ロールス・ロイス20/25用エンジンへ換装
戦前に作られた26台の内、現存するアタランタは8台と考えられるが、V12エンジンを載せた例で、完璧な状態にあるのは4台のみ。今回の2台は丁寧なレストアを受け、仕上がりは素晴らしい。
【画像】「ベントレーに並ぶ」優雅さと速さ アタランタV12 同時期のクラシックたちと比較 全142枚
特にFLY 862のナンバーで登録された、ブラックの2ドア・4シーターサルーンは、アタランタ独自の美学が端的に表現されている。初代オーナーは、W&Aギルビー蒸留所の代表、ヘンリー・ギルビー氏。1939年4月に登録された。
1949年に売却され、オーナーは2度変わり、1951年にレナード・ホセランド氏が入手。息子のマーク・ホセランド氏へ継承されつつ、1970年まで維持された。
英国のヴィンテージ・スポーツカー・クラブ(VSCC)のメンバーだったマークは、アメリカ製モデルと速さを競うことを考えた。だがクラブのイベントでは、アメリカ製エンジンを積んだ英国車の参加は認められていなかった。
そこで、ロールス・ロイス20/25用エンジンへ換装。ツインSUキャブレターを載せ、エグゾーストも新調し、160km/hでの巡航を許容する性能が与えられた。
さらに彼は、戦後のアタランタ・ブランド再生にも貢献したリチャード・ゲイラード・シャトック氏へ、サスペンションやインボード・ドラムブレーキの交換を依頼。能力を高めた2ドアサルーンは、様々なイベントで優れた実力を披露した。
1970年にスタンリー・マカディ氏が買い取るが、自宅へ自走で連れ帰る途中、クラッチが故障したらしい。以降、亡くなるまでアタランタV12は保管されていたが、修理を受けることはなかった。
見惚れるボディ 心が奪われるインテリア
救世主になったのが、ウォード家。2010年に名義を取得し、リンカーン・ゼファー用V12エンジンへ戻された。丁寧なレストアでは、ボディにアイボリーのコーチラインが施され、スポークホイールのスピナーに輝くアタランタのロゴも磨き出された。
その仕上がりには、見惚れてしまう。スポーティなプロポーションは、ドラマチック。リアヒンジのドアを開くと、インテリアにも心が奪われる。
シートは、意外なほど硬く狭い。足元は広く、ペダルまで両足を伸ばせる。ステアリングホイールは大きな4スポーク。ステアリングコラムはクロームメッキで処理され、贅沢なウッドパネルに、ブラックとクリームのメーターが並ぶ。細部まで精巧だ。
アールデコ調の内装はオリジナルではないものの、1939年の姿が再現されている。フロントガラス越しに、伸びやかなボンネットが広がり、両側でふくよかなフロントフェンダーが弧を描く。ヘッドライトのドームが、景色を映す。素晴らしい眺めだ。
4.4L V12エンジンは、大きな唸りとともに始動。1速が横に飛び出た、ドッグレッグ・パターンの3速マニュアルは扱いやすい。ギア比は高く、発進時は長めの半クラッチが必要。2速で心地良く感じられるのは、55km/hを過ぎてから。
既に12年間を費やしたウォード家だが、調整は不完全だと考えている。確かに、ステアリングホイールは重く、反応は若干曖昧。ブレーキや乗り心地も、期待ほど良くはなかった。全体的に調和していない印象は、今後時間をかけて煮詰められていくはず。
裕福な人々の心を捉えたアタランタ
他方、4シーターのドロップヘッド・クーペは、第二次大戦後の1946年にEJB 540のナンバーで再登録された車両。5名のオーナーを経て、1998年にアメリカへ輸出されたが、2012年に英国へ戻ってきた。
現在のオーナーは、同じくウォード家。メカニズムなどはレストアされているが、ボディやインテリアからは経過した時間も香ってくる。アタランタV12の本来の走りを、しっかり味わうことができる。
ソフトトップを開くと、リンカーン・ゼファーへ似たエグゾーストノートが耳へ届く。戦前の一般的な英国車とは、まったく異なる聴覚体験だろう。
ギア比は短く、シフトレバーは滑らか。ブレーキとクラッチはフロア・ペダルだが、アクセル・レバーはダッシュボード側。発進させてみると、扱いやすく速い。
100km/hまで活発に加速し、それ以上のスピードでも余裕を感じる。直列4気筒からV型12気筒への置換を提案した、ナイジェル・ボーモント・トーマス氏の狙いが体現されている。
ステアリングホイールは、切り始めの遊びが多いものの、以降は小気味よく反応し不安感はない。乗り心地もかなり良い。インボード・ドラムブレーキが、バネ下重量を小さくしている効果だろう。
かくして、85年前のアタランタV12は、極めて魅力的な存在だったことは想像に難くない。当時の裕福な人々の心を、しっかり捉えていたことだろう。
もし、同社がクルマを作り続けていたら。ブガッティが戦後に作った空白期間を補完する、英国の上級ブランドとして、成長を続けていた可能性も否定できない。
協力:ジュリアン・ブラウン・クラシックカー・コミッションズ社、アリスター・ウォード氏、ソール・スティーブンス氏
番外編:アタランタの戦後 ブランド復活へ
大戦の終りが見えつつあった1944年、レーシングドライバーのリチャード・ゲイラード・シャトック氏がアタランタV12のシャシーへ注目。スーパーチャージャーで過給する、V型16気筒のルック・マリーン・エンジンを搭載した、特別仕様を作っている。
ブランドへの関心を強めたシャトックは、戦前のアタランタ・オーナーのために、残っていた部品を購入。アフターサービスを買って出た。一方、アタランタ・モーターズ社自体はポンプの製造へ本格的に移行し、自動車事業へ復帰することはなかった。
さらに彼は、自らのイニシャルを加えた、RGSアタランタとして商標権を獲得。ロンドンの北、ブルックサイドに構えたガレージで、9台から12台を提供している。また、アマチュアのためのチューニング用キット・パーツの提供で、事業を成長させた。
1950年代に入りFRPが普及すると、RGSアタランタは独自ボディを製造し、欧州や北米市場へ展開。TVRなど一部のメーカーは、RGSアタランタのボディをオプションとして設定していた。しかし、1960年代に工場は売却されてしまう。
半世紀後の2012年、マーティン・コーフィールド氏が、2シーターボディへ現代的なフォード製2.5L 4気筒エンジンを搭載した、新生アタランタを発表。英国の少量生産モデル規格へ準拠させつつ、往年のデザインのまま復刻生産されるに至った。
アタランタV12(1937~1939年/英国仕様)のスペック
英国価格:740ポンド(新車時)
生産数:26台
全長:4470mm
全幅:1650mm
全高:−mm
最高速度:164km/h
0-97km/h加速:12.0秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1321kg
パワートレイン:V型12気筒4379cc 自然吸気サイドバルブ
使用燃料:ガソリン
最高出力:113ps/3900rpm
最大トルク:24.8kg-m/400-3500rpm
トランスミッション:3速マニュアル(後輪駆動)
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