Porsche Taycan 4S
ポルシェ タイカン 4S
ポルシェ タイカン、極寒の北極圏でも抜群のパフォーマンスを披露!
厳冬のラップランドに持ち込まれたタイカン
暗闇、凍えるような寒さ、低い路面μ、これはクルマをドライブする環境として理想とは言い難い。今回、ポルシェ・エクスペリエンス(Porsche Experience)がフィンランドの北極圏ラップランドのレヴィで行われ、同社初のフルEVモデル「タイカン」が厳冬の環境下でも素晴らしい性能を発揮した。実際、スノー路での走行性能においては、内燃機関車両よりも優れていると言ってもいいかもしれない。
シャシー・ドライビング・ダイナミクス担当開発エンジニアのクリスチャン・ヴォルフスリートは、1年のうち15週間を北極圏で過ごしている。 彼が開発を担当したのはタイカンの4WDとトルクベクタリング・システムだ。
真っ暗な森の差し迫ったターンを何気なく予想し、彼はアイスブルーのタイカン 4Sのステアリングをミリ単位の精度でコントロールする。そして、タイカンは信じられないスピードで引き締まった圧雪路をドリフトで駆け抜けていった。
内燃機関では当たり前のエンジンサウンドがないEV
ここでは、すべてが静寂のなかにある。それは完全な沈黙だ。1mを超える積雪によって、すべての音が飲み込まれている。夜間に気温が上昇することで、森林の樹木は美しい氷の彫刻へと変貌した。
タイカンは、まるでおとぎ話の世界のようなフィランドの森のなかを、LEDマトリックスヘッドライトで切り裂いていく。エキゾーストノートを響かせることなく、タイヤは踏み固められた圧雪路に食いつき、前へ前へと進む。タイカンのサウンドについて、ヴォルフスリートは以下のように説明してくれた。
「音響特性が完全に異なることが、内燃機関車両と電気自動車の大きな違いのひとつです。だからこそ、あえてモーター音を強調した『ポルシェ・エレクトリック・スポーツサウンド (PESS:Porsche Electric Sport Sound)』が開発されました。ドライバーにとって音は非常に重要です。内燃機関車両ではエンジン音があることに慣れています。PESSは単なる感情に訴えかける“仕掛け”ではありません。ハードなドライビング環境において、真のメリットを提供するのです」
ドライビングに関する車両からのフィードバックだけでなく、PESSはタイカンだけに与えられた“ボーナス”と言えるかもしれない。現時点で、ライバルはPESSに匹敵する技術を持っていないのだ。
2基のモーターにより自由度が増した駆動制御
これまでの内燃機関では、車軸間でしか駆動トルクを分配することができなかった。しかし電動車はバッテリー関連技術と2基のモーターにより、さらに積極的に4輪のトルクを制御できるようになった。
「車軸上にある2基の完全に独立制御可能なモーターによって得られる利点は非常に大きいです。まるで4つのアクセルペダルを持っているようなものですから(笑)。タイカンはリヤアクスルに駆動力を与えることなく、必要に応じてフロントアクスルのみにトルクを加えることができます。つまり、極端なドリフトアングルでも問題なくドライブできるのです」
また、同等レベルの内燃機関よりもパワートレイン全体を正確に制御できるという事実は、電気モーターが持つ抜群の応答性にある。通常のエンジンのように徐々にトルクが増えるという特性ではなく、瞬時に最大レベルのトルクを路面に伝えることができるのである。
応答時間が2ミリ秒(1000分の2秒)以下というパルスインバーターにより、従来と比較すると最大5倍の制御スピードが可能になった。911やパナメーラのようにタイカンは順応時間を必要としない。タイカンのコントロールシステムは、従来のPTM(ポルシェ・トラクション・ マネージメント)と変わらない制御が可能な上に、さらなる可能性も秘めているという。
タイカン専用に開発されたウインタータイヤ
同様の状況はスリップ・コントロールにも当てはまり、速度とトルク制御の面でアドバンテージは非常に大きい。
「ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム(PSM)をパルスインバーターの制御システムに直接統合することで、スリップ制御を従来よりも10倍も速く実行できます。さらに従来のシステムよりも自然なドライブを実現できました」と、タイカンのシャシー担当プロジェクトマネージャーのインゴ・アルバースは説明した。
また、ポルシェは冬の路面においてポルシェらしい走行特性を実現するため、タイカン専用のウインタータイヤを開発した。これはタイヤ特性をシャシーが求める要件に適合させるための唯一の方法だった。
「開発期間中は、特に雪道において横方向の車両バランスの改善に取り組みました。ブレーキとトラクションのレスポンスの最適化も、私たちに課された課題でした」と、アルバース。
妥協のない“本物”のポルシェを届けるために
ポルシェはタイカンにおいて熱管理の新たな開発目標を掲げ、すべての気象条件に対応できるよう開発を行っている。
「タイカンは過去600kmのドライビングスタイルを分析し、インテリジェントに反応します。計画されたルート、外気温、湿度、日照条件に基づいてバッテリーと室内を調整できるのです」と、プラットフォーム・プロジェクトマネージャーとしてシリーズに携わってきたベンルト・プロプフェは指摘した。
よく知られているように、低温ではバッテリーシステムのパフォーマンスは大幅に低下する。ポルシェは、高電圧バッテリーを事前に調整するだけでなく、外気温に応じてバッテリーセルを最大で摂氏28度まで過熱することで対応した。
「これによりタイカンは、どんな環境下でも瞬時にフルパフォーマンスを引き出すことができます。そして、寒冷地用にオプションとして用意されたヒートポンプと組み合わせることで、加熱のためにバッテリーからの電気を使用することなく、運転中に室内を暖めることもできます」と、プロプフェ。
このようにタイカンは、妥協のない“本物”のポルシェであることをカスタマーに保証するため、多くの努力が払われている。結果、完成した車両は夏のロングドライブでも、冬の厳しいドライビング環境下でも、あらゆるシチュエーションでドライバーに強い印象を与える1台になったのである。
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