでリアを巻き込ませ、スピンを経験している。こんな過激なマイクロスポーツは二度と出てこないだろう。
■2位 ランティス 1993年
登場から30年近くになる今でも美しいフォルムだな、と思うのが「ランティス」である。
バブル期に企画され、1993年9月にデビューを飾った。この時期は、マツダが「ときめきのデザイン」をテーマに、デザイン改革を行っていた時期だ。だから世界をリードする最新のモードをまとったクルマが多い。その筆頭がランティスである。
手前が5ドアハッチバック、後ろが4ドアクーペだ。開発はニュルブルクリンクで進められ、ハンドリングや走りに磨きがかけられた
4ドアセダンと4ドアクーペがあり、どちらも個性が際立つスタイリングだった。プラットフォームなど、メカニズムはファミリアと共有し、クーペは「アスティナ」の後継だ。今でも通用する秀逸なデザインを、ファンは高く評価したのだろう。
エンジンは2機種を設定する。2Lエンジンは可変共鳴過給システムを採用したV型6気筒DOHC、1.8Lは可変慣性吸気システムを採用した直列4気筒DOHCだ。どちらも高回転まで軽やかに回り、V6エンジンは滑らかさも群を抜く。
それ以上に感激するのは気持ちいいハンドリングである。とくにハードサスペンションを採用した4ドアクーペの「タイプR」は、スポーツカー的な軽快な身のこなしだ。ステアリング操作に対しクルマがリニアに動き、狙ったラインに無理なく乗せることができるなど、意のままの走りを楽しめる。上位に顔を出すのも納得だ。
■3位 アンティニRX-7(FD3S) 1991年
今なお多くのファンに愛されているロータリーエンジン搭載のピュアスポーツだ。「RX-7」としては最後の作品で、10年以上も第一線で活躍したことからわかるように、最初の設計が素晴らしかった。
発表されたのは1991年10月である。ファンを魅了した美点のひとつが、今も色褪せないロングノーズ&ショートデッキのクーペフォルムだ。ボディに抑揚をつけ、低いノーズから続くフェンダーは峰を立てている。エンジンも魅力的だった。フロントミッドシップに搭載するのは13B-RWE型と呼ばれる2ローターのロータリーエンジンで、シーケンシャル・ツインターボだ。
シーケンシャル・ツインターボを採用した13B型ロータリーエンジンを搭載。ユーノスコスモなきあと、世界唯一のロータリーエンジン搭載量産車としてファンを熱くさせた
デビュー時の最高出力は255psだが、驚くほどパワフルで、8000rpmまで瞬時に回りきる。サスペンションは新設計の4輪ダブルウイッシュボーンだ。軽量化のためにアルミ製とし、ホイールにもこだわった。限界性能は驚くほど高い。
が、前期モデルは挙動がピーキーだ。ドライバーにテクニックを要求するスポーツカーで、ゆっくり走るのは苦手だった。エアコンを装着しないグレードがあるなど、スパルタンに徹しているが、ジャジャ馬を乗りこなすディープな楽しさがある。
■4位 オートザムキャロル(2代目) 1989年
マツダは1960年代の早い時期に軽乗用車を発売し、ぜいたくな設計の360クーペとキャロルは多くの人に親しまれた。
が、70年半ばに軽乗用車の開発から遠ざかっている。カムバックするのは1989年秋で、その最初の作品となったのが、オートザムで扱う新世代のキャロルだ。プラットフォームやパワーユニットは提携しているスズキのアルトのものを譲り受け、その上にマツダがデザインしたキュートな3ドアのハッチバックボディを被せた。
スズキ「アルト」からエンジンやプラットフォームの供給を受けて開発された「オートザムキャロル」。パイクカーを彷彿とさせるルックスで高い評価を受けた
女性に的を絞ったエクステリアデザインは、とてもキュートだ。ルーフ部分を開け閉めできるキャンバストップや個性的なオプションパーツも豊富に用意している。ファン投票では丸みのある親しみやすいデザインが後押ししたのだろう。今、売り出しても人気になると思えるほどポッブで、かわいらしいデザインが高く評価された。
エンジンはスズキ製の直列3気筒SOHCだ。デビュー時は547ccだったが、90年以降は657ccになり、ボディもひと回り大きくなった。1995年秋に男性も意識して直線基調のフォルムに生まれ変わったが、先代ほどの人気は得られていない。
■5位 ユーノス500 1992年
1990年代前半、マツダは積極的にミドルクラスに兄弟車を送り出した。そのなかでもっとも個性が際立っているのが1992年10月に登場した「ユーノス500」だ。
ユーノスブランドとしては初めての4ドアセダンで、ボディサイズを小型車サイズのなかに収めながらエレガントさと躍動感を上手に取り込んでいる。エクステリアは全幅を75mmも縮めているが、それを感じさせないほど面質は豊かだ。フロントマスクも凛として気品がある。インテリアも上質な仕上げにこだわった。美しいデザインに加え、クラスを超えた高いクオリティがファン投票の順位を押し上げたようだ。
ユーノス初のセダン。当時の兄弟車だったクロノスやMS-6、クレフ、テルスターよりもボディサイズは小さいが、逆に価格は高かった。エンジンは直4、1.8LとV6、2LのNA
パワーユニットは1.8Lと2LのV型6気筒DOHCだけでスタートし、あとに1.8Lの直列4気筒DOHCエンジンを追加している。V6エンジンは低回転のトルクがちょっと細いが、高回転まで気持ちよく回り、静粛性も高かった。
4輪ストラットのサスペンションもマツダらしいスポーティな味付けだ。専用の強化サスペンションにストラットタワーバーを組み込み、横浜ゴム製のアドバンA07のハイパフォーマンスタイヤを履いた「20GT-i」は、とくに軽やかな走りを見せつけた。
ユーノス500は1995年で販売を打ち切っている。だが、「クセドス6」の名で送り出されたヨーロッパでは1999年春まで販売が続けられた。ファンも認めた傑作セダンがユーノス500だ。
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