都内、秋葉原はAKB劇場の前で佇む1台の…なんだこれ? やけにちっちゃい、例えるなら三菱のi-MiEVとか、ドイツのメーカースマートのフォーツー(スマートK)に似た、こじんまりとした佇まい。そしてサイドに光る「ナショナル」のロゴ。
往来の人々も物珍しそうに視線を留めていく。ご年配の方々は懐かしそうに、そして反対に若い人たちは「新しいクルマ?」みたいに。
あの興奮と感動が再び!! スバルが新型「S209」を新年早々世界初披露!!
そりゃそうか、若い人にしてみればスタイルはスマートモビリティそのものだし、ひょっとしたら「ナショナル」もわからないかも知れないし(ナショナルは電機メーカーのパナソニックがブランド統一前に使用していた社名・ブランド名の一つです。2008年から2009年にかけてパナソニックへと一本化されました)。
その正体は、1980年代のクルマ「ミツオカBUBU501」をベースとした、いわゆるラッピングカー。しかし一体なぜこんなクルマが?
フォトジャーナリストの酒井透氏が、所有者で大阪府寝屋川市在住のkaorububuさん(長谷川薫さん)に話を聞いた。
※本稿は2018年11月のものです
文・写真:酒井透
初出:『ベストカー』 2018年12月10日号
■「世の中暗い話ばかりなので」
この異色のミニカー2台を所有するkorububuさんは、ベンツやBMWに乗っていたこともある。しかし、ある時に、このような高級車に乗っていることに疑念を抱いたという。『ナショナル号』ことミツオカBUBU501は、3年くらい前に中古で購入したものでラッピングしたのは1年くらい前。すべて自分で行っている。
ナショナルや山崎パンのラッピングをしたのには意味がある。ナショナルは、『明るいナショナル~』というCMソングからヒントを得た。
「今の世の中は、暗い話ばかりなので、これに乗って走ることによって世の中を明るくしたかった」、「クルマを見た人が楽しくなれればいいと思った」と言う。
「パナソニック」(ナショナルは、パナソニックの前身ブランド)は今年で100周年。本社は大阪の門真市にあり、kaorububuさんの自宅はさほど遠くないところにある。
■山崎パンの配送車に感銘を受けた『山パン号』も
もう1台『山パン号』のヒントは、今年2月の福井豪雪。大雪のために山崎パンの配送車が動けなくなり、積んでいたパンを困っている人たちに配っていた。この配送車は、人助けをしていた。それに感銘を受けた。山崎パンは、今年70周年になる。
『ナショナル号』も『山パン号』も、法的にはいわゆるミニカー扱いとなる。税金・保険は、ほぼ原付同等。車庫証明、車検なし。シートベルトもヘルメットも不要。自動車扱いのため法定速度は60km/hで二段階右折の必要もない。
1980年代前半、このような車両は自動二輪免許や原付免許で運転することができた。しかし1985年の道路交通法改正によって、自動二輪免許や原付免許で運転できなくなってしまった。ミツオカはそれを受けて生産を終了した。現在は、普通免許が必要。
クルマを見た高齢者は、懐かしがってくれる。若い人たちは、未来的に見えるという。船に積んでいる救命ボートだと思っている人もいた。
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